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空を満たす何か

魔王爆誕まで残り…②

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この筋書きをラヴァルさんに教えてあげよう!
「こんな方法思いついたんですけど、どうですか」て感じで切り出したら良さそう。嘘の精霊とか要らなかったじゃん!て感動してくれると良いな。

以前ラヴァルさんに丸投げしたけど、まぁラヴァルさんが一人で答えに辿り着けないなら仕方ない。冒険の主人公だってサポートキャラがいるんだから、サポート位はしてあげようと思う。これで面倒くさいことが一気に片付くと思うと、モチベーションも爆上がりするというもの。

早速、ラヴァルさんにコンタクトを取ろう。
勿論、異世界だから探し回るしかない。郵便屋なんて素晴らしいものはないし、字も統一されてないから手紙の出しようがない。とにかく時間と手間と運が必要だが仕方ない。アノーリオンかツニートをタクシー代わりに使うか。

空を飛べって?
翼が生える事は全人類の夢と言っても過言じゃない。しかし突然翼が生えても、その翼を支えるのは己の筋肉だ。つまり何が言いたいかというと、寝込むレベルで背中の筋肉痛に襲われるから翼は使いたくてもほとんど使えないのだ。背中にくっついてるだけでも重たいってのに…。たまに引きずって歩いてるのは仕方ないよね…。

「筋書きが決まったから、解散しよう。あ、アノーリオン。早速ラヴァルさん探しに行こうよ。暇でしょ?」

『俺も、行く。』
結局、アノーリオンをタクシー代わりに3人で行くことになりました。

『アノーリオン。飛べないの?』
「…………ぐすっ。重たくて飛べん。おぬし、小さくなってはくれんか…?」

アノーリオンが泣き出した。飛べないと泣くのは何でだろう。空を飛ぶ一族としてのプライドが~とか?かわいいと思ったのは秘密。

『窮屈だから、やだ。』
ツニートってば、小さくなることに関しては頑固になるほど嫌らしい。
「急いでないし、のんびり行こう?
そういえば、ツニート。小さくなるのって窮屈なの?」
むっつりとツニートが頷く。
『身動き、できないくらい、小さい服着て、走る、同じ。息苦しい、窮屈、嫌。』
着物の紐や帯をぎっちぎちにきつく締めた、みたいなイメージかな?走れないし、飲食も難しいし、呼吸すら浅くなる感じ。確かにそれはきついな…。

「アノーリオン。どこに向かって歩いてるの?ラヴァルさんの居場所分かるの?どうやって?」
「勘じゃ。………冗談じゃ。そんな顔で見ないでおくれ…。儂が悪かった…。
昨日星降の丘に置き去りにしたじゃろう?だからまだそこに居るのではないかと思ってのぉ。あやつの事じゃ、納得の行く答えが出るまで考えに夢中になってその場から動かないはずじゃ。まぁ、俺等が行くまでに答えを見つけていたら外れじゃなぁ…。」
「外れ…。その時はどうするの…?」
「人伝にあやつを見なかったか、一人ずつ聞いていくしかないのぅ。」
うわ、まじか。それは避けたい。電話すらないから、知らせを持った人とすれ違う何てこともザラにあるのだ。その分、流れる時間は止まっているのかと思うほどにゆっくりだ。いかに普段の生活が何かに追われるように時間を気にしていたのかが分かる。連絡の手間を考えると地球の文明が恋しい…。

『探すの、面倒くさい?』
ため息をつく私に、ツニートが聞いてきた。
「うん、とっても。念話は便利だけど目の前にいる人達とだけだし。遠くの人との連絡手段ってないでしょ?私の世界だと、遠くに住んでいても機械を使えば、簡単に話せるの。手紙や荷物を配達してくれる人達もいるしね。話す言葉が違っても、機械が翻訳してくれるから会話は成り立つんだから。」
「機械?からくりのことか?ヘカトンケイル族のとこで見たじゃろう。あのからくりの名前はなんじゃったか……。」
ドラゴン落とし?』
「そうじゃそうじゃ!ネーミングセンスはちとどうかと思うがの。岩ごときで竜は落ちん。………何じゃその目は!?本当じゃぞ!?」
ドラゴン落としとは、巨大な投石機のことだ。岩をセットして、空に撃ち出せば竜も落とせるだろうって事で命名されたらしい。実際は竜を撃ち落とす用ではなく、住宅整備用らしい。ヘカトンケイル族は岩場に住んでいるから、住宅の加工が大変なんだそう。住宅整備しているのを見たことがあるが、作った投石機使わないで、岩を投げつけて整備してたけど。(閑話休題)

「それと同じかな。機械は木や岩より金属を加工したものが多かった、かな?あんまり詳しくないんだけど。機械で出来ないのは、………人の心を治療することと深海に行くこととかかな。」
まだ機械で出来ない事はたくさんあるとは思うけど、スマホが使えないからこれ以上は分からない。

