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第一部 第一章 異世界転移の篇

4 それぞれの能力

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 女の子たちは膝を抱えて座ったり、壁にもたれたり、寝そべったりしながらタクミの言葉を聞いている。

タクミ「最初は河合さんからみたい。」

『・メンバー個別に付与されるもの。

 アイ
 物理攻撃・物理守備型、物理攻撃特化型

 経験値の増加にともなって物理攻撃・物理守備の能力が取得しゅとく、レベルアップしやすく、特に物理攻撃が向上しやすい。

 身体能力、具体的にはパワー、スピード、アジリティ、スタミナ、ジャンプ力なども向上しやすい。
 更には五感、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、直感なども向上していく。』

アイ「結構すごくない?」
アカリ「まさにアイらしい能力だよね。」
アイ「やったー!うれしいー‼」

 アイは勢い良く立ち上がって両手を挙げた。タクミはそんなアイの様子をうかがいながらもそのまま読み続ける。

『 ただし、魔法は使えない』

アイ「えっー!ウソっー、魔法使えないの?マジで?…ガッカリ……」
アユミ「いや、アイらしくない?(笑)アイに魔法は合わないよ、ねえ?」
ソラ「何かアイは魔法じゃない(笑)。」
アイ「マジかー…へこむわー……」

 さっきの勢いはどこへやら、アイはうなだれてその場に座り込んだ。みんな、アイのそんなガッカリした様子を見てケラケラ笑う。

タクミ「次は小川さん。」
アカリ「オーケー。」

『 アカリ
 物理攻撃・物理守備型、物理守備特化型

 経験値の増加に伴って物理攻撃・物理守備の能力が取得、レベルアップしやすく、特に物理守備が向上しやすい。

 身体能力、具体的にはパワー、スピード、アジリティ、スタミナ、ジャンプ力なども向上しやすい。更には五感、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、直感なども向上していく。
 ただし、魔法は使えない』

 アイの能力を聞いてそれぞれが細かい能力をさずかっていると分かったので、誰もがタクミが読む本の中身を聞き逃すまいと耳をかたむけている。

ナオ「アイに対してアカリは守備型っていうことね。」
アイ「分かる。剣道の時も結構守りから入ってたからね。」
アカリ「何か見られているみたいでキモイね。こんなに合ってると…」

ルカ「でも、身体能力も上がってくのは分かるけど、視力とか聴力とかも上がってくんだね。変わってるね…」
モア「味覚が良くなるってどういうこと?こいつの作った料理はマズイとか言い出すのかな…」
ソラ「それ、違うと思うけど(笑)。」

アイ「魔法が使えない仲間がアカリだから許す!」
アカリ「気にしすぎじゃない?(笑)。」

 アイが魔法のこだわっているのを見て、アカリ以外の女の子もクスクス笑う。

タクミ「次は中森さんになるよ。」
ソラ「おっ、もうきた。期待してるよ。」
アユミ「真中君が決めてるわけじゃないって(笑)。」

『 ソラ
 物理攻撃・物理守備、攻撃魔法・守備魔法特殊型

 経験値の増加に伴って物理攻撃・物理守備、攻撃魔法・守備魔法がまんべんなく取得、向上しやすい。
 戦略魔法も取得できる。また、一部の生活魔法も取得できる。』

 今度はソラが喜んで立ち上がった。

ソラ「よっしゃー!魔法、キター‼」
アイ「ウソー、ソラは魔法使えるって。なんで私じゃなくて…」
ソラ「そりゃ、日頃の行いですって、ゲヘヘ(笑)…」

アイ「それだけはうそでも言うな。お前は絶対に違う。」
ソラ「見てる人は見てるんだって。ヒャッホー‼」
アユミ「まあまあ、2人とも落ち着いて……」
タクミ「う~んと、続けるね。」

『 身体能力、具体的にはパワー、スピード、アジリティ、スタミナ、ジャンプ力なども向上しやすい。
 更には五感、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、直感なども向上していく。
 ただし、回復魔法は取得できない。』

