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泥沼作戦会議
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放課後。
志藤が仕事で学校を休んでいたため、三人だけで野瀬家へと向かった。
まだ、野瀬家の姉妹は帰宅していない模様で、この隙に太一を部屋に連れ込んだ野瀬は、大量のDVDや雑誌を一人でよりすぐり、部屋へと運び込んだ。
その間に太一は中原へすべての事情を説明し、アイドルオタクの野瀬に協力してもらっていることもしっかりと説明した。野瀬ママが茶菓子とジュースを部屋まで持って来てくれると、本格的に話し合いは開始された。
選抜メンバーをノートに書き出す太一の綺麗な字。それを見ながら、野瀬は口を開いた。
「俺、昼からずっと考えてた。他の曜日、正直すごく纏まってるって」
ぴくりと太一の手が止まる。
エッグバトルくらいしか見ていない中原は、顔と名前が一致すればいい方で、野瀬のように何か意見を言えるほどの知識はない。ただ、今の発言があまりいい意味でないことくらいは、しっかりと伝わった。
「おい、雅紀……」
咎めるように名を読んだが、太一は「やっぱりそう思う?」と思いのほかあっけらかんと答えた。
選抜された全ての曜日のメンバーが書き出され、中原は野瀬の先ほどの言葉を少しだけ理解した。
「火曜日は言うまでもない。この二人で活動してることも多いし、イメージがしっかり固まってる。水曜日も安定してるかな。何と言っても歌唱力が高いし、王子様像がはっきりしてる」
ずっと考えていたと言うだけあって、野瀬はすらすらと喋り出し、それはすべて太一と同意見だった。
「木曜日は一見月曜に似た雰囲気が見受けられるけど、この人たち、タイプは違えど全員リーダー気質だ」
野瀬の見解に太一は驚いた。自分達の会議では一度としてその意見は出てこなかったからだ。思わず野瀬をマジマジと見つめてしまう。そんな捉え方があったのかという驚きもそうだが、エッグ一人一人をしっかりと知らなきゃ出てこない言葉だ。野瀬のアイドルオタクは伊達じゃない。
「みんな周りをよく見てるタイプじゃないかな? 違う? きっとすごく団結力があると思うんだ。たぶん ……たぶんだけど、変な話このチームは迷わないと思う」
お前何者だよ、と中原は乾いた笑いを漏らしたが、太一が真剣な瞳で頷くものだから、初めて中原は野瀬のアイドルオタクぶりを評価した。
「金曜日はアクロバットが出来ることが強いかな。でもイメージは白。どんな色にも染まりそう。だから色を間違えると……こけるかもしれない」
野瀬がそこまでの予想を立てていることに、中原はもはや言葉もなく、「たとえば?」と聞き返す太一の横顔を見つめるしかできなかった。
「例えばそうだな。俺個人の意見としては、このグループにロックはない」
「なんで?」
「小形くんのイメージじゃないから、かな。グループのナンバーワンは二ノ宮くんで間違いないと思うけど、イメージが白いだけに、あえて小形くんを中心に置いた方がいい気がする。二ノ宮くんも天道くんも、小形くんよりよほど上手にイメージを操れる気がするから」
すごい。
その一言だった。
志藤が仕事で学校を休んでいたため、三人だけで野瀬家へと向かった。
まだ、野瀬家の姉妹は帰宅していない模様で、この隙に太一を部屋に連れ込んだ野瀬は、大量のDVDや雑誌を一人でよりすぐり、部屋へと運び込んだ。
その間に太一は中原へすべての事情を説明し、アイドルオタクの野瀬に協力してもらっていることもしっかりと説明した。野瀬ママが茶菓子とジュースを部屋まで持って来てくれると、本格的に話し合いは開始された。
選抜メンバーをノートに書き出す太一の綺麗な字。それを見ながら、野瀬は口を開いた。
「俺、昼からずっと考えてた。他の曜日、正直すごく纏まってるって」
ぴくりと太一の手が止まる。
エッグバトルくらいしか見ていない中原は、顔と名前が一致すればいい方で、野瀬のように何か意見を言えるほどの知識はない。ただ、今の発言があまりいい意味でないことくらいは、しっかりと伝わった。
「おい、雅紀……」
咎めるように名を読んだが、太一は「やっぱりそう思う?」と思いのほかあっけらかんと答えた。
選抜された全ての曜日のメンバーが書き出され、中原は野瀬の先ほどの言葉を少しだけ理解した。
「火曜日は言うまでもない。この二人で活動してることも多いし、イメージがしっかり固まってる。水曜日も安定してるかな。何と言っても歌唱力が高いし、王子様像がはっきりしてる」
ずっと考えていたと言うだけあって、野瀬はすらすらと喋り出し、それはすべて太一と同意見だった。
「木曜日は一見月曜に似た雰囲気が見受けられるけど、この人たち、タイプは違えど全員リーダー気質だ」
野瀬の見解に太一は驚いた。自分達の会議では一度としてその意見は出てこなかったからだ。思わず野瀬をマジマジと見つめてしまう。そんな捉え方があったのかという驚きもそうだが、エッグ一人一人をしっかりと知らなきゃ出てこない言葉だ。野瀬のアイドルオタクは伊達じゃない。
「みんな周りをよく見てるタイプじゃないかな? 違う? きっとすごく団結力があると思うんだ。たぶん ……たぶんだけど、変な話このチームは迷わないと思う」
お前何者だよ、と中原は乾いた笑いを漏らしたが、太一が真剣な瞳で頷くものだから、初めて中原は野瀬のアイドルオタクぶりを評価した。
「金曜日はアクロバットが出来ることが強いかな。でもイメージは白。どんな色にも染まりそう。だから色を間違えると……こけるかもしれない」
野瀬がそこまでの予想を立てていることに、中原はもはや言葉もなく、「たとえば?」と聞き返す太一の横顔を見つめるしかできなかった。
「例えばそうだな。俺個人の意見としては、このグループにロックはない」
「なんで?」
「小形くんのイメージじゃないから、かな。グループのナンバーワンは二ノ宮くんで間違いないと思うけど、イメージが白いだけに、あえて小形くんを中心に置いた方がいい気がする。二ノ宮くんも天道くんも、小形くんよりよほど上手にイメージを操れる気がするから」
すごい。
その一言だった。
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