20 / 47
少女期
19
しおりを挟む王宮の浄化は、瞬く間に知れ渡った。
「王太子殿下のご婚約者様が浄化なさったそうだ!」
「まさしく聖女!神殿の推す聖女では出来まい!」
エレノアが聖女として君臨しない様にしてから、オルレアン国は王族派と神殿派の派閥が出来ていた事は、以前から知ってはいたが、政務の事に関与出来なくなってからは、自然災害ぐらいしか防いではいなかった。如何にかして、自分達で国を守って欲しいと願って見守ったが、王宮は守らねばと浄化しただけにすぎない。
「考え無しだったかなぁ………またやっちゃった……」
「何故だ、良い事をしてくれたのに」
「王族派と神殿派の派閥衝突が激化しない?私は予知は出来ないからさ………自然災害も、精霊達や獣達が教えてくれるから、被害を最小限に出来るんだけど、人や利権が掛かる事は流石にあの子達じゃ分かんないし」
「良いんじゃないか?ここらで本当に膿を出した方が良いんだ…………教皇がまたくせ者だから、君が居てくれて助かる」
「教皇…………ねぇ………」
部屋のベッドに寝かせられて、体力回復を優先するエレノアの脇でレオナルドが神殿の事を話していく。
「父上も、何度も聖魔法師の解放を頼んでいた。しかし、病や怪我が王族の誰かがなれば直ぐに救いに来てくれる………生命の綱を牛耳るから、生命の危機の時の事を考えたら、強く言えなくてね………」
「…………読んだと思うけど………私が4回目の生まれ変わりした時、王位継承権争いが起きた………私は、正当な王太子を支持したけれど、まだ幼かった王子で、国王は死の境を彷徨っていて、老衰で亡くなってしまった………寿命だけは私も如何する事出来ないし………国王の弟が神殿計画を企てていた事も知らずに、私は殺された」
「……………うん……」
レオナルドに隠し事は出来ないだろう。それだけエレノアの手記は嘘偽り無く書いている。
「それから、私は直ぐに生まれ変われたんだけど、それでも20年かな………神殿は出来ていて、幼かった王子は神殿を作った前国王の弟の傀儡になっていた…………政務も神殿の教皇に治まった前国王の弟の息が掛かった者ばかり………それから私は異を唱えただけで、神殿に監禁された…………表向きは聖女の居住地、として王宮への出入りは、監視下の元でしか行けず、聖魔法を絞り取るだけ絞り取られたのよ…………魔力測定器も作らされたりね………複製は出来ない様に、数式は複雑化させて、私が今ある生の測定器は当時のまま…………おかげで私は神殿からの監視下にならずに済んだんだよ………」
「エレノア…………」
「いやぁ…………本当に傑作なんだよね、あの測定器」
「そうやって、誤魔化すの………止めろって」
「……………ねぇ、何でレオは私に一目惚れした、て言った訳?」
エレノアが誤魔化すのはいつもの事だ。辛い事を自分で溜め込む癖が付いてしまっている。今も、レオナルドに過去を語り、その時の辛さを隠していたのを、レオナルドに感付かれてしまった。だから、また話を変える。
「……………また誤魔化すんだな……良いさ……乗ってやるよ………俺が、手記を見つけたのは偶然だったんだ………わざわざ、遺骨見る趣味なんて無いからさ」
「普通は開けないよね………私もまだ棺にあるかと思ったもん」
「呼ばれた……て言うのかな………俺が納骨堂の管理する様になって、初代聖女エレノアに会ってみたいと思った………そうしたら、引き込まれる様に案内されて、気が付けば棺を開けてた」
「私は呼んだ覚えないからね」
「本当に?」
「知らないよ………それいつ?」
「10年前……………エレノアが生まれた日。それから俺は獣達の声を聞ける様になったんだ」
「……………ほぉ……興味深いね、それ」
エレノアが生まれた日は、ベルセルク公爵家は光に包まれたという。
だからこそ、国王はエレノアを王子達の婚約者に据えようと思ったと聞いている。洗礼式でエレノアは聖女回避に、冷遇される事を選んだのだが。生まれた日に、棺の中から呼ばれた等と聞けば関連はあるかもしれない。
「運命、感じないか?」
「運命?…………全然」
「……………あっそ……だから、ベルセルク公爵家で君のを感じたのはまた運命だと思ったんだ………姿は見えなかったがね………ロンの姿は見えたから」
「え?ロンは見えたの?」
「チラッとね………魔法の範囲外に出たとかじゃないかな」
「あ、そういう事か…………だから、ロンを捕まえれたんだ」
「そう、白いフクロウを従事した10歳ぐらいの女児、で探せば難しくはなかったよ」
「ロン~…………アンタかぁ………」