 タクミが読み終わるとツグミは立ち上がって本をのぞき込み、ソラの能力を確かめる。

ツグミ「…何か魔法って、いろんな種類があるみたいだね…」
ナオ「攻撃とか守備とかは何となく分かるけど、生活魔法とか回復魔法とか、どんなのだろう?…」

ルカ「攻撃とか守備とか、そんな魔法があるってことはもちろん使う場面があるってことだよね。ちょっと怖い…」
アカリ「わかる。」

 ソラは魔法が使えると聞いてすぐにも使ってみたいのか、立ったままそわそわして落ち着かない。

ソラ「何かいろいろできるみたいだけど、これっていつからできるようになるの?」
ナオ「経験値の増加とか言ってるから、そうした経験が必要なんだろうね…」

ソラ「物理攻撃とかって一応イメージできるけど…アイみたいに竹刀しないを振ったりすりゃいいんでしょ?でも、魔法の経験って…そこらへんに先生がいんの?」
ツグミ「何かそんな感じはしないね…」
ソラ「じゃあ、どうすんだろう?」

モア「何かよくわかんないね(笑)。だんだんわかってくんのかな?」
アイ「あんたの順番もそのうち来るんだよ?わかってる?」
モア「うん(笑)…」
アイ「はー、タクミ、続けて……」

 モアが他人事ひとごとのように言うのがアイには引っかかったらしい。その間にアユミがソラのスカートを引っ張り、ソラも仕方なくもう一度その場に座った。

タクミ「次は高岡さん。」

『 ツグミ
 攻撃魔法・守備魔法型

 攻撃魔法・守備魔法が取得、向上しやすい。戦略魔法も取得できる。また、一部の生活魔法も取得できる。

 回復魔法は取得できない。魔法を使うことでスタミナを消費するが、レベルアップすることでスタミナも向上していく。
 加えて、魔法は同じ能力を持つ者が協力するとさらに強い力が出る。』

アカリ「ツグミは魔法特化か……」

 ツグミはアカリの言葉を聞いて、ソラと違い不安そうな顔をする。

ツグミ「私、魔法なんて使えるかなあ…それにそれって戦うってことでしょ。そんなの無理だよ。」
アイ「いや、それを言ったら私だって実際に真剣振り回して、戦場で戦えって言われたらいやだよ。」

アカリ「でもさっきルカが言ってたみたいに、こんな能力があるってことは使うような戦いに巻き込まれる可能性が高いってことでしょ。平和だったら要らないと思うし……」
ナオ「あんまり考えたくないけど、現実的にはアカリの言うとおりの気がする。」
ルカ「こんなの使わない方がいいよねー、やだなー……」

 みんな、一様に顔を見合わせてうなずく。

タクミ「一応続けるね…」
アイ「仕方ないねー…」
タクミ「次は鈴木さんです。」

『 アユミ
 生活魔法・回復魔法特化型

 経験値の増加に伴って生活魔法・回復魔法が取得、向上しやすい。攻撃や守備の魔法は取得できない。

 また、魔法を使うことでスタミナを消費するが、レベルアップすることでスタミナも向上していく。
 加えて、魔法は同じ能力を持つ者が協力すると更に強い力が出る。』

アユミ「あらっ、わかりやすい(笑)。」
モア「完全にお母さんじゃん(笑)…」
ルカ「今はお母さんとは限らないけど…」

 アユミの能力を聞いて、アユミ自身も含めて何人もがクスクス笑ってしまう。

ナオ「まあこれは順当じゃない。ソラやツグミは結構予想外だけど……」
アカリ「でもアユミはもし戦いになったら、その時の能力はないってことだよね。誰かが守ってあげないと……」

アユミ「そうだね。私、足手まといにならないかな……」
ソラ「ならないって。今から普段、アユミがいろいろ動き回って料理だなんだしてるのが目に浮かぶよ。」
アイ「いや、アユミばっかりじゃだめだから。」
アカリ「またそうなる…」

ナオ「とにかくアユミは別の意味で重要な役割ってことね。」
アユミ「了解しました(笑)。」

タクミ「次は小野寺さん。」

『 ナオ
 魔法全般特殊型

 経験値の増加に伴って攻撃魔法・守備魔法、戦略魔法、回復魔法、生活魔法の全てがまんべんなく取得、向上しやすい。

 また、魔法を使うことでスタミナを消費するが、レベルアップすることでスタミナも向上していく。
 加えて、魔法は同じ能力を持つ者が協力すると更に強い力が出る。』

ソラ「お~…」
アイ「イメージどおりだけど……」
ナオ「うん、何かいろいろできるみたいだけど、たくさんできるってことはどうなんだろう?
 アイみたいに攻撃特化だと、攻撃の能力がどんどんレベルアップしていくってことでしょ。
 でも私みたいにたくさんできると、能力は多いけどそれぞれのレベルはなかなか上がらないってことに……」

