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しおりを挟む先にアレクシスが王城に帰って行くが、後を追うようにアルマとジークハルトも王城へと向かう。
「念の為、侍女も待機する様にしてある。アレックス殿下のはからいなのは腹が立つが………」
「お気遣いだと思い感謝しなければ」
「…………はぁ………」
馬車の中で、アルマの言葉を聞き、ジークハルトは深い深い溜息を漏らした。
「な、何ですか?」
アルマには、その溜息の真意が分からなかった。
「アルマ………俺の前で、他の虫になる男を褒めるのは、嫉妬の捌け口にアルマは付き合うという事でいいか?」
「…………え………あ、あの………」
「俺が、殿下に先を越されて褒めるのを遅れ、腹が立っているぐらい、アルマには分かった筈だ」
「わ、分かってます!分かってました!」
「…………その捌け口、今夜も………あ、もしかしたら夜会中にアルマに付き合ってもらうかもしれないな」
「……………そ、それなら!早くジーク様の子種を私に下さい!」
「……………ゔっ………」
あまりにもジークハルトの嫉妬が我儘に聞こえ、馬車内ではあるが、街中を走る真っ昼間、大声でアルマはジークハルトにお強請りしてしまい、甘い空気を通り越して、御者や同行する侍従に馬車の外から、声が掛かる。
「お、奥様………あの………お声を………」
「はっ!…………や、やだ…………は、恥ずかし過ぎる…………」
「プッ…………ははははははっ!……」
たじろいでいたのに、侍従達に照れられながら注意されたアルマが可愛くて、ジークハルトは大爆笑してしまった。
「ジーク様………あまりお笑いに………なられないで下さいっ……」
「あぁ………もぅ………可愛い過ぎて俺を更に好きにさせる気なのか?アルマ」
「そ、そんなつもりは………」
「アルマ…………本当に……本当に俺は心配なんだ…………愛している………だから、先に召されられたら、俺は後を追うかもしれない………成熟した身体ではないと、出産は耐えられないと聞いてしまった俺は、如何してもそれが頭に過ぎり、躊躇してしまう………だから………いや、だけど愛情を現すのに、初夜で君を抱いてしまったから、止まれないんだ……君と長く生きたい俺の我儘なのは分かっている………」
「ジーク様…………」
笑っていたのに、真剣に本心を語ってくれるジークハルトに嘘は見られない。
抱き締められ、感極まるアルマは折角綺麗にして貰ったのに、涙が溢れ落ちた。
「…………化粧、し直しだな、アルマ………可愛いから許すが………子供をアルマも欲しいのは俺も分かっているから………出来る迄、俺達の間に邪魔はされるだろう………だが、それ全て俺は排除してみせる………安心しなさい」
「っ!…………はいっ………はい!」
アルマの愛情が止まらなかった。
ジークハルトの首にしがみつき、アルマもジークハルトの首筋を強く吸う。
「っ!…………ア、アルマ………まさか……」
「私も虫避けしないと気が済みませんから!私だって…………嫉妬させて下さい!」
「…………嫉妬した後、熱いキスを貰えるなら大歓迎だ…………くれるのだろう?アルマからキス等、貰える機会は少ないからな」
「…………え……っと……」
「はい…………ぶつけてくれ、アルマ………いつでもどこでもいいぞ?」
今、ぶつけて来いと言われても、今アルマは嫉妬をしていない。
鬱血痕を付けたのは、邪魔するイェルマへの牽制のつもりだった。
イェルマだけではないかもしれないが、明るい昼間に見える、首筋の鬱血痕は誰に対してもジークハルトに迫る女達にも効力があると思っての事。
目を瞑り、キスを待ち構えるジークハルトに、アルマはキスが出来ない。
ぶつけた感情は冷静な時ではなかったからだ。
「アルマ~?」
「っ!…………ジーク様………絶対に口を開けないで下さいね?」
「何でだ?」
「…………く、口を開けられたら、直ぐにジーク様にされるがままなんですもの………」
「よく分かってるじゃないか………いいぞ?俺からはしない………今はな」
「っ!…………う、動かないで下さいね?」
「念押すなぁ……信用しないのか?」
「事、こういう触れ合いに関しては……」
「違いないな……………」
「っん!」
我慢が出来なかったジークハルト。
折角、髪型迄変えて、化粧も変えていたアルマを貪る唇は、またアルマを翻弄するキスだった。
同じ様に返そうとアルマも思うも、ジークハルトに主導権を握られるのだ。
「…………ごちそうさま、アルマ……美味しい嫉妬を貰えた」
「…………ジーク様………私を嫌いになっても文句言わないで下さいね!」
「…………え?」
「私…………ジーク様に縋りついて離しませんから!」
「っ!…………もう………可愛い過ぎる……勃たせないでくれ………此処では処理困るだろ……」
この時程、アルマはジークハルトが困ればいい、と本心で思うのだった。
その後、別の馬車で王城に付き添った侍女達に、慌ててアルマは化粧と髪型を整えられながら文句を言われ、ジークハルトもおかしかったのだろう笑っていると、ジークハルトも同様に怒られていた。
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