僕は平凡に生きたい

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トラウマ

8(Side:中原 京)

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最近佳乃ちゃんに元気がないなぁ、とは思っていてクマも段々凄いことになってきて。
心配して声をかけても大丈夫としか言わない佳乃ちゃんに、俺って頼りないのかななんて落ち込んだりもした。

ある日家の用事で実家に戻されて、夜遅くに寮に戻った時ふらふらと歩く佳乃ちゃんが見えてなんでこんな時間に?と思ったのと同時に様子がおかしいと思ってびっくりして止めた。

俺がいることに不思議そうにしていたけど、それは夢に出てきたからだった。

佳乃ちゃん、ここは夢じゃなくて現実だよ。

その言葉は口から出ることなく、迷子のような佳乃ちゃんをどうにかしたくて連れ出した。
寝ぼけ眼だからなのかふらふらとした足取りの佳乃ちゃんを抱えてあまりの軽さにこのまま消えてしまうんじゃないかと怖くなった。
…もし、消えてしまうとしても。絶対に、この手を離したくない。

ベンチに座ってお互い何も話さず、俺は内心焦っていた。
普段の雰囲気と違う佳乃ちゃんに戸惑っているのもそうだけど、俺の方を見ない佳乃ちゃんに。
だから聞く予定のなかった疑問を口にしてしまった。

『今、楽しい?』だなんて。
言ってから、しまった。なんて後悔しても遅かったけど、佳乃ちゃんは笑みを浮かべて答えてくれた。
その笑顔を見て、やっと笑ってくれたと安心していたら最初は苦手だったと言われ絶望して落ち込んでしまった。
…うん、フォローありがとう…。

そっか、佳乃ちゃんは楽しいと思っているのか。よかった。

そう思ったのも束の間で、佳乃ちゃんの昔の話を聞いて俺は今までの自分を殴りたくなった。

なんでもないように笑いながら話す佳乃ちゃんが、痛々しくて、俺はどうしたらいいんだろうと考えた。

今、楽しいと笑っている佳乃ちゃんも佳乃ちゃんで、殻の中に閉じこもってしまっている佳乃ちゃんも佳乃ちゃんで。

色んなこと考えても何にも思い浮かばなくて、とにかく笑っている佳乃ちゃんが泣いているように見えて慰めるように抱きしめた。
強く抱きしめたら壊れてしまいそうだったから、そっと、壊さないように。

そうしているうちに眠ってしまった佳乃ちゃんの頭を撫でながら、これから俺は、佳乃ちゃんを守ると決めた。


「…取り敢えず、俺の部屋にしか連れて行けないよなぁ…」

この寮の部屋はオートロックになっていて鍵がないと入れない。
案の定佳乃ちゃんは部屋の鍵を持っていなくて、この時間に寮長起こすのも偲びなくて先ほどと同じように佳乃ちゃんを抱き起こして俺の部屋へと向かった。

起きた時に、何も覚えていないように願って。


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中原京の出番多いのは、書きやすいからなだけです…。
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