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突然スタートさせられた異世界生活

情報戦は

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そろそろこちらから切り込んでみるか。

「その金髪の方って皇太子様の事では?」

「うん、。梓、普通の一般家庭の家だから急に身分の高い人と会うってびっくりしちゃってぇ。えへへ、恥ずかしいね。」

「それで、こちらの言葉はいつ覚えたんですか?」

「…え?梓、こっちの言葉なんて分からないよ?だってずっとあの部屋に軟禁されてたんだよ?ララちゃんだって見たでしょ?どうしてそんな事言うの…?」

「目的は何です?私の懐柔でもしてこの国に引き留めろとでも言われてるんですか?」

「梓、本当に…。分かんないのに…。うっ、ぐすっ。」

泣けばどうにかなるとでも思ってるのか。本当に甘ちゃんって見てると苛々する。
「正直に言わないなら聞きますが。言葉が通じないなら何故、癒しの聖女だと呼ばれている事を知っているのですか。それに皇太子の事も。言葉が通じないなら分からない事でしょう?」

彼女は俯いて何も言わない。沈黙は是ということなのだろう。唯一の同郷の人でさえ疑わないといけないなんて、本当にこの世界は何故こんなにも私に厳しいのだろうか。

「……。ねぇ、本当の事を話したら梓の事助けてくれる?梓もララちゃんと同じく魔族領で保護してくれる?」

やっぱり強かな人だ。黙っていたと思ったら損得勘定でもしてたのか。

「それを決める権限は私にはありません。そういう申し出があったと伝えることは可能ですが。」

「梓、まだ簡単な単語しか分かんないから、詳しい事はあんまり分かんないの…。
梓がこの世界に来てからもう少しで一年経つんだけど。この国には、女神様に力を貸して貰えた聖女か勇者だけがこの世界を救えるっていう言い伝えがあるらしいの。それで異世界から召喚された人がその聖女と勇者になれるから…。梓がその聖女だって事みたい。

梓ね、家庭教師みたいな人がいて教えてくれるんだけど、ちゃんと出来ないと棒で梓の事叩くんだぁ…。それにたまに梓の髪とか爪とか唾液とか持っていくの。あれ、何だろう?」

この世界に来てからもうすぐ一年経つのか。なら何故私がこの世界にいる?召喚されたのは私が先?後?それとも同時?私の日にち感覚は麻痺してるから肝心なことが分からない。

「それで私の事は何と?」

「もうすぐ貴方と同じ世界から来た人が来るって皇太子さんが言ってたの。だから、その人をこの国に住むように説得してほしいって。いきなり城から追い出されたくないならって…。梓、この国の事何にも分かんないのに、酷いよ…。」

懐柔しろと脅されていたか。まぁ、この辺は想定内だ。それに私がラヴァルさんから聞いた話より随分と情報が抜け落ちている。
事が失敗しても、貴重な異世界人を本当に放り出すなんて事はしないだろう。それなら死ぬまで飼い殺しにして血やら何やらを土地にばら蒔いて浄化した方が効率的だ。それか子供を産ませるか、だ。異世界の血を引く子供なら利用価値はあるだろう。私が為政者ならそうする。私に思いつく位なのだから、この国の上層部もそのつもりだろう。

「伝えておきます。」

「待って!梓……。」

そう言って席を立った。これ以上は我慢できそうになかった。

得た情報はどこまで伝えるべき?ラヴァルさんはどう出るか。自分に良くしてくれた人を疑って利用するのは精神的にかなり辛い。


ほんと録でもないな、この世界。






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