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第二章 冒険出発の篇

46-2 冒険者ギルド

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 アイたち全員が椅子に腰を下ろすと、村長も自分の椅子に座って話を始めた。

村長「では、改めてギルドのことですね…」
ナオ「実は昨日お見せした本に、ゴブリンの皮はギルドで売ることができると書かれていて…
 でも、ギルドの説明は何も書かれていないので…」
村長「なるほど…ここは片田舎なのであまりくわしいことまでは分かりませんが…」

 村長はそう前置きをしてからギルドについて説明をする。

村長「皆様がおっしゃっているギルドとは、恐らく「冒険者ギルド」のことでしょう。
 この国では魔獣や盗賊に困った時に村や町でお金を工面くめんして、魔獣や盗賊の退治をその「冒険者ギルド」へ依頼いらいする制度があります。
 そうした退治の依頼を「クエスト」と呼んでいます。
 村や町以外にも貴族の皆様やご領主様からもクエストが出ることもあります。

 そうしたクエストがあることを冒険者ギルドが掲示すると、冒険者ギルドに登録している者がそれらのクエストを引き受けて魔獣や盗賊の討伐とうばつに向かいます。
 その登録している者たちを我々は「勇者」や「冒険者」と呼び、そうした勇者たちの集団を「勇者パーティー」と呼んでおります。」

 アイたちは村長の話に真剣に耳を傾けている。

アイ「では、そのクエストというのは勇者パーティーとして登録しないと出来ないんですね?」
村長「そうです。勇者や勇者パーティーの登録はその冒険者ギルドで出来ます。
 私がかつて聞いた話では、クエストは魔獣や盗賊の退治の他に旅に出る貴人や商人・隊商キャラバン護衛ごえい、大金や貴重な物資の輸送、それに戦争の時にはやとい兵の募集もあるそうです。」

ナオ「そのクエストに出ている魔獣退治などをすれば、お金を得られるってことですか?」
村長「そうです。クエストに成功すれば比較的容易たやすいもので数十ゴールド、大変なものだと数百ゴールドのお金を得ることができます。」
モア「ソラが言ってたことだ…」

 モアがひとり言を言うのを、隣にいたルカが静かにするように彼女のそでを引っ張る。

村長「冒険者ギルドがあることで皆が得をしています。
 村や町の人間はお金を出すことで危険な魔獣退治などで住人が傷つくことが無くなります。
 貴族やご領主様方もわざわざ兵隊を出さずに済みます。
 そして勇者パーティーの者共はお金を得られるだけでなく、難しいクエストをこなせば自分たちの名声が拡がっていきます。いいことくめです。」

アイ「じゃあ、魔獣や盗賊の退治はほとんどクエストとして行われるってことですか?」
村長「まあ、あまりにも魔獣や盗賊が手強てごわい時には最終的にご領主様が兵隊を出されますが、最初はクエストとして出されることがほとんどですね…」
アユミ「その冒険者ギルドでゴブリンのようなものも買ってもらえるんですね…」
村長「あまり詳しくは知りませんが、クエストで倒した魔獣などを買い取っていると聞いています。」

 村長は一度話を切ると、他に質問があるかという表情をする。アカリがすぐに聞く。

アカリ「この村の近くだと、どこに冒険者ギルドがあるんですか?」
村長「この近辺だと、歩いて最低6、7日はかかるところが一番近い町になります。そこだと冒険者ギルドがありますね。」
ソラ「歩いて6日か…」

 ソラの言葉を聞いて村長がにっこりする。

村長「ここには村や町をつなぐ駅馬車があります。乗り心地はあまり良くないので基本的には荷物を運ぶためのものですが、頼めば人もせます。
 お金はりますが、時間は短くなります。一番近いドムニという町までなら馬車だと3、4日で行けるでしょう。」

 アイが隣のアカリに何か言おうとするのを見て、村長がすぐに言葉をぐ。

村長「次に駅馬車が来るの3、4日くらい後になります。
 実は今、村に来る駅馬車の御者をしている者がこの村の出でナニと申しますが、この者は若い時に村を飛び出し、10年ほど勇者パーティーに加わっていました。
 なので、冒険者ギルドや勇者パーティーについては私よりもずっと詳しいでしょう。
 駅馬車が来るのを待たねばなりませんが、是非ナニに話をお聞きになるべきです。それにナニにはドムニの町に知り合いがいるようですし…」

