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第六雪【約束】
しおりを挟む『もしもし?』
どうしよう、掛けたは良いが、その先のことなど私は何一つ考えてなかった。
でも、このままだと不審がられる。
私は一度深呼吸をして、ゆっくりと受話器に声を発っした。
「…もしもし」
『っ!?……もしかして赤月??』
嗚呼、彼だ。
赤月と呼ぶ彼の声を聴き、覚えてくれていたのだと嬉しくなった。
そして、彼の声を聴くと同時に、また眼から涙がこぼれ落ちてきた。
「……篠宮くん。逢いたい、疲れちゃった。」
自分でも何を言っているのだろうと思った。
何年も会ってない相手から、いきなりこんなこと言われても重い女だと思われるだけだ。
彼の次の言葉を聴くのが怖かったが、一心に受話器に向け耳を澄ませた。
『……そっか。ならいつでも戻っておいで。僕はいつでもここにいるよ。待ってる。』
「…っ篠宮くん。」
受話器越しに彼の、子供をあやすような優しい声が聴こえた。
『赤月は忘れてるかもしれないけど、あの約束はまだ有効だよ。』
彼のその言葉を聴いて、私の眼からはさらに大きな涙粒が溢れて止まらなくなった。
「……っ!?」
何か言葉を発したい。
でも、ここから先の言葉は彼に会って直接伝えたい。
ガタっ!!
そう思った瞬間、私は狭いワンルームの部屋から飛び出していた。
『……赤月?』
焦りすぎて、財布を持って安心した私はスマホの存在を忘れていた。
ツーっツーっプツンっ……
タイミングが良いのか悪いのか、ケータイの充電が、私と彼を繋いだ数分後、切れてしまった。
彼はどうしただろうか。
とりあえず早く、彼に逢いたい。
私の頭の中はそれだけだった。
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