ルカ「たぶんそうなるよね…」
アユミ「どっちがいいのか、よくわかんないよねえー。」
アイ「いや、私は一個でいいから魔法が使いたい。」

 アイのちょっとくやしそうな言い方に、全員が爆笑した。

ナオ「(爆笑)…わかったそのうち私の能力、一個あげるから。」
アイ「無理だよ!わかってるよ!イヤミはいいって!」
ソラ「(笑)…」
アカリ「ハハハハハ(笑)。」
アイ「ゴメンって、続けてっ。」

タクミ(あんまり笑うと後がヤバい…)「じゃあ、続けるね。金沢さん。」
モア「やっと私だ。」
ソラ「あと、何があるっけ?」

 ソラの言葉にナオやルカが空でこれまで出た能力を思い出そうとする。タクミはそのまま本を読み続けた。

『 モア
 攻撃魔法・守備魔法、回復魔法型

 経験値の増加に伴って攻撃魔法・守備魔法と回復魔法が取得、向上しやすい。戦略魔法も取得できる。

 また、ごく一部の生活魔法も取得できる。また、魔法を使うことでスタミナを消費するが、レベルアップすることでスタミナも向上していく。
 加えて、魔法は同じ能力を持つ者が協力すると更に強い力が出る。』

 モアはタクミから聞いた自分の能力を何度も何度も反芻はんすうするように口の中で繰り返してから、ボソッと言う。

モア「ツグミとアユミの中間みたいな感じかな……」
アイ「結構いろいろできるからいそがしいそうに感じるけど。」
モア「いや、私、あんまり忙しくないほうがいい……」

 モアはアイが言うのを聞いてやっぱりというような、しぶい表情になる。

ナオ「それは無理でしょ…」
アカリ「みんな、まんべんなく忙しそうな感じじゃない?」
ソラ「私、結構大変そうだけど……」

 ソラも自分の能力が多いのに気づいたようだ。

アイ「あれ?うれしかったんじゃないの?」
ソラ「いや、みんなのを見ると私、断然忙しそうじゃない?アユミぐらいが希望なんですけど……」
アイ「またまた、うれしいくせに…」

 アイはちょっといじわるな笑いをソラに向ける。

アカリ「だからやめなって。」
モア「私も大変そうだなあ~…ヤダな~…そんなにがんばれないよー……」
ツグミ「みんなでいっしょにがんばろうよ。」
モア「え~、どうしようかなぁ~…がんばりたくないなぁ~…」

 モアがだるそうに床にしたのを見て、アイはあきれる。

アイ「やれやれ、ちょっとマジで大変かも……」
タクミ「まだ終わってないんですけど…」
アカリ「ああ、次、ルカだね。じゃ、読んで。」
タクミ「わかった。」

『 ルカ
 物理攻撃・物理守備、生活魔法特殊型

 経験値の増加に伴って物理攻撃・物理守備の能力がまんべんなく取得、レベルアップしやすい。

 身体能力、具体的にはパワー、スピード、アジリティ、スタミナ、ジャンプ力なども向上しやすい。更には五感、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、直感なども向上していく。

 また、生活魔法も取得できる。しかし、それ以外の魔法は取得できない。』

ルカ「私は戦いと日常生活って感じ…」

 ルカの能力を聞いて、ナオもさっきのツグミのように本を見てみんなの能力をもう一度確かめる。

ナオ 「四方に、この本で言う物理戦闘型と魔法戦闘型が最低1人は入るようにできるみたいね。」
ツグミ「なるほど…」
アイ「ますます戦闘がある前提の能力配分だね。」
ルカ「ヤダなー…」
アカリ「まあ、それは全員だよ。がんばろう。」

ソラ「て、まだ全員じゃないよ。タクミが残ってるじゃん。」
アユミ「確かに真中君のやつ、まだ聞いてなかったね。」
アイ「オーケー、タクミ、さっさと言っちまいな。」
タクミ「ええっと、じゃあ最後に、っと……え?……………」

 アイに言われて自分の能力を見たタクミは、その箇所をのぞき込んだまま固まり、黙ってしまう。
 あまりに長い間タクミが黙っているので、女の子たちはみんな、怪訝けげんな顔をする。

