聖女はもうのんびりしたいんです【完結】

Lynx🐈‍⬛

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少女期

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「……………じゃあ、如何すれば良い?私」

 片付けだけは済ませたが、王宮での立場がエレノアは気になった。
 レオナルドの婚約者として迎え入れられるのは、本意では無いので、それは断るつもりだ。

「勿論、俺の婚約………」
「却下」
「何でだ!」
「国王に承諾貰っても、私は逃げれる準備をする事だけは肝に銘じておいて!」

 婚約者として扱われれば、それから王妃教育だのさせられ、結局執務を手伝わされるだろう。なるべくならば、王族や聖女の事は関わりたくはない。

「しかし、そうでないとベルセルク公爵家からエレノア様を守れないかと」
「っ!………い、痛い所突かれたわ………ベルセルク公爵家からは簡単に逃げられるから、別に良いけどね、私は」
「じゃあ、何で10歳になる迄、逃げなかったんだ?」
「……………ねぇ、ロン……」
『何、エレノア様』
「この王太子、本当に馬鹿なのかしら」
『そうなんじゃない?』
「何が言いたいんだ!」
「0歳児でさ…………1人で生活出来ると思ってんの?消えたら、誘拐だの事件だの騒ぎになって、連れ戻されるに決まってるじゃん………幼少期にだって、保護されてお終い………今回、地下牢に監禁されたから、もうあの人達の事は諦めて、出て来たんじゃないの…………1人で生活出来るならとっくに出てたわ」

 確かに、と頷くサイラスや騎士達。レオナルドに至ってはまだ納得はいかない様だった。

「でも、君なら出来そうだ」
「うん、出来たよ………多分……だけど、生まれた家がベルセルク公爵家、という家だったから、我慢していたのかも」
「初代国王、サムエルの妻の生家だから?」
「……………自由に身体動かせない、て事もあるけどね………で?婚約者以外で、私の立ち位置は?………あ、侍女仕事なら任せて!なんなら王族の専属侍女になってあげても良いよ」

 脱線したので、エレノアは話を戻すが、それについてはレオナルドに却下される。

「侍女だと?10歳の年齢で王宮で働く女児は居ない!却下だ」
「……………従姉妹、とか………」
「王族家系は貴族内でも知られている。今急に増えました、じゃおかしい」
「他国から招いた令嬢……」
「国交も無いオルレアンではあり得ん」
「婚約者としての扱いが無難かと…………」
「っだぁぁぁぁぁっ!分かったよ………でも!但し!私が貴方や王族達を見限ったら、即効出て行くからね!」
「分かった…………身限られない様、努力しよう」

 レオナルド達も、移動準備を始め、エレノアは湖畔にあった岩の上に座り、水面を眺めて待っている。

『本当に良かったの?エレノア様』
「……………王宮に行きたかったのは本当だし……王太子と結婚しなきゃ良い話じゃない」
『エレノア様が良いなら俺は良いんだけどさ』
「出発出来るぞ、エレノア………俺の馬に乗れ」

 レオナルド達は荷をまとめ、移動準備を終えると、エレノアの座る岩場に来た。

「……………え?馬で帰るの?」
「あ、あぁ………他に移動手段が無いから……」
「仕方ないなぁ…………王宮には私専用の移転魔法陣があるし、使うとするか………皆、1つに集まって!……………んと………出来れば……………馬もこの円の中に出来るだけ入って欲しいから、騎乗して貰って…………と……あ、王太子は中央に居てね、私がその馬に乗るんでしょ?」
「ま、まさか………移転魔法が見れるのか!」
「え?うん………嫌だった?」
「とんでもない!なかなか経験出来る事じゃ無い!」

 全員入れる様に輪で大きな円を描いたエレノアは、レオナルドの乗る馬に乗った。

「覚悟は良い?行くよ…………『我、聖女エレノアより命ずる。我、光示す先に転移せよ』」

 古代オルレアン語で、結ぶ移転魔法は、王宮へと繋がり、王宮の奥深く封印された魔法陣へと一瞬で着いた。

「……………本当に王宮だ……」
「よいしょ、っと…………うわぁ……約600年ぐらい振りだ………この転移魔法陣を使うのなんて800年振りぐらいだけど………」
「魔法陣がハッキリ見える………」
「そりゃ、そうよ………私の魔力が与えられたんだもの」
「じゃあ、ベルセルク公爵家に刻まれた魔法陣も残るのか?」
「1回しか使ってないなら残らないわ………あと、行き先も自分が行った先じゃなきゃ、移転到着は出来ない」
「魔法研究所の職員達が泣いて喜ぶな、それを知ったら…………」

 ハッキリ見える様になった魔法陣に考え深げで呟いたレオナルド。

「魔法研究所?何それ」
「俺が設立した研究所だ。エレノアの魔法陣を調べたくて、魔法の研究者達を集めた所だよ」
「……………まんまね………名前………安直」
「っ!う、煩いなぁ!………サイラス、急ぎエレノアへ部屋を準備させろ………着替えの用意もな」
「はい、殿下」

 レオナルドは国王へ報告しに行く、と言い残し、エレノアはサイラスに連れられて、急誂えだが王宮の客間へと案内された。

「…………やっぱり、どこもかしこも淀んでるわ………」

 防御魔法壁は汚れた空気も入れさせない様にしていたのだが、長年蓄積されたのか汚染された空気が染み付いていた。

「エレノア様、後日お召し物は特注致しますので、今は急遽用意した10歳児前後で着られるドレスをご用意して参りました」
「サイラスさん、ありがとう………と……そ、そんなに要らない………かな……」

 取り敢えずで、ドレスが20着あり、装飾品さえも、10点はある大量の衣類を侍女達を引き連れ見た時には、今のエレノア史上一番多い贈り物となった。


 
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