死が二人を別こうとも。

すずなり。

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遅刻。

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りら「・・・遅れましたー・・。」



午後の授業が始まってすぐ、りらが教室に入ってきた。




秋臣(りら!?なんで・・・。)




俺の心配を他所に、りらは自分の机まで歩いてくる。

その途中、クラスメイト達に話しかけられながら。




生徒「珍しいね、遅刻とか。」

りら「うんー。ちょっと寝坊しちゃった(笑)」

生徒「もう休んじゃえばよかったのに(笑)」

りら「えへへ。」




笑いながら俺の斜め前に座り、ちらっと俺を見た。

りらはちょっと顔を赤くして・・・言った。




りら「・・・おはよ。」

秋臣「---っ!・・・おはよ。」





俺は・・・どきどきしながら『おはよ』を言った。




秋臣(やばい・・付き合ってからのほうがどきどきするって・・どうしたらいいんだ?)



何事もハジメテな俺。

とりあえず帰りにデートに誘うことにして、俺は目の前のりら・・・もとい、『授業』に集中することにした。





ーーーーーーーーー






キーンコーンカーンコーン・・





りらが来て、たった2時間しかない授業が終わった。

帰る用意をしてるりらに話しかける。




秋臣「・・・帰る?」




そう聞くとりらはものすごい笑顔で答えた。



りら「うんっ。」




幸せそうににこにこ笑う彼女。

そのかわいさに、俺は思わずりらの手を握ってしまった。




りら「!」

秋臣「・・・行こう。」



そう言って教室から出ようとしたとき、まだクラスに残ってた男どもが俺を呼んだ。




生徒「オミ?なんで中谷と手・・・」

生徒「お前・・まさか・・・」

秋臣「・・・。」




どういうか悩んでると、りらが先に口を開いた。



りら「・・・えへへ。」

生徒「---っ!?」

生徒「オミ!?」

秋臣「あー・・・俺の彼女。じゃなっ。」




クラスに残ってたやつにそう言って、俺はりらと一緒に教室を出た。

廊下を歩きながら・・・りらに聞く。





秋臣「・・・言ってよかったのか?付き合ってること。」




そう言うとりらはにこにこ笑いながら言った。



りら「うんっ。」

秋臣「そっか。・・・ところでなんで学校に?」




昨日は『休む』と言ってたりら。

昼から会えて嬉しいけど・・・体調も気になるところだ。




りら「・・その・・オミくんに会いたくて・・?」

秋臣「--っ!!」




『彼女』がこんなかわいい生き物だなんて知らなかった俺は、思わずりらを抱きしめた。





りら「!?」

秋臣「やばい・・好きすぎる・・・。」




腕の中にすっぽりハマるりら。

細っこい身体なのは、制服の上からでもわかった。




りら「おっ・・オミくんっ・・・!」

秋臣「あ・・・ごめん。」









抱きしめた身体を放して、俺たちは歩き始めた。





りら「・・・あ、お兄ちゃんがね『話があるから近いうちにオミくん連れて来い』って。」





昇降口で靴を履き替えてるときにりらが言った。




秋臣「お兄さんが?何の用だろ。」



昨日、『付き合うことになった』ことは言った。

おそらくりらも言っただろうことから、俺が呼ばれたことは間違いない。




りら「わかんないけど・・・このまま行く?それとも寄り道する?」

秋臣「うーん・・・行く。りらも昨日調子悪かったんだし。」

りら「・・・わかった。」



どこかに寄りたかったのか、少し残念そうな顔をしたりら。

俺は握っていた手をきゅっと握り直した。



りら「?」

秋臣「ちょっと遠回りしながら行くか。」

りら「!!・・・うんっ。」





遊歩道を歩きながら・・・ほんの少しだけ遠回りをして病院に向かう。

普通のカップルなら・・・ここでカラオケに寄ったりとか・・・ボーリングとか?スタバとか寄って帰るのだろうけど、俺たちにはそれはできない。

できなくても構わない。

一緒にいるだけで・・・いいから。






りら「あ、オミくんは次、試験どこ?」

秋臣「俺は・・・一年二学期期末。」

りら「私は二年の学年末なんだよねー。今度は簡単に受かる気がしないから・・・準備しないと。」

秋臣「ならまた一緒に勉強だな。」





そういうとりらは嬉しそうに笑った。

ほんとに嬉しそうに。



秋臣(幸せそう・・・。)




