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01.神霊出生の章
No.007「トヨクモノ」
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古事記によると、国之常立神の次に生まれた、七番目の神だという。神世七代においては、二世代目に生まれた神である。
神名の由来は、はっきりとはしていないが、漢字を見る限り、大地に浮かぶ豊かな雲であろうか。国之常立神に次いで生まれたと考えれば、天と地の中間に位置する神と思われる。
ただし、神名に「雲」が含まれた例は豊雲野神しかなく、借字(漢字の意味に関係なく音を表したもの)の疑いがあり、それに基づくと「野の神」であるとも考えられる。
日本書紀の本文では、豊斟渟尊という名前で書かれ、三番目に生まれた神とされる。
「次に国狭槌尊。次に豊斟渟尊。凡て三の神ます。乾道独化す。所以に、此の純男を成せり」
(「三の神」とは、この直前に生まれた国常立尊も含まれる)
第一の一書でも、「豊国主尊」「豊組野尊」「豊香節野尊」「浮経野豊買尊」「豊国野尊」「豊齧野尊」「葉木国野尊」「見野尊」の別名が書かれ、これらも同一のものと考えられている。
先に生まれた神々と同様「身を隠した」と書かれ、それ以降の一切の記述はなく、神話に絡んでくることもない。
先代旧事本紀の「神代系紀」には、豊国主尊の名前で書かれている。二世代目の神として、国常立尊とともに生まれたとされる。
ここでも別名として、豊斟渟尊・豊香節野尊・浮経野豊買尊の記載あり。
(No.006「クニノトコタチ」参照)
トヨはもともと擬音語であり、のちに転じて、豊富なことを形容する語となった。古代日本において「a」「o」「u」の母音は結合しやすく、また、交替しやすい音でもある。それとは別に「m」と「b」も交替しやすい。
日本語の「h(は行)」は奈良時代頃、両唇音(上下の唇を使って発音する)の「f(ふぁ、ふぃ、ふぅ、ふぇ、ふぉ)」であったとされ、さらに古い時代は「p(ぱ行)」であったと推測される。
そのため「は行」の子音は、同じように唇を閉じたのちに発音する「b(ば行)」「m(ま行)」とも結びつきやすかった。
そういう長い間、口承によって信仰された神だったため、「クモ」「クム」「カフ」「カブ」など多くの変化を見せたと考えられる。
また、一度「豊斟渟」や「豊組野」と文字化されたものを、トヨクムヌ・トヨクムノと読まず、トヨクミヌ(toyokuminu)・トヨクミノ(toyokumino)と読んだことで、トヨクニヌ(toyokuninu)やトヨクニノ(toyokunino)という形で「豊国主」や「豊国野」が生じたと思われる。
最後の「見野」は、頭につけるべき「ク」が抜け落ちてしまったものと見られる。「葉木国」だけは、どの神名ともかけ離れているが、その由来については明確なものが存在しない。
ただ、日本書紀の一書第二には「葉木国、此云播挙矩爾」という注記があり(No.004「ウマシアシカビヒコヂ」参照)、この当時から「ハコクニ」という読み方だったと考えられる。
面白い話としては、「豐(豊)」の古体字に「丰(現在、中国で使われている簡体字)ふたつに豆」という形があり、その上部「丰丰」が「葉」の上部に似ているので、文字を正しく読めなかった人物が、その字を「葉」かと疑い「木」を書いて置いたところ、それが次の書写者によって、日本書紀に取り入れられてしまった、といった説である。
神名の由来は、はっきりとはしていないが、漢字を見る限り、大地に浮かぶ豊かな雲であろうか。国之常立神に次いで生まれたと考えれば、天と地の中間に位置する神と思われる。
ただし、神名に「雲」が含まれた例は豊雲野神しかなく、借字(漢字の意味に関係なく音を表したもの)の疑いがあり、それに基づくと「野の神」であるとも考えられる。
日本書紀の本文では、豊斟渟尊という名前で書かれ、三番目に生まれた神とされる。
「次に国狭槌尊。次に豊斟渟尊。凡て三の神ます。乾道独化す。所以に、此の純男を成せり」
(「三の神」とは、この直前に生まれた国常立尊も含まれる)
第一の一書でも、「豊国主尊」「豊組野尊」「豊香節野尊」「浮経野豊買尊」「豊国野尊」「豊齧野尊」「葉木国野尊」「見野尊」の別名が書かれ、これらも同一のものと考えられている。
先に生まれた神々と同様「身を隠した」と書かれ、それ以降の一切の記述はなく、神話に絡んでくることもない。
先代旧事本紀の「神代系紀」には、豊国主尊の名前で書かれている。二世代目の神として、国常立尊とともに生まれたとされる。
ここでも別名として、豊斟渟尊・豊香節野尊・浮経野豊買尊の記載あり。
(No.006「クニノトコタチ」参照)
トヨはもともと擬音語であり、のちに転じて、豊富なことを形容する語となった。古代日本において「a」「o」「u」の母音は結合しやすく、また、交替しやすい音でもある。それとは別に「m」と「b」も交替しやすい。
日本語の「h(は行)」は奈良時代頃、両唇音(上下の唇を使って発音する)の「f(ふぁ、ふぃ、ふぅ、ふぇ、ふぉ)」であったとされ、さらに古い時代は「p(ぱ行)」であったと推測される。
そのため「は行」の子音は、同じように唇を閉じたのちに発音する「b(ば行)」「m(ま行)」とも結びつきやすかった。
そういう長い間、口承によって信仰された神だったため、「クモ」「クム」「カフ」「カブ」など多くの変化を見せたと考えられる。
また、一度「豊斟渟」や「豊組野」と文字化されたものを、トヨクムヌ・トヨクムノと読まず、トヨクミヌ(toyokuminu)・トヨクミノ(toyokumino)と読んだことで、トヨクニヌ(toyokuninu)やトヨクニノ(toyokunino)という形で「豊国主」や「豊国野」が生じたと思われる。
最後の「見野」は、頭につけるべき「ク」が抜け落ちてしまったものと見られる。「葉木国」だけは、どの神名ともかけ離れているが、その由来については明確なものが存在しない。
ただ、日本書紀の一書第二には「葉木国、此云播挙矩爾」という注記があり(No.004「ウマシアシカビヒコヂ」参照)、この当時から「ハコクニ」という読み方だったと考えられる。
面白い話としては、「豐(豊)」の古体字に「丰(現在、中国で使われている簡体字)ふたつに豆」という形があり、その上部「丰丰」が「葉」の上部に似ているので、文字を正しく読めなかった人物が、その字を「葉」かと疑い「木」を書いて置いたところ、それが次の書写者によって、日本書紀に取り入れられてしまった、といった説である。
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