おしゃべりをしながら、昨日ラヴァルさん達を置いてった星降の丘が見えてきた。轟音に慣れたからか、日中は隕石が降ってこないから静かなのが不思議な感じだ。

うわ、まだいた。あの人影は間違いない、ラヴァルさんだ。まだ考えてたの…?アノーリオンの背中から降りてラヴァルさんに近付いた。
「ほんとにいた…。」
私の言葉に、ラヴァルさんとぱちりと目があった。
「おや、ララではありませんか。」
「え、一晩中寝ないで考えてたんですか?」
「……?そんなに時間が経っているのですか?」
驚愕で言葉が出ない。ツニートとアノーリオンはやはり少し警戒しているのか、少し離れたところにいた。
「ギルミアさんは…?」
「里に帰ろうとしなかったので、恐らくララも滞在した館にいると思いますよ。」
里に帰ろうとしない…?いや、今はギルミアさんよりラヴァルさんに皆で考えた筋書きを伝えることが先だ。勿論、守さんの埋葬の事は隠しておく。
「……………こんな方法ではどうですか?これなら和解もできるし、手腕を認めさせ王になることも出来ます!」
「淀みを解決した手腕を?確かに良い方法だとは思いますが、淀みの解決方法が分からないと出来ませんし、私はその解決策を持ち合わせておりません。」

確かにその通りだ。淀みは妖精族の一部や自然が少しずつ浄化するとはいえ、主に人間が生み出す淀みの生成スピードの方が遥かに早く、浄化が全く追い付いていない。一番手っ取り早いのは、異世界人をバラして淀みが溜まった土地に撒く事だ。しかし、現状異世界人は私しかいない上、バラされるのは非常に困る。

「妖精族の一部に浄化できる方がいるんですよね?その方たちにお願いするのは?」
「浄化出来るのは、火、水、鈴、薬草の系譜、あとは木漏れ日の妖精か陽だまりの精霊です。しかし、力のある者はほとんどが死に絶えていますから難しいでしょう。
かつては鈴が最も浄化に優れておりましたが、人間によって滅びたはずですから…。火や薬草の系譜は土地が焦土になりますし、水は大量の水により地形が変わり、失敗すると国は簡単に沈みますから、あまりオススメはしません。木漏れ日と陽だまりの妖精と精霊達はその名のごとく穏やかな者達ですから、のんびりしすぎて浄化のスピードはかなり遅いので、こちらもオススメは出来ません。やらないよりはマシ、というレベルです。
問題は鱗粉です。浄化には 浄化できる妖精や精霊の羽から落とされる鱗粉も必要です。しかし、鱗粉は該当する全員分合わせても一日にティースプーン一杯にも満たない量しか採れません。浄化には果てしない時間がかかりますよ。」
「薬草の系譜で何故土地が焦土になるんですか?」
「薬草の系譜が作る淀み浄化薬に土地が耐えらないんです。効果を弱めれば淀みは浄化されませんし、浄化できるほど効果を高めると土地が焦土になるんです。
まったく…助けになる妖精達すら害する人間達は、なんて愚かなんでしょうか。」
「該当する妖精や精霊は何人ほど……?まさか一人ではありませんよね?」
「流石に一人では無いはずです。穏やかな火は再生の火がいると、より振るう力が大きくなるんですが…。こればっかりは何とも出来ないのが歯痒いですね…。」
「穏やかな火…?火にも色々あるんですか?」
「えぇ。火だと穏やかな火、荒々しい火、再生の火に大別されますね。更に細かな分類があったはずですが、妖精族に聞けば分かるかもしれません。」
「系譜の組み合わせで力を強くする事もできるんですね。再生の火の方達は何人いるんですか?」
「人間達によって滅ぼされました。再生の火は荒々しい火と違い、攻撃の手段を持ちませんから。治療効果はありますがそんなに高くはありませんし、普段は温石くらいしか役に立つ事はない種です。」
まさかのカイロ!確かに攻撃にはならない…。湯治とか温熱療法ってことかな?それだと治療効果は高くないね…。時間もかかるし。気持ち良いんだけどね。
というか人間達は攻撃手段を持たない、か弱い妖精を手に掛けたってことか…。そこらの虫にも劣るわ。

浄化出来るのは、火、水、薬草、鈴。

浄化に鈴?なんか神社みたい。

お祓い的なイメージなら、塩とか聖水が効果ありそう。神社の人がよく振ってる榊の葉っぱみたいに、薬草の妖精を振ったら浄化出来ないかなー。さすがに無理か。

そう上手くはいかないだろうけど、どうにかバフかけられる組み合わせないかなー。

浄化に効果ある組み合わせを発見出来れば、手柄になるのに。まぁ妖精族の協力が必須なんだけど。引き篭もりだったら協力を取り付けるの大変だろうし。

その辺はきっとラヴァルさんがうまいことやってくれるだろう。必殺丸投げ。


次に我々のすべきことは、同胞をきちんと弔う事だ。





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