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本当の家族。
おかぁさんのピアノ。
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一木さんに勉強を教えてもらいながら2週間が過ぎた。
私は病院に通い、遅れていた勉強を少しずつしていった。
一木さんが買ってくれた参考書を元に足りない学年から勉強していき、家では直哉お兄ちゃんや恭介お兄ちゃんが教えてくれる。
勉強の合間合間には、おかぁさんが使ってたピアノの部屋を掃除して使えるようにしていった。
不思議なことに・・・埃をかぶってるわけでもなく、ピアノの音は狂ってなかった。
長年使われてなかったハズなのに、その痕跡はない。
「あの、恭介お兄ちゃん?」
大量にある楽譜を虫干しするために、棚から出しながら聞いた。
「どうした?」
「ここって・・13年くらい使ってなかったんですよね?」
聞いた話では私が生まれてすぐにおかぁさんは亡くなった。
そのあとすぐに部屋を塞いだらしいから、私の歳と同じ時間、使ってなかったことになる。
「そうだよ?」
「埃とか・・あまりないのって不思議じゃないですか?」
そう聞くとお兄ちゃんは辺りをぐるっと見回した。
「・・・たしかに。」
「あとね?これ、聞いて欲しいんだけど・・。」
私はピアノのカバーを外し、蓋を開けて音をいくつか鳴らした。
「音が狂ってないんですよ!ピアノは年に一度は調律しないと音が狂うって言われてます!変ですよね!?」
『おかしいことがある』と思っていた私は興奮気味にお兄ちゃんに聞いた。
でもお兄ちゃんはちょっと悲し気に笑いながら言った。
「・・・亜子、悪いけど音の違いはわからないんだよ。」
「?・・・わからない?」
「俺は絶対音感を持ってない。だからどの音が正解か正解じゃないのかがわからないんだ。狂ってるのか狂ってないのかもわからないんだよ。」
「・・・。」
お兄ちゃんの言葉を聞きながら私はピアノの音を鳴らした。
寸分の狂いもない音にどうしても納得がいかない。
「うーん・・。」
「まぁ、狂ってないならいいんじゃないか?ほら、さっさと楽譜持って行きな。」
「はーい。」
私は言われたままに楽譜を持って部屋から出た。
リビングの窓の先にあるお庭にいるお父さんに、楽譜を手渡す。
「お願いしますっ。」
お父さんはお庭でレジャーシートを敷いて、しゃがみ込みながらその上に楽譜を広げてくれていた。
これで虫が湧くのを防げるらしい。
「ありがとう、亜子は楽譜って読めるのかな?」
お父さんは楽譜を受け取り、ばさっと広げながら聞いてきた。
「楽譜を読む・・?」
「あぁ、そうだな・・・うーん・・この楽譜を見て、ピアノで弾けるかな?」
そう言われ、私は楽譜をじっと見つめた。
あまりじっくり見たことがない楽譜は何が書いてあるのかさっぱりわからない。
「弾けないと思います・・?」
「ははっ、なんで疑問形なんだい?」
「うーん・・・なんて書いてあるのかは全然わからないんですけど・・聞けば分かるような気がする・・からです。」
私の言葉に、お父さんはおもむろに立ち上がった。
リビングに戻り、おかぁさんの写真が置いてある棚の扉を開けて何かを探してる。
「あ、あったあった。亜子、ちょっとさっきの楽譜持って来てくれる?」
「?・・・はい。」
言われた通りに私は楽譜を持ってお父さんのところに行った。
お父さんは棚から出したものを何か機械に入れてる。
「これ、リズの・・亜子のお母さんのCDだよ。弾いた曲が入ってる。」
「・・・おかぁさんのですか!?」
「その楽譜の曲をかけるから見ながら聞いてごらん?」
そう言ったあと、すぐにピアノの音が聞こえ始めて来た。
私は楽譜を広げ、その音を紙上で探していく。
「?・・・?・・・」
「うーん・・・わかんないか。」
「はい。・・・あっ。」
残念そうにするお父さんに申し訳なく思った私は、いいことを思い付いた。
お父さんの手を引いてピアノの部屋に向かう。
「まさか・・・」
私はピアノの椅子に座り、両手を鍵盤に乗せた。
そのまま・・・さっき聞いた曲を思い出しながら鍵盤を押していく。
♪~♪♬♪ー・・・
私は病院に通い、遅れていた勉強を少しずつしていった。
一木さんが買ってくれた参考書を元に足りない学年から勉強していき、家では直哉お兄ちゃんや恭介お兄ちゃんが教えてくれる。
勉強の合間合間には、おかぁさんが使ってたピアノの部屋を掃除して使えるようにしていった。
不思議なことに・・・埃をかぶってるわけでもなく、ピアノの音は狂ってなかった。
長年使われてなかったハズなのに、その痕跡はない。
「あの、恭介お兄ちゃん?」
大量にある楽譜を虫干しするために、棚から出しながら聞いた。
「どうした?」
「ここって・・13年くらい使ってなかったんですよね?」
聞いた話では私が生まれてすぐにおかぁさんは亡くなった。
そのあとすぐに部屋を塞いだらしいから、私の歳と同じ時間、使ってなかったことになる。
「そうだよ?」
「埃とか・・あまりないのって不思議じゃないですか?」
そう聞くとお兄ちゃんは辺りをぐるっと見回した。
「・・・たしかに。」
「あとね?これ、聞いて欲しいんだけど・・。」
私はピアノのカバーを外し、蓋を開けて音をいくつか鳴らした。
「音が狂ってないんですよ!ピアノは年に一度は調律しないと音が狂うって言われてます!変ですよね!?」
『おかしいことがある』と思っていた私は興奮気味にお兄ちゃんに聞いた。
でもお兄ちゃんはちょっと悲し気に笑いながら言った。
「・・・亜子、悪いけど音の違いはわからないんだよ。」
「?・・・わからない?」
「俺は絶対音感を持ってない。だからどの音が正解か正解じゃないのかがわからないんだ。狂ってるのか狂ってないのかもわからないんだよ。」
「・・・。」
お兄ちゃんの言葉を聞きながら私はピアノの音を鳴らした。
寸分の狂いもない音にどうしても納得がいかない。
「うーん・・。」
「まぁ、狂ってないならいいんじゃないか?ほら、さっさと楽譜持って行きな。」
「はーい。」
私は言われたままに楽譜を持って部屋から出た。
リビングの窓の先にあるお庭にいるお父さんに、楽譜を手渡す。
「お願いしますっ。」
お父さんはお庭でレジャーシートを敷いて、しゃがみ込みながらその上に楽譜を広げてくれていた。
これで虫が湧くのを防げるらしい。
「ありがとう、亜子は楽譜って読めるのかな?」
お父さんは楽譜を受け取り、ばさっと広げながら聞いてきた。
「楽譜を読む・・?」
「あぁ、そうだな・・・うーん・・この楽譜を見て、ピアノで弾けるかな?」
そう言われ、私は楽譜をじっと見つめた。
あまりじっくり見たことがない楽譜は何が書いてあるのかさっぱりわからない。
「弾けないと思います・・?」
「ははっ、なんで疑問形なんだい?」
「うーん・・・なんて書いてあるのかは全然わからないんですけど・・聞けば分かるような気がする・・からです。」
私の言葉に、お父さんはおもむろに立ち上がった。
リビングに戻り、おかぁさんの写真が置いてある棚の扉を開けて何かを探してる。
「あ、あったあった。亜子、ちょっとさっきの楽譜持って来てくれる?」
「?・・・はい。」
言われた通りに私は楽譜を持ってお父さんのところに行った。
お父さんは棚から出したものを何か機械に入れてる。
「これ、リズの・・亜子のお母さんのCDだよ。弾いた曲が入ってる。」
「・・・おかぁさんのですか!?」
「その楽譜の曲をかけるから見ながら聞いてごらん?」
そう言ったあと、すぐにピアノの音が聞こえ始めて来た。
私は楽譜を広げ、その音を紙上で探していく。
「?・・・?・・・」
「うーん・・・わかんないか。」
「はい。・・・あっ。」
残念そうにするお父さんに申し訳なく思った私は、いいことを思い付いた。
お父さんの手を引いてピアノの部屋に向かう。
「まさか・・・」
私はピアノの椅子に座り、両手を鍵盤に乗せた。
そのまま・・・さっき聞いた曲を思い出しながら鍵盤を押していく。
♪~♪♬♪ー・・・
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