ロンのドジで、エレノアは見つかったのか、と今は眠っているロンを睨んでも、もう今更なので、溜息しか出なかった。
「そういう訳だから、離してあげない」
「10歳に口説くんじゃないよ………変態なの?」
「へ…………手は出さないぞ!君が成人したら分からないけど!婚約はしてるんだからな!」
「王子と結婚したら、王妃になるじゃんよ………だから、責任が伴う事、私はもうしたくないんだってば………」
「俺が即位する迄に体制変えるから!」
「……………考えとく」
別に、レオナルド自身に文句は無いので、取り敢えずキープというつもりで、エレノアは返事をするのだった。
30
あなたにおすすめの小説
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】離縁王妃アデリアは故郷で聖姫と崇められています ~冤罪で捨てられた王妃、地元に戻ったら領民に愛され「聖姫」と呼ばれていました~
猫燕
恋愛
「――そなたとの婚姻を破棄する。即刻、王宮を去れ」
王妃としての5年間、私はただ国を支えていただけだった。
王妃アデリアは、側妃ラウラの嘘と王の独断により、「毒を盛った」という冤罪で突然の離縁を言い渡された。「ただちに城を去れ」と宣告されたアデリアは静かに王宮を去り、生まれ故郷・ターヴァへと向かう。
しかし、領地の国境を越えた彼女を待っていたのは、驚くべき光景だった。
迎えに来たのは何百もの領民、兄、彼女の帰還に歓喜する侍女たち。
かつて王宮で軽んじられ続けたアデリアの政策は、故郷では“奇跡”として受け継がれ、領地を繁栄へ導いていたのだ。実際は薬学・医療・農政・内政の天才で、治癒魔法まで操る超有能王妃だった。
故郷の温かさに癒やされ、彼女の有能さが改めて証明されると、その評判は瞬く間に近隣諸国へ広がり──
“冷徹の皇帝”と恐れられる隣国の若き皇帝・カリオンが現れる。
皇帝は彼女の才覚と優しさに心を奪われ、「私はあなたを守りたい」と静かに誓う。
冷徹と恐れられる彼が、なぜかターヴァ領に何度も通うようになり――「君の価値を、誰よりも私が知っている」「アデリア・ターヴァ。君の全てを、私のものにしたい」
一方その頃――アデリアを失った王国は急速に荒れ、疫病、飢饉、魔物被害が連鎖し、内政は崩壊。国王はようやく“失ったものの価値”を理解し始めるが、もう遅い。
追放された王妃は、故郷で神と崇められ、最強の溺愛皇帝に娶られる!「あなたが望むなら、帝国も全部君のものだ」――これは、誰からも理解されなかった“本物の聖女”が、
ようやく正当に愛され、報われる物語。
※「小説家になろう」にも投稿しています
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?
みおな
ファンタジー
私の妹は、聖女と呼ばれている。
妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。
聖女は一世代にひとりしか現れない。
だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。
「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」
あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら?
それに妹フロラリアはシスコンですわよ?
この国、滅びないとよろしいわね?
【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです
星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。
しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。
契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。
亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。
たとえ問題が起きても解決します!
だって私、四大精霊を従える大聖女なので!
気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。
そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる