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一次審査! (前編)

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 芸能科の高校に入学したとして、結局テレビの仕事もなくそのまま卒業したならば、そのあとどれだけいい大学に入学出来るのか、どれだけいい会社に入社出来るのか、両親には皆目見当がつかなかった。
 息子にはきちんと現実を見据え、いい高校に入学し、いい大学に進学し、いい会社に勤めて欲しかった。太一が優秀な息子だからこそ、尚更その思いは強いのだ。

 だが太一は、勉強よりもエッグバトルに専念したかった。第一志望を芸能科のある学校にまでレベルを落とせば、今ほど勉強に時間を割く必要はない。出来ることならば、担任に親を説得して欲しい所だったが、残念ながらそれは叶わなかった。 勉強と仕事を両立させるほか、太一には道がなかったのだ。

 一方、他のエッグ達は順調に仕上げに入っていた。

 太一と同じ月曜組には、事務所のトップランナーである雪村涼がいる。彼もまた受験生だ。しかも公立高校を目指している為、太一同様時間に追われていた。だが、それは太一とは比べ物にならない。それこそ仕事の合間にテキストを開き、時間があれば勉強している。
 その姿は多くのエッグやテレビ関係者が目撃していた。だが課題曲、自由曲共に言い分のない仕上がりをみせている。さすが、といったところだろう。

 志藤もまたかなり本気で挑んでいた。
 夏休みに通いつめたボイトレの効果は確かなもので、悩んだ自由曲も、最終的にクール系に決めた。世間が求めているだろうポップで可愛い曲でも良かったのだが、志藤はあえてそこを外した。
 これはある意味かなりの冒険であり、挑戦である。しかしそれでも自信があった。本当の自分はこちらだと言い切れるからだ。

 月曜組ではあと二人、藤本芳樹と一ノ瀬一也が名乗りをあげていた。他の曜日のエッグ達もトップナイン以外にどんどん名前を売り込み始めている。
 エッグバトルやたまご気分の出演により、多くのエッグが世間に知られるようになり、雑誌の取材もトップナイン以外のエッグにオファーが来るようにもなりだした。それはもちろん太一にもだ。初めての取材に緊張するも、それ以上にヤバかったのは撮影だった。
 今までだって宣材写真くらい撮ったことはあるが、これがアイドル雑誌に載るのだと思うと気合いが入らないわけがない。

 今までは同じ曜日の同志とばかり仲が良かったエッグ達だが、エッグバトルやたまご気分のおかげで、曜日に関係なく交流を深めるようになり出していた。
 最初、雪村に目をつけられてしまっていた小形も、今ではすっかりエッグに馴染み、トップナインにまじって仕事をしていることが多い。

 ざっと20名~30名ほどが、世間へ確実にアプローチを掛け始めていた。

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