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告白

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「だから……っ、何もしてないって言ってるだろ!」
「嘘つけよ! あんたらあの後何したんだよ!? さぞ楽しかったんだろうな!」
「してないって言ってるだろ!」
「うるせぇ! もう喋るな! 聞きたくない!」

 志藤の乱暴な言葉遣いは、やはり誰も聞き慣れなくて、太一だってそんな風に取り乱す志藤に心を痛めた。
 だけど、それほどまでに野瀬のことが好きなんだと思うと、どうしたって身の潔白を晴らさなきゃいけないという使命のようなものも感じて、だけど、「落ち着いて聞いてくれ」という言葉さえも言わせては貰えなかった。

「頼むからもうそっとしといてくれよ! たいちゃんとこんなこと言い合いたいわけじゃないんだよ! 分かってよ!」

 切実さのこもった声色と震える声は、胸に突き刺さるほどだった。だけど太一だって志藤と同じくらい切実なのだ。

「じゃ……なんで。じゃあなんで昨日あんなことしたんだよ!」

 唇にずっと残っている志藤の感触。勢いよく叩きつけられた壁の硬さも、ぎゅっと掴まれた肩が覚えている痛みも、全部……目の前の志藤が太一に刻み込んだものだ。
 「なんで?」なんて、答えはたった一つしかないのに、太一は勘違いしていて、志藤は意地を張っている。

 好きなんだとお互いが叫べばすべて解決するのに、二人にはその言葉を言えるだけの条件が揃っていなかった。

 志藤は野瀬が好き。
 太一は野瀬が好き。

 その絶対的な勘違いが、二人の想いを交わらせてはくれない。
 そして、言っちゃいけない言葉を、志藤は太一に吐きつけてしまうのだ。


「……っ、はらいせだよ!」

 絶対に聞きたくなかった言葉。
 だけど、そうなのだろうとは……思っていた。けどそれを面と向かって言われることの辛さは、想像以上に胸を抉り、吸い込んだ息を吐き出すタイミングすら……分からなくなった。

「たいちゃん!」

 息を吐き出していない太一に気付いた一ノ瀬が慌ててその背中を叩くと、確かに溜め込んだ息は外に出たが、同時に涙も溢れ出た。

「おい……。おい、志藤っ!!」

 泣き出した太一に雪村は立ち上がると、志藤の胸ぐらを掴み上げ乱暴に揺さぶった。

「女の取り合いか!? くだらねぇことしてんじゃねぇよ! てめぇ今どんな大事な……」
「くだらなくなんかないっ!」

 だが、ドンっと雪村の胸を突き放した志藤は廊下にまで響く大声で叫んだ。

「くだらないことなら、たいちゃん泣かすほどのこと俺がするわけないだろっ! くだらない恋愛じゃないからこうなってるんだよ! この気持ちすっきり捨てられるなら、俺だってとっくにそうしてる!」

 ボロボロっと太一の瞳から涙が溢れ出て、ついにはスタッフが間に割って入ると、レッスンは開始される前に二つに分断されてしまった。

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