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しおりを挟むシュゼルトとルシフェルは睨み合いが終わらない。
だが、無言を止めたのはシュゼルトだった。
「図星か?ルシフェル………天界の王、ミカエルの力が衰退してるぐらい、俺にも分かってるんだぞ?………アマリエが天界に居ないからな………仕方ないよな……アマリエはミカエルの娘だ……返せと言うが、アマリエに取り込まれた俺の力を奪う気だろ?」
「…………天王はその様な事は致しません」
「あぁ、そう………お前も自分の父親を信じちゃいない、ってか」
「貴方じゃない!一緒にするな!」
魔界には王が居て、それがシュゼルトだ。
対に天界もあり、天界にも王が居る。それがルシフェルとアマリエの父親だった。
「いや、一緒だね…………俺に悪用される、と思ってる………純真に人間界に蔓延る悪が天界に影響してるんだろ?人間にも正義と悪がある。俺達は悪意が強けりゃ、それが糧になるが、天界は違うよな?………信仰心、慈愛、慈悲……綺麗事が薄まると、直ぐにお前達は弱まる………それだけ、人間界は汚れてんだよ。同じ力を使えても、獣に近い俺達の姿と比べ、お前達天界は真っ白の風貌………ちょっと汚しゃ、直ぐに綺麗にしやがる潔癖だ」
「…………っ!」
世界の摂理を語るシュゼルトに、ルシフェルも思う所があるのか、反論出来ない。
そして、シュゼルトはルシフェルが答えないのを良い事に話を続ける。
「アマリエは、天王と人間の混血だ。天界では住みにくかった………人間のドス黒い感情を、天界人は受け入れられてなかったから、アマリエは天界から逃げたんだろうが!」
「わ、私は…………アマリエを守る為に………」
「それで、俺の感情を利用したんだろ!アマリエの魂に俺の力を吸収して、力がある、と天界人に分からせる為に!…………ドス黒いのはどっちだよ…………それで今はその力をアマリエから取り出そうって魂胆も見え見えだ!アマリエを利用するな!」
「私は純真ですよ………純真にアマリエを愛している………魔界に落とすのなら、まだ人間界に身を落としておいた方が利用されない!だが、アマリエは、魔界へ行った!」
佑美の転生前のアマリエの事を言っているのだろう。
結果的にルシフェルの望む結果にならず、今も尚、シュゼルトとルシフェルは苦しんでいる。
「それで、もしアマリエをお前に返すとする。だが、お前はアマリエを人間界に還せるのかよ!」
「……………」
ルシフェルの無言に、シュゼルトはルシフェルの考えを察する。
「せいぜい悩めや………俺はどんな手を使っても、アマリエから自分の力を取り戻す」
「……………貴方には無理ですよ………キスで吸い取られた力をキスで取り戻そうとしてもね」
「っ!………キス以外で考える!」
「時間の無駄です…………抱いても無駄ですよ、シュゼルト………そもそも、人間で言えば貴方は子供の姿ではありませんか」
「っ!」
10歳ぐらいの少年に見えるシュゼルトだ。女を抱く機能が備わっている様な身体だとは見えない。
如何やって姿を戻せるのか、魔力が半減したシュゼルトはアマリエが頼りの綱だった。
「…………ふふふ……それに私は呪文をアマリエに掛けている………今のアマリエは貴方が以前愛したアマリエだと分からない筈だ。記憶も封印し、貴方を愛さない様にも呪文を掛けてます」
「なっ!何だと!記憶は分かるが、そんな呪文迄お前…………」
シュゼルトはルシフェルの胸倉を掴み、締め上げる。
「…………くっ………放してください、シュゼルト…………アマリエを転生させた時、前世の記憶を覚えていたら、アマリエは過ごし難いだろう、と思っての事………貴方こそ、苦労してくれないとね」
「絶対に、俺の力を取り戻してみせる!そしてアマリエは俺の番いだ!分かったか!クソ天界人!」
双方、言い分は分かるが、合間見えない自己勝手な言い分だった。
シュゼルトは、天界から逃れたアマリエに惹かれ、番いだと思えた。
それを利用したのがルシフェルで、ルシフェルはアマリエさえ無事でいればそれでいいし、シュゼルトが居なくなればいいと思っている。
嗾けたのはルシフェルなのに。
「…………アマリエを……返せ………」
「返すか、馬鹿!」
「っく!」
「無関係な人間を還してくれて感謝するぜ。だが、アマリエは返さない!お前が取り上げたんだからな!」
シュゼルトはルシフェルの胸倉を放し、その場をジャンプした。黒い翼を羽ばたかせ、ルシフェルを見下ろしている。
それが威圧的で、王として長く君臨している威厳として見える。姿は少年であるのに。
「…………二度と来るな………天界と争ってもいいのか?俺は構わねぇぜ?俺に勝てりゃな」
「っ!」
シュゼルトが城の中へと入って行くと、城が黒い雲に掛かり、城が消えた。
ルシフェルに場所を知らせない為にだろう。
魔界にシュゼルトが居れば、シュゼルトの思うがまま力が出せる。
だが、天界ではそうはいかない。地の利を活かせる場所こそ、安住出来るのだ。
ルシフェルの近くに居たくなく、シュゼルトは城と共に場所を変えたのだった。
「…………アマリエ……っ……長居し過ぎましたね………私も帰らねば……待っていなさい、アマリエ………」
ルシフェルも天界の力は長く魔界では使えず、ルシフェルも翼を出すと、飛び立って行った。
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