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3 *来賓側sideとリード視点
しおりを挟む「セヴィル、よくやったな」
「本当か?オーウェン」
「あぁ…………ロゼッタ姫に印象付けたよ」
来賓側の客室に集まる青年達。
「オーウェン、何企んでるんだ?」
「セヴィルの恋路を応援したいんじゃないか」
「本当か?」
「冗談さ」
「ちぇっ!」
果たして本当にそうなのか腹の探り合いだ。
4人の青年、オーウェン、セヴィル、レイン、ダニー、それぞれの国の統治する家系の者達。
この4人は、レヨルド国の王女ロゼッタが国内でやっと姿を表したのを知り、ロゼッタの夫の座を狙っている野心家だ。
長兄が居て後継者になれない青年達は、素質があろうとも、無かろうとも、おこぼれしか貰えない。長兄が第一後継者、と変わらない国の継承問題で貰えないなら、他の国から貰えばいい、と思っていた。
純真にロゼッタに興味があるか如何かは会ってない女だから分かる訳はない。
「それにしても、美人だったな。凹凸無いけど」
「あぁ!可愛かった!可憐で」
セヴィルは間近に見れたので、ロゼッタ自身に興味がありそうだ。
しかし、オーウェンやレイン、ダニーは遠目でしか見られず、直ぐにリードに立ち塞がられたので一瞬だ。
「だが………あの男だよな……結婚する、て男」
「王妃の横に居て、王女の前で立ち塞がった奴ね………厄介そうだったな」
「でも、俺が退けって言った時は困ってた!地位では負けるからさ」
「セヴィル、あの男はキレ者さ」
「へぇ~、オーウェンが人を褒めるなんて珍しいな」
「レイン、俺の国は隣だぞ?………この国の【妻競売】を壊した男だ。あの歳で宰相の地位なんて、俺の国には絶対に無理だ」
「あぁ…………ウチも無理だな、きっと」
グラスに酒を手酌し、皆飲み干す顔は悪巧みしそうな顔だった。
「………で?オーウェン………もし君がロゼッタ姫を手に入れたとすると、何したい訳?」
「決まってるさ………【妻競売】を再開させるのさ………で、いいようにロゼッタ王女を壊して【妻競売】に出す………俺は国王さ………ダニーは?」
「…………ん~、それも面白そうだけど、海域資源根こそぎ奪って、国に貢献して、此処は植民地か奴隷育成農場?」
「あははっ!ダニーもあくどいなぁ……」
「レインはどうなのさ」
「俺?別に国王になれば如何でもいいや。国政は王女に丸投げ、宰相に丸投げしておいて、不倫させて粛清?で、王女に悪政をした罪も擦り付けて英雄」
「セヴィルは?」
「俺は、王女が手に入ればいいや。可愛かったし」
「お前は直ぐにそれだな」
「お前、何処の国に行っても女口説くよなぁ………俺の妹にも口説いたのは先月だぜ?」
「あぁ、確かにあったなぁ、レインの妹、まだ12歳じゃなかったか?」
「可愛かったじゃん、レインの妹姫」
「やらないよ、お前には」
どうやら、セヴィル以外はとんでもない事をしそうだった。
✦✦✦✦✦
一方、リードは気が気でない雰囲気でピリピリしていた。
執務室にはヴェルゴと2人きりなので、リードも素を露わにして、苛立っていた。
「閣下、落ち着いて下さい」
「落ち着いていられるか………あの4人は警戒させろ!ローゼに近付かせるな」
「分からないでもありませんが、外交問題になりますよ?」
「…………あぁ!分かってる!俺だってあの4人とは会った事もある!昔だがな」
「前宰相の、閣下の父上とですね?」
歳が近い所為か、何かとつるんでいた4人として認識していた程度で、今は17歳から19歳の青年達だ。
当時のリードの思った印象とは大分違ってしまった様だが、女にモテそうな顔付きだった。
「ベリエフ国に行った時に、今の国王の戴冠式にな………可愛い顔が、腹黒そうに変わってたな……オーウェン王子」
「何方が美形ですか?」
「ん?」
ヴェルゴの質問はどういう意味なのか、とばかりに、顔を顰めたリード。
ヴェルゴはセヴィルしか見ていないのだ。
「閣下とオーウェン王子です」
「俺に決まってるだろ」
そんな事で、張り合う大人気無さが、リードから出て来る。
「…………はいはい……ですが、普段の閣下の態度なら負けないと思いますよ?所詮、経験値がモノを言うと思います」
「…………それは男としての技巧か?」
「まぁ、ソレもありますが、ロゼッタ殿下との関わり方ですよ」
「関わり方?」
関わり方等、リードは考えた事は無い。
本能で欲したから、欲のままに手に入れただけで、考えて動いたのは、どうロゼッタを王太子にするかだけだ。
「あの騒いでいたセヴィル皇子は、ロゼッタ殿下を可憐と仰ってましたが、ロゼッタ殿下………可憐ではありませんから」
「…………まぁな………ローゼは可憐じゃないな………悪阻でそう見えただけだろ。栄養不足で痩せていたのを、食べて体重を増やしたのに、折角付いた肉が、また痩せて無くなっていったから、病弱なんじゃないか、と思われていそうだな」
そもそも、13年外交にも出れなかったのだから、その噂は根強い。
「閣下にとって、ロゼッタ殿下とは?」
「生真面目、気が強い、頑固だな………腕の中では可憐だが、それは俺だけが知っていればいい」
「レース生地の仕上がり見れば繊細だと思われがちですが、かなりの策士的な技巧らしいですね、トゥーイがロゼッタ殿下のレース編みは真似出来そうにない、と悔しがってました。技法が凝り過ぎてるらしく………ロゼッタ殿下の編みの物を解いて1枚駄目にして、嘆いてました。幾ら使い古した物でも愛着がありましたから」
もう、手に入れ難くなったのだから、自分でも真似て編もうとする、貴族の女達も居るらしく、解いて作れる様になろうと研究しても出来ない女が多いらしい。
「そうだな………政治的な観点も、策士的な事を言うようになった……」
「閣下の傍で閣下を見ているからでしょうね。威厳さ等は閣下の真似てらっしゃいますし」
よくロゼッタを知らない者が、よく知る者から奪おう等許される訳はないが、油断はしたくないリードは警戒態勢を強いたのは言うまでもない。
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