 朝にアイが知りたいと言っていたことが村長の話で何もかも分かった。
 アイは立ち上がって村長に頭を下げる。

アイ「村長さん、本当にありがとうございます。正直、村にお邪魔になったものの、これからどうすればいいのかまるで分からなかったので…
 村長さんのお話を伺って色んなことが分かってきました。本当に助かります。」

 村長はアイの言葉を聞いて何度も首を振った。

村長「いやいや、村の者を助けて頂きながら、満足なお礼もできておりません。
 我々の知っていることならば何でもお教えいたしたいと存じます。
 どうか、どんな小さなことでも我々にお尋ねください。私がいなければ、村の誰にでもお尋ね下さって結構です。

 村の者たちは外の者とあまり付き合いがないので無愛想ぶあいそうだと思いますが、本当は気のいい者ばかりです。どうかお気遣きづかいなさらぬように…」

 アイは仲間の顔を見渡して、他に聞くことがないか確かめる。
 するとアユミが思い出したように村長に尋ねる。

アユミ「実はちょっと言いにくいんですが…私たちがお借りしている小屋の裏にある森で、焚き木をひろってもいいでしょうか?…
 村の方の必要な分を取ってしまうなら、無理にとは言わないんですけど…」

 アユミが恐る恐る言うと、村長は笑い出した。

村長「(笑)…どうか気になされず森から焚き木を持っていって下さい。
 森ならば皆様が最初に通った畑の向こう側にも広がっておりますので、足らなくなれば、村の者はそちらへ取りに行きます。
 たくさん拾ってもらって大丈夫ですよ…」
アイ「村の皆さんの生活の場所なのに、すいません…」

 村長はそんなアイたちの様子を笑っただけで、何も気にしていないようだ。

村長「では、また駅馬車が参れば皆様にお知らせいたしましょう。
 今は他にお聞きになられることはないですかな。無ければ、とりあえずここまでといたしましょう。」

 村長が立ち上がると、アイたちも立ち上がり、もう一度全員で頭を下げた。

アイ「ありがとうございました。」

 村長自身が先に立ってアイたちを送る。彼女たちが外へ出るとすぐにニコがやって来た。

「お疲れ様です。皆様の小屋までお送りいたしましょう。」

 またニコがタイミング良くやって来たので、アカリが聞く。

アカリ「あの~、ニコさんは私たちの話が終わるまで待っていらしたんですか?」

 ニコは笑って首を振る。

ニコ「私は村長の家のすぐそばに住んでいるので皆様が出てこられたのが分かっただけです。
 それに皆様の案内をするように申し付けられておりますので…」

 ニコはやって来た時と同じようにアイたちを送ると、そのまま頭を下げて去っていった。
 みんなは小屋に入ると床に腰を下ろす。

ナオ「…なんか、アイが言ってたことが全部分かったね…」
アイ「やっぱり話を聞くのは重要だよ…」
アカリ「じゃあ、私たちも町に行って登録して、勇者パーティーになるのね?」
ソラ「マジでRPGっぽくなってきてない?」
モア「ウケルって(笑)…」

タクミ「イヤイヤ、リアルRPGは結構マズい気がするけど…」
ルカ「でもそのクエストって、私たちに出来るのかなあ…」
ツグミ「クマとかオオカミとかばっかりだったら…」
モア「それはヤダよー…」

 オオカミやクマとの格闘かくとうを思い出して、みんなまた難しい顔になる。

アイ「…まあ、それはクエストを見てみないと分からないから…」
アユミ「少ないお金のクエストもあるって村長さんも言ってたし…」
ソラ「…まあ、やるしかないよ…他にお金を得られる方法もないし…」
ナオ「そうだね…最初は簡単のを探していこうよ…」

 村長の話を聞いて、次にやるべきことが全員に見えてきた。






*楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、「いいね」や「お気に入り」をいただければ励みになります。
 また、面白かったところや気になったところなどの感想もいただければ幸いです。よろしくお願いします。

 2025年12月18日。
 文字数がかなり多いエピソードが増えてきましたので、エピソードを分割して読みやすくしていきます。
 現状では文字数で機械的に分割を行っていますので、単純にページが増えているという感じでお読み下さい。
 こちらもマイペースで進行いたしますので、ご容赦ください。
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