怠惰な召喚術師は最強を飼っている~ファンタジー化した現代で膨大な魔力と召喚スキルを与えられた少年の生きる道~

すー

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第2章~怠惰な召喚術師と夢見る少女~

第24話:捨て猫と孤独の老婆

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――――

――

「産まれました……え?」

にゃあ、にゃあ、にゃあ

「猫?」

 産まれたのは耳と尻尾の生えた赤ん坊であった。

 産声は子猫のようで、可愛らしくて不気味だ。

 分娩室はまるでお通夜のような空気になるのであった。


――――

――

「魔力による突然変異?!」

「なんでうちの子がこんな……まるで化け物じゃないか!」

「ちゃんと産んであげられなくてごめんね」

「お前のせいだ」

「お前のせいだ」

「お前のせいだ」

「私が全部悪いの」

「愛してあげられなくてごめんね」

「ごめんね」

――――

――


 東京、初雪の降る凍える寒さの中。

 老婆は仏壇を前に手を合わせた。

「こらからどうしたもんかね……」

 遺影は三つ。
 病気で亡くなった老婆の夫とダンジョンによる事故に巻き込まれ亡くなった愛娘と孫娘の写真だった。

 突如天涯孤独となってしまった老婆は、未だ喪失感を拭えないでいた。

 これから自分一人で生きて何が楽しいことがあるだろう――と毎日考えていた。

 夫が趣味半分でやっていた一回の店は、もうずいぶん開けていない。

 いつか田舎で畑でもやりながらのんびりとした老後を過ごそうなんて話していた。

 遊びに来る孫娘がすくすく育つ様子を見守るのが幸せだった。

 幸せそうに孫娘をあやす娘を見ているだけで満たされた。

 それなのにもう老婆には何もない。

 あるのは人生という単位で考えれば残り僅かな、しかし今の彼女にとっては途方もなく長い長い虚無だけだった。

「まあ死ぬ気にはなれんがね」

 老婆はため息を吐いて、気を紛らわすために外へ出た。

 どんなに悲しくても、憂鬱でも、長年主婦として家のことをしてきた経験は染みついている。 やるべき日常のあれこれを済ませるために体は勝手に動いていく。

 いつもなら店の前を掃いたり、夏であれば打ち水をする。 しかし現在は真冬、外は東京では珍しく雪景色となっていた。

「どこかに雪かきのスコップがあったかね」

 雪かきをしなければ、そう思った老婆の視線にふと入ってきたのは軒下に置かれた大きめのバスケットだった。

「なんてこったい」

 その中には布に包まれた赤ん坊が入っていた。

 まだ暖かい。
 雪に足跡があり、辿った遠くに離れていく人影が見えた。

「ちょっと! そこのあんた!」

 声を掛けても聞こえていないのか、無視しているか離れていく人影を老婆が追いかけようとすると、

――にゃあ、にゃあ

 その赤ん坊が猫のように鳴いた。

 老婆がぎょっとして見下ろすと、体を動かした赤ん坊の頭が露わとなる。 そこにあったのはまるで獣のような二つの耳だった。

「そうかい」

 全てを察した老婆は、人影を追いかけることを諦めバスケットに声を掛けた。

「……うちに来るかい?」
「にゃあ」

 言葉の離せない相手に何を言っているのかと、自分に呆れながらも老婆はまるで返事のように聞こえた鳴き声に少し涙を落として、その耳の生えた奇妙な赤ん坊をそそくさと家へと連れていくのであった。

――

――――

「まあ面白くもない話さ」

 老婆がそう言って締めくくると、木霊の方からすすり泣く声が聞えてきた。

「大変だっだんずねえ!」
「あんた情緒豊か過ぎないかい……?」

 木霊に呆れつつも、老婆が少女の頭を撫でる手つきは端から見てもひどく優しかった。

「この子みたいな突然変異はまだ差別の対象になるだろう」

 老婆の娘のようにダンジョンの事故であったり、魔物に殺されたりした冒険者の縁者だったりは悲しみのぶつけどころがないためか、ファンタジーに関するもの、変わった世界の全てを恨むような人たちもいる。

 少女のような突然変異は珍しいが、全くいないわけでもない。 彼女たちは半魔と呼ばれ、一部で行われる差別行為は暗黙の了解として認められてしまっているらしい。

「分からないものは怖いですからね……」
「ああ、そうさ。 人間は臆病だからね。 だからこの子には悪いが外には出せないし、知られるわけにはいかないんだ」

 だから黙ってて欲しい、と懇願する老婆に僕と木霊は強く頷いた。

「ねえ、遊ぼ」

 するりと老婆の手から抜け出した少女は、僕を見上げて言った。

「うん、いいよ」
「……あんたは怖くないのかい?」

 老婆は即答した僕に驚いたように見つめる。

「一度関わってしまえば怖いなんて思わないですよ……それに本当に怖いのは人間ですから」

 僕は長い間過ごした施設のことや、執拗に勧誘してきた奴らを思い出して苦笑いした。

 すると老婆はそう通りだ、と言ってカラカラ笑うのであった。

 




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