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第2章~怠惰な召喚術師と夢見る少女~
第25話:預言者と記憶の鍵
しおりを挟む猫耳少女――絵関《えざき》銀花《ぎんか》――と僕らはトランプをしたり、人生ゲームをしたり思っていた以上にガッツリ遊んだ。
「もう一回! もう一回!」
「いや、もうそろそろ帰らないと」
「ぶー!」
銀花は表情が乏しい印象だったが、遊んでいるうちに段々と笑ったり、悔しがったり表情が豊かになっていった。
かなりの負けず嫌いらしく、どのゲームも弱いくせに懲りずに勝てるまでねだるのだ。
「そのくらいにしな。 さて、みんなお腹が空いただろ? 良かったらご飯食べてきな」
どの遊びも老婆と二人では難しいものばかりなので、やっと出来ると興奮した銀花に影響されて僕らも夢中になってしまい、結局夕飯までごちそうになってしまった。
「ごちそうさまでした」
「すみません、こんな遅くまで」
「いやいや、いいんだよ。 この子も楽しそうだったからね」
「泊まっていけばいい」
名残惜しそうな銀花がそんな無茶を言うが、僕たちは明日も学校があるのでさすがに難しい。
「無茶を言うんじゃないよ。 帰してやんな」
「……わかった。 じゃあこれあげる」
渋々納得したといった様子の銀花は僕と木霊に一枚ずつ、二つ折りにしたメモ用紙のようなものを渡してきた。
なんなのかと、開けようとすると彼女は「帰ってから開いて」と言うので、首を傾げつつも僕らは頷いて店を後にする。
銀花がずっと見送ってくれるので、僕らは彼女たちが見えなくなるまで何度も振り返っては帰りを惜しむように手を振るのであった。
「なんだこれ」
帰ってから銀花にもらったメモを開くとそこには意味不明な言葉が書かれていた。
『忘れた記憶。 大切な記憶。 夢と愛。 力の解放と共にあなたの世界は色を取り戻すでしょう』
僕が記憶喪失であることは銀花には言っていない。 なのに彼女はまるで知っているかのような言葉が書かれていた。
むしろ今の僕以上に、何かを知っているような――力の解放と共に色を取り戻す、とはどういう意味なのか。
彼女のスキルがなんであるのかは聞いていない。
しかしこれがスキルによって書かれた言葉だとして、それが占いとか予知とかだとしたら――僕の記憶、それも大切な色々を思い出す未来があるかもしれない。 そう思うと安堵か喜びか、こみあげた感情が溢れて頬を伝うのであった。
その後、老婆に電話でメモの正体を確認した。
スキルは個人情報であり、あまり人に吹聴するものではない。 そのスキルの能力によっては、僕のように面倒事になるケースが度々あるためだ。
しかし老婆は僕らを信用してくれているのか、銀花のスキルについて話してくれた。
『それは預言だよ』
『未来予知とは違う』
『それはお前さんの行動次第で起こりうる未来の一つ』
『スキル預言はその者が求めている未来に繋がる道標を指し示す能力だ』
老婆はそう言って、さらに真剣な声音で「このことは誰にも言っては言わないでくれ。 分かるね?」と言った。
こんなスキルがあると欲深い人間に知られたら、銀花を無理矢理にでも手に入れようとするだろう。
「ええ、分かっています。 ありがとうございます。 また遊びに伺います」
『ああ、あんたらなら大歓迎さ』
一度しか銀花とは関わっていないが、彼女には絶対僕のような想いをさせてはならないと強く思うのであった。
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