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告白

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* * * * *

「おはよー!」

 学校帰りのいつものレッスン。一ノ瀬の明るい声。にこやかに微笑みあう雪村と志藤。

「お、来た来た。おはよ」

 太一に向けられる志藤の笑顔は、見覚えのある明るくて陽気なもの。

「お疲れ、たいちゃん」

 その声だって、いつもの志藤。

「……うん、おつかれ」

 昨日のキスなんか、まるで夢だったかのようだ。
 だけど、そう……、志藤は断言していたのだ。 “いいチームメイトになる” と。それはという憎しみも捨て、だが同時に友達という関係も捨て、チームメイトになるということ。太一は、志藤のこの態度を見てそんな風に受け止めた。決して恋敵などではないのだが、志藤にそう思われていると、太一は完全に勘違いしている。

 いいチームメイトとは何なのか。残念ながら太一は、志藤のようにうまく笑うことなど出来ない。事務所お墨付きの大根役者でもあるのだ。たまらず噛み締めてしまった唇を隠すように俯くと、テーブルに鞄を置いておもむろに制服を脱いだ。

 もう投げやりだった。
 誤解されていることを事実無根だと証明するため、今日、太一は敢えてタンクトップを持ってきていた。いつもはTシャツに着替えるのだが、なるべく肌の露出の高いものを選んで持ってきた。学ランを脱ぎ、ワイシャツを脱ぎ、一度わざとらしく露出した肌を志藤の方に向けると、バチっと視線は絡み合った。

 その視線が胸元に移動したのを確認してから、太一は鞄の中からタンクトップを取り出して着込んだ。

「お。めずらしいな。気合い十分か?」

 雪村がタンクトップの太一にそう声をかけると、太一は「うん」と簡潔に答え、ズボンを穿き替える。そして図らずも雪村とお揃いのダンスシューズに履き替え靴紐を結ぶと、志藤の目の前に立った。

「……見てくれて構わない。やましいことなんて、何もないから」

 驚いたように目を丸くした志藤をなるべくまっすぐ見つめ、それが嘘じゃないのだと訴えかける。
 雪村と一ノ瀬が「なんの話だ?」と怪しがったが、志藤は「こっちの話……」と返事を濁し、太一から視線を外した。

「いいよ、別に。興味ないし」

 ばっさりと切り捨てられ、弁解する隙すらも与えてもらえない。太一はやけくそで着込んだばかりのタンクトップを脱ぎ捨てると、志藤の両腕を勢いよく掴んで揺さぶった。

「見ろってば!」

 だけど、パシン!とスタジオいっぱいに響き渡る程の強さで振り払われた手は、そのまま力一杯太一の頬を叩いていて、勢ぞろいしているスタッフも、メンバーも、あまりの出来事に絶句した。

 志藤は太一の頬を引っ叩いた右手を拳に変えると、怒りなのか……はたまた叩いたことによる後悔なのか、小刻みにその拳を震わせ、大声で太一を怒鳴りつけていた。

「デリカシーないのかよ! 興味ないって言ってるだろ! あんたが誰と付き合ってようが、どんな楽しいことしてようが、どうだっていいんだよ!」

 ここにいる全員が「え?」と太一に注目したが、太一も太一で叩かれた頬を押さえて鋭く志藤を睨みつけた。
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