もしかしたらお兄さんの言ってたことは外れるかもしれない。

りらの命が高校卒業までもたないとか・・・

こんなに元気なんだから・・・もっと長い時間生きれるかもしれない。

そう思いながら、俺はりらと一緒に病院までの道のりを歩いた。








ーーーーーーーーーー








りら「座ってて?お兄ちゃん呼んでくるから。」

秋臣「うん。」




病院にある、りらの部屋に入った俺はソファーに腰かけた。

お兄さんが来るまでの間、参考書を広げる。




秋臣「来週に前倒しテスト受けて・・・夏休み中に学年末と二年の一学期中間テスト受けて・・・」





予定を立てながら参考書を読む。

特に分からないところはないけど、出題範囲が広すぎるから忘れることが怖い。




秋臣「・・・早くりらに追いつきたい。」




そんなことを考えてると、りらとりらのお兄さんが部屋に入ってきた。



ガラガラガラ・・・




秋臣「こんにちは、オジャマシテマス。」




そう言うとお兄さんはポケットからケータイを取り出した。



葵「俺の連絡先、登録しとけ。」

秋臣「?」

葵「りらになんかあったらすぐに連絡しろ。わかったな?」

秋臣「!!・・・はいっ。」




俺もポケットからケータイを取り出した。

自分の連絡先が読み込めるQRコードを差し出す。




葵「・・・高1の子供になんてりらのこと任せたくないけど・・・お前はなんか大人っぽいというか・・・度胸があるというか・・・りらと似てる気がする。」

秋臣「え?」

葵「りらが決めたことだし?お前も覚悟があって決めたことだと思うから・・・まぁ、仲良くな。」





お互いのQRコードを読み取ると、お兄さんはケータイをポケットにしまった。




葵「ここはケータイオッケーだから。少々騒いでも他の病室には聞こえない。だから・・・まぁ、たくさん笑わせてやってくれ。」

秋臣「・・・わかりました。」

葵「・・・じゃな、オミ。」

秋臣「!!・・・失礼します。」




お兄さんは踵を返してそのまま病室から出て行った。



秋臣「・・・昨日、お兄さんに怒られなかった?俺と付き合うって言って・・。」



そう言うとりらはソファーに座り、俺の参考書を開き始めた。



りら「怒られは・・しなかったよ?ただ『いいのか?ほんとにいいのか?』って聞かれたけど。」

秋臣「まぁ、そうだよな。」




『りらの全て』を聞いて、たぶんお兄さんは俺が諦めると思ってたんだろう。

でも、諦めないどころか付き合うことになった。

『兄』としたら心配で仕方ないのかもしれない。





りら「あ・・・あのね?私、オミくんのことあんまり知らなくて・・・誕生日とか・・中学の頃とか聞かせてもらってもいい?もちろん勉強しながらで!」

秋臣「勉強しながらって(笑)。・・・いいよ、俺も聞きたい。」





いろんな参考書を広げながら、俺たちは自分自身のことを話し始めた。

誕生日や・・血液型、中学の頃の部活とか・・・。





りら「へぇー・・・オミくんって4月生まれなんだ。」

秋臣「そ。りらは夏なんだな。8月っていったら夏休みの真っ最中じゃん。」

りら「そうなの。向こうの学校は二学期制だったんだけど、結局9月から学校始まるし・・始まってからからみんなに『おめでとうございました』って言われてた(笑)」

秋臣「ははっ。」





参考書をぺらぺらめくりながら話をしてると、あっという間に時間が過ぎて、りらのお兄さんがご飯を持って部屋に入ってきた。





葵「りら、メシー。」

秋臣「あ・・・じゃあ俺は帰るわ。また明日な。」

りら「うん。また明日。」




机に広げていた参考書を鞄に入れ、俺はソファーから立ち上がった。

鞄を肩にかけ、部屋を出る。




秋臣「お邪魔しました。」

葵「気を付けてなー。」

りら「ばいばーい。」

秋臣「ばい。・・・失礼します。」
















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