耳を塞いで、声聴いて。

久寺森うみ

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第五章

5-3-4※

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「んぅ……ん」


 園山の舌が口の中へと侵入してくる。舌同士が擦れあうと、身体の奥からぞわぞわとした感覚がこみ上げてきた。


(何で俺、こいつとキスしてるんだ? ていうか、まだ女子ともしたことないのに……っ)

「あ、初めてだったんだ」

「なっ、お前には関係ねーだろ!」


 あっさりと見破られて、祥は顔を真っ赤に染めた。

 どうして伝わってしまったのだろう。反応があまりにも初心うぶだったのだろうか。それはそれで恥ずかしい。


「かわいいね、井瀬塚」


 また、キス落とされた。だが今度はそれと同時にパジャマの裾から手が忍び込んでくる。

 下腹部から腰を撫で上げられ、祥の身体がひくん、と震えた。


「ん…んっ……ぅく」


 その手は徐々に上へのぼっていき、胸の上で動きを止める。心臓はすでにもの凄い速さで拍動を繰り返しており、それが全て園山の手に感じ取られているのだと思うと、恥ずかしくて逃げ出したくなる。

 しかし巧みに口の中をまさぐられているせいで、手足に上手く力が入らない。

 祥は、もう逃げ出すことも、抗うことも出来なくなっていた。


「ぷはっ、あ…そ、そのやま……」


 ようやく唇が解放され、荒々しく呼吸をしていると、パジャマを胸の上までまくり上げられた。

 園山は祥の薄い身体を、形を確かめるようにゆっくりと撫でてくる。


「井瀬塚、水泳部でしょ。こんなに細くて大丈夫?」

「ん…俺、筋肉つきにくくて……」


 今はこんな話をしている場合ではない。

 頭では分かっているのに、当たり前のように質問に答えてしまった。


「――あ、そこは……っ」


 不意に胸の先を摘ままれて息を呑む。今まで意識していなかったところに急に訪れた刺激は、いとも簡単に祥を翻弄させていく。


「ねぇ、ここ気持ちいい?」

「や、くすぐったぃ……ぁ、あ!」


 不確かな感覚に身をよじるが、園山はしつこくそこを弄ってくる。

 そっと撫でられたり、押しつぶすようにされたりすると、勝手に喉が鳴ってしまう。


(なんだよ、これッ)


 気持ちいいかなんて分からない。だって、こんなことをされるのは初めてなのだから。

 これはただくすぐったいだけで、こんなシチュエーションだから敏感になりすぎているにすぎない。そうに決まっている。
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