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少女期
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しおりを挟むカタパの街。
「サイラス、止めて来い」
「え?俺がですか?神殿から何かまた言われても知りませんよ?」
「腐った神殿が何だって言うんだ………」
「……………はい……」
オルレアン国の腐敗した原因は神殿だと思っているレオナルド。傍観していてはエレノアの情報等聞けないので、収束をサイラスに任せた。
「何をしている!」
「っ!……………お、王宮……騎士団……だと……」
「神殿の神官達は引くように」
「王宮?王族が来ているのか?」
「し、失礼ですが、王太子補佐官のサイラス卿が来る様な場所では………」
三つ巴の睨み合いになる可能性もあった。
しかし、街人達は神殿より話が分かる人が来たのかもしれない、と一歩引いて行く。
神殿の神官達は、怯む態度の中でも、冷や汗を流し、正当化しそうな態度の様だった。
サイラスは騎乗し、神官達は馬車で来ていて、神官の聖騎士達は神官を守る様に、サイラスに武器をチラつかせていた。それは、内紛でも起きそうな、国が二分するかの如くの光景だった。
「我々、王宮騎士達も噂の真相を調べに来た!神殿の様に、真相を明らかにする前から、その少女を連れて行こう等とは思ってはいない!」
「何を仰る!聖魔法師は神殿が預かり、保護し悪意満ちた者からの悪用を防がねばならんのだ!」
「今の街人達から、何処に悪意があるんだ!」
「そうだそうだ!俺達は街中で、治療を受けられるのを望んでいるだけだ!神殿に行かねば病人も怪我人も治せないんじゃ、神殿が無い土地は如何すれば良いんだ!この場所で生活する理由があるから、この地に居るんだぞ!」
「あの娘が旅の聖魔法師だ、て言ったんだ!この国の子供じゃなかったら如何する!親の許可も取らずに連れて行くのか!それじゃあ誘拐じゃないか!」
「ぐっ…………王宮の味方しやがって……聖女エレノアを侮辱するのか!」
ザワッと一瞬、騒いでいた街人達が押し黙る。
神殿は、聖女エレノアを神と崇めていて、聖魔法師は神に捧げる事を義務付けた戒律を課していた。それは初代聖女エレノアやエレノアの弟、初代オルレアン国王、サムエルが決めた戒律ではない。
神殿は初代エレノアの生きた時代には存在していなかった。しかし、エレノアが5代目聖女になった頃には神殿があり、神官も存在した。
当時の国王が神殿と神官を作ったとされていて、その事がエレノアと王宮とのすれ違いが始まったのではないか、とエレノアは見ていた。
しかし、この場所には今はエレノアは居らず、これを見たら悲しむであろう事だった。
独り歩きしたのが神殿側なのか、王族の権威を失ったからななか迄は分からない、過去過ぎた話で、その真相は謎となっている。
「聖女エレノアは神ではない!建国者だ!初代国王サムエルは姉、エレノアの意思に背く事は断じて許さぬ!とオルレアン国の法律は健在だ!汝、平等に聖魔法を使われし、とある!それを神殿が独占しろとはエレノアは望んではいない!」
「そうだ!神殿は聖魔法師を解放しろ!」
「独占するな!」
「煩い煩い煩い!平民共は黙れ!聖魔法師が必要ならば、布施を払え!寄付しろ!さすれば、この街にも神殿が建つだろう!」
一体、何様のつもりでいるのだろう、神官達。聖騎士達も神官達の意見に同意するのか、頷いている。
「聞き捨てならないね、神官の話は」
「殿下!」
「っ!……………お、王太子………レオナルド殿下………な、何故この様な辺鄙な街に………」
「サイラスが此処に居るんだ……私が居ても不思議じゃないんじゃないか?神官達よ」
結局、レオナルドは出て来てしまい、平伏する街人達と、平伏しない神官達との王族への態度が違い過ぎた。
「その旅の聖魔法師の少女とやらの素性も知らずに、連れて行こうとする真意を話せる者は居ないのか?」
「そ、そう言う殿下も、その娘を連れて行こうとしているのではないのですか?」
「質問に質問で答えないでくれないか………先に質問をしたのは私だよ」
「っ!…………そ、それは………次期聖女になる可能性を秘めた者と判断し………」
「……………おかしいな……次期聖女になる可能性は、ベルセルク公爵家の四女………だった筈じゃないかな?」
「そ、それは優れた者ならば、変わる事もございましょう!」
レオナルドの威圧に耐え切れず、神官達はじどろもどろと、街人達へ横柄な態度と全く装いを変えてしまっていた。
「次期聖女は殿下のご婚約者様………お怒りはごもっともかと……」
「…………あぁ、君達は知らなかったのか……ベルセルク公爵家四女の令嬢とは婚約を破棄したよ」
「な、何だって!」
「私は、新たな婚約者を探しにこのカタパに迎えに来たんだ…………その旅の聖魔法師と名乗る少女をね」
だが、その少女エレノアはまた消えてしまい、レオナルドはエレノアの魔力残渣を探しながら話している。
「こ、婚約解消だと!誰も事実確認してないのか!」
「し、知りません!神官長………」
「神殿に戻るぞ!」
去り際は潔く、レオナルドへの礼儀も忘れ、神官達と聖騎士達は去って行った。
「静かになったな」
「良いんですか?新たな婚約者とか言っちゃって………ベルセルク公爵家と繋がりあるかも分からないんですよ?」
「どっちとだ?此処に居た少女と、ベルセルク公爵家?それともベルセルク公爵家と神殿か?」
「この場合、両方ですね」
「神殿とベルセルク公爵は繋がってるさ、十中八九な」
「まさか………初代国王サムエルの妻の生家の子孫ですよ?それに、何代も王族から降嫁した家柄…………王族に反旗を翻すなんて……」
「俺は、あのベルセルク公爵家を信用してない………さて、情報収集するぞ、サムエル」
まだ聞かねばならない。
エレノアに関わるヒントを探す為に。
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