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告白
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野瀬を取られたと思っている。きっと志藤は自分のことを憎いと思っているに違いない。だから、あんなキスをされた。……だからあの時、なかったことにしてくれと言われた。
ひとつしかない布団で、太一は野瀬と体を寄せ合い寝ている。それを、なんて罪深いんだと思った。
寝息を立てている野瀬の柔らかな髪を見つめながら、志藤の想い人がこの男なのかと思うと、明日から志藤にどんな顔をして会えばいいのか分からず、ため息は深々と吐き出された。
「ちゃんと、言わなきゃ。誤解だって。野瀬のこと……取ったりしないよ……って」
口にして、涙がまた溢れた。枯れない涙は一筋流れ、枕を濡らす。
「野瀬が……羨ましい」
野瀬はいつかその手で志藤を抱きしめる時が来るのだろうか。見つめ合い、微笑み合い、唇を重ね、愛を交換しあうのだろうか。
帰り際の暴力的なキスを、一瞬でも嬉しいと感じてしまった自分が馬鹿らしくて、情けなくて、みじめで……。太一はこっそり布団を抜け出すと、ハンガーに掛けられている野瀬の制服に触れ、ぎゅっと抱きしめた。
こうやって野瀬に甘えるのも、最後にした方がいい。志藤はきっと気に入らないはずだ。これ以上嫌われたくなどない。
「……歩くん……」
ひとつしかない布団で、太一は野瀬と体を寄せ合い寝ている。それを、なんて罪深いんだと思った。
寝息を立てている野瀬の柔らかな髪を見つめながら、志藤の想い人がこの男なのかと思うと、明日から志藤にどんな顔をして会えばいいのか分からず、ため息は深々と吐き出された。
「ちゃんと、言わなきゃ。誤解だって。野瀬のこと……取ったりしないよ……って」
口にして、涙がまた溢れた。枯れない涙は一筋流れ、枕を濡らす。
「野瀬が……羨ましい」
野瀬はいつかその手で志藤を抱きしめる時が来るのだろうか。見つめ合い、微笑み合い、唇を重ね、愛を交換しあうのだろうか。
帰り際の暴力的なキスを、一瞬でも嬉しいと感じてしまった自分が馬鹿らしくて、情けなくて、みじめで……。太一はこっそり布団を抜け出すと、ハンガーに掛けられている野瀬の制服に触れ、ぎゅっと抱きしめた。
こうやって野瀬に甘えるのも、最後にした方がいい。志藤はきっと気に入らないはずだ。これ以上嫌われたくなどない。
「……歩くん……」
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