アカリ「…どうしたの?…」
アイ「どうした?さっさと言えよ。」
タクミ「……いやー…、オレのはいいよ。みんなの聞いたから……」
アイ「いいわけないよ。あんたのも聞かないと。」

タクミ「…いや……それが……」
アユミ「どうしたの?なんかみんなと違うの?」
タクミ「……それは………」
アイ「じれったいなあー」

 タクミの意外な態度にごうやしたアイが、タクミのそばまで行き、本を取り上げる。

タクミ「いや、ダメだって……」

 そんなタクミを無視して、女の子たちは本を覗き込んだ。そしてタクミについて書かれていることを読むと、全員の顔が赤くなる。

ナオ「何これ?…」
アユミ「…ちょっとこれは……」
タクミ「…………」
アカリ「……どうしようかな……」

『 タクミ
 性行為異常型

 異性と性行為をすることで相手の異性に通常よりずっと多くの経験値を付与ふよできる。
 同時に異性との性行為によって、自身の性行為能力がレベルアップしていく。

 加えて性行為能力によっては相手の異性の性行為能力も向上する場合がある。

 性行為能力(初期状態 全てLv.41)
 『精力絶倫ぜつりん
 『無限の体力』 
 『絶技』(手・指 舌 性技) 

 『快感向上』(相手の異性の快感が向上する) 
 『処女痛軽減』(初体験時の痛みを軽減する)
 『一発必中』
 (*オンオフ可 オンの場合、中出しした際に相手の異性は必ず妊娠する。逆にオフの場合は絶対に妊娠しない。)

 『陰茎自在』(相手の異性に合わせて陰茎が大きくなったり、小さくなったりする。)
 『異性性技向上』(回数を重ねることで相手の異性の性技も自然に向上する。) 』

 本を読んで、女の子全員が下を向いてしまう。タクミはまた座り込んで、膝を抱えた。
 すると突然、アイがタクミの襟首えりくびつかんで引っ張り上げる。

アイ「おい!やっぱりお前のせいだな!いったいどんなエロゲーをやって、こんなことになるように言ったんだ!
 えー!わかってんのか?お前が変なことを願ったせいでみんながこんな目にあってるんだぞ!」

 アイはタクミをなぐろうとするが、アカリとソラ、ルカが後ろから掴みかかっておさえる。

タクミ「マジでこんなこと、願ったことなんてないよ!エロゲーだってしたことあるけど、こんなシチュエーションなんてなかったし、オレだってこんなとこ、来たいわけじゃないよ!」
アイ「だったらなんであんただけ、あんなチートみたいな能力なんだよ!お前が変なこと考えたからだろうが!」

タクミ「さすがに知らないよ。なんでこんなことになったかなんて、オレにもわからないよ!」
アイ「ウソばっかついてんじゃねえよ!」

アカリ「アイ!とにかく落ち着きなよ!タクミだって違うって言ってんじゃん。」
アイ「こいつの言うことなんて信用できねえよ!なんだよ、この能力!こいつにばっか都合いいじゃんか。なに考えてんだよ、こいつは!」

 女の子たち全員で、とにかくタクミからアイを引き離して離れたところに座らせる。

アイ「絶対にお前なんかとはしないからな!バカにすんなよ!」

 興奮したアイをアカリやナオがなだめている間、アユミはタクミのそばに行った。タクミは座って膝を抱え、そこに顔をうずめている。

アユミ「…真中君……」
タクミ(小声で)「…オレだってみんなに変なことなんてしないから。オレ、そんなやつじゃないから……」
アユミ「……」

 アユミは何か言いたげだったが、タクミは寝転ねころがってそのまま向こうを向いてしまう。仕方なくアユミも元いた場所に戻った。

ソラ「あ~あ、ちょっとだけ期待したんだけどなー、脱出……」
ルカ「…このままなのかなー…」
ツグミ「…どうしよう……」
モア「…お腹、へったー…」

9人ともが床に寝転がり、誰も話をしなかった…。







*楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、「いいね」や「お気に入り」をいただければ励みになります。
 また、面白かったところや気になったところなどの感想もいただければ幸いです。よろしくお願いします。

*2025年9月17日
 読みやすさ改善のため、文章を大幅に変更しました。
 一部の語句や文章の修正も行っていますが、内容は変更していません。
 今後も文章の改変を随時行っていきます。ゆっくりマイペースで行いますので、どうかご理解下さい。

 2025年10月2日。一部の文字にルビを付しました。
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