僕は平凡に生きたい

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トラウマ

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はやく、消えたい。そんな話を何度かして、ある日僕は気付いた。

僕が全部隠し込めばもう、終わるんじゃないか、と。

それからは坂道を転がるかのように早かった。
まず、僕は何も思い出さなくなった。
何も気にしなくなった。
笑うように、なった。

そしたら、先生達は。
時々病院に来てくれるなら、もう帰ってもいいよと言ってくれた。
そっか。帰れるんだ。よかった。

先生達が嫌なわけじゃない。すごく優しくて、楽しかった。

ただ、僕は凄く人の感情に臆病になってしまって、全てが怖くなった。

退院してからもお母さんの顔色を伺って、何か声をかけられる度に謝った。
そんな僕をみてお母さんは泣きそうな顔をするから、ああ、これもダメなのかと。何をやってもダメだなぁ、なんて自分が許せなくて。

お母さんにも色んなことを隠すようになって、いつの間にかそれが自分になっていた。

臆病なのは自分じゃない。
消えたいのは自分じゃない。

いつも笑っているのが、自分。
俺、が、自分。

あれから何年か経って、今年この学園に入学した。
お母さんも元気になって、普段通り過ごせるようになったし離れるなら今のうちだと思って。

そこで出会った京くんや、颯くん、あっくん…沢山の優しい人たちに関わってまた、ふと思い出す時が出てきて。
多分それが昔の夢を見た理由だと思うんだ。

軽くなんでもないようにポツリポツリと話せば、話終わったと同時に京くんに抱き締められた。
壊れ物に触れるかのように抱きしめられて、目を白黒させた。
すると、ごめん、と小さな声で謝られて、少しだけ首を傾げる。

「…どうしたの?なんで、謝るの?」

「おれ、俺、何も知らないとは言え…今の今まで、ちゃんと、何も聞かなくて…!」

「…まぁ、俺何も言わないからねぇ。今は夢だから話しただけで」

現実じゃ絶対に話せない。…話したく、ない。
あぁ、なんだかものすごく眠たくなってきた。もう目が覚めるのかな。

「ぅ…きょ、くん…おれ、もぉ、ねる、」

「えっ」

「ごめ、ん…」

目をゴシゴシと擦って起きようとするけど、抗えないぐらい眠たくて京くんに身を預けたまま目を閉じる。
意識が遠のく寸前、「…俺が、守るから」と声が聞こえたけど、きっと俺は覚えていない。


**
軽い夢の話でした。
あんまり重くしたくないなぁと思ったんですが、そうもいかず。
思ったより暗くなってしまった。
前の話を読めない人もいるかなと思って、こちらは軽い表現で終わらせました。
佳乃はふとした時の思考がぶっ飛んでます。
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