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初めてのテレビ収録!

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 緊張していることは嘘じゃない。初めてのことばかりで戸惑っているのも事実。けど、雪村が言うように、今はそんなことよりもただただ自信がなかった。代役を務めるプレッシャーも去ることながら、自分が黒野の代役としてテレビに出る意味が見出せなかった。なにせ昨日今日、エッグバトルで初めてテレビに出演したような男だ。どこの物好きが初見でファンになるというのだ。だってこの男は、一目惚れ出来るような容姿を持ち合わせていないのだから。

 そんな太一と違って、黒野には安定したファンがいる。テレビにこそあまり出ては来ないが、トップナインは雑誌ではお馴染みの顔ぶれだ。事務所内でも年上の部類に入る高校二年の黒野は、圧倒的に多い小中学生のエッグ達と違って随分垢抜けていて大人っぽい。しかも猫居といつも一緒にいて、その猫居でさえ事務所内では異色な存在だ。彼は黒野より更に一つ年上で、しかもロシア人とのクオーター。垢抜けるどころか日本人離れした顔面は見惚れるほど。
 そんなコンビをずっと見ている太一だからこそ、今置かれたこの場所が違和感であり、プレッシャーであり、何よりも黒野に申し訳なかった。猫居だって、シンメが太一じゃ物足りないと感じているかもしれない。

 そんな事まで考え出すと、太一は焦りと恐怖に似たプレッシャーに押しつぶされそうになる。あまつさえ、ニーズがない。視聴者は自分を求めていない。需要と供給のバランスを自分が崩すんだと思うと、真面目一筋で生きてきた太一には耐えられない事態だった。

「今、バカなこと考えてるだろ」

 ロープに吊るされ、底の見えない穴にゆっくりと降ろされて行くような感覚の中、落ちるとこまで落ちそうになっていく太一を、雪村の言葉が引き止めた。

 どういうことだ、と太一は再び雪村を見た。バカなことなんて一つも考えちゃいない。至って大真面目だ。大真面目に悩んでいる。

「黒野くんの代わりが、そんなに怖いか?」

 雪村は完全に見抜いていた。太一は深い息を吐き出すと観念したように小さく頷く。

「そりゃそうだよ……オレじゃ代わりにもなれないから。オレなんか誰も見てないだろうしさ」

 そんな太一に、雪村は呆れたように嘲笑を飛ばした。

「そりゃ、見てないだろうよ」

 血も涙もない言葉に太一は俯いたまま、きゅっと唇を噛みしめた。そんなはっきり言わなくてもいいだろ、とデリカシーのない雪村に腹を立てるが、それ以上に自分が情けなかった。

 自分にファンなんていない。十二分に分かっている。雪村やトップナインのように人気者になりたくてもそれが叶わない。どれだけ努力しても、芽が出ない。この悔しさと情けなさに耐えようと、太一は硬く拳を握りしめた。
 しかし。

「こうやってテレビに出なきゃ、誰がお前を認知するってんだよ」

 続けられた雪村の言葉に、太一はハッとした。

「見て欲しいんなら、これがどれだけのチャンスになるかお前には分からないのか? 黒野くんの穴を埋めるんじゃない。黒野くんの場所を奪うつもりで挑めよ」
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