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必然な出会いたち

悩み。

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「家・・は、ちょっと・・・。」


『知らない人に家は教えない』は、お父さんとお兄ちゃんに散々言われてることだ。

春斗さんと会うのは二回目で、話も何回かしたけど・・・家を教えれるほど仲良くはない・・はず。


「ごめんなさい・・。」


助けてもらっておいて自分勝手なことだと思った私は謝った。

でも、私が謝ったと同時に春斗さんはミラー越しに笑顔で言ってくれたのだ。


「いいえ、大丈夫ですよ。どこか都合のいい場所教えてください。そこまでお送りいたしますから。」

「ありがとうございます・・・。」


春斗さんの優しさにほっとしながら、私は家からさほど遠くない本屋さんの場所を伝えた。

場所の説明があまりうまくない私の説明を、上手く汲み取ってくれた春斗さんは、ちゃんとその本屋まで連れて行ってくれ、私はそこで車から下りた。

そして春斗さんを見送り、そのまま帰路についたのだった。



ーーーーー



「はー・・・疲れた・・。」


家に帰った私は自分の部屋のベッドで寝ころんだ。

ただでさえ、学校帰りで疲れてるのに、サキがしつこくついてくるから余計に疲れてしまったのだ。


「また来るのかな・・・。」


腕を頭に乗せながら、サキの姿が脳裏に浮かぶ。

派手めな格好は私とは正反対のようだ。

ううん、私だけじゃなくて、私と仲がいい人みんなと正反対だった。

派手めな格好に、キツイ物言いは・・私にとってあまりいいことに思えなかった。


「一度遊べば・・・もう来ないかも?」


そんなことを考えてると、部屋のドアがノックされる音が聞こえた。


コンコンっ・・・


「?」


視線をドアに向けると、開けっ放しのドアを叩いてる直哉お兄ちゃんの姿が目に入った。


「なに唸ってんだ?」


私はベッドから身体を起こし、近くにあった枕をぎゅっと抱きしめた。


「ちょっと・・・ね。」


俯きながら答えると、直哉お兄ちゃんは私の部屋に入って来た。

そのままベッドにいる私の隣に腰かけ、髪の毛を触り始めた。


「なんかあったんなら聞くけど?」

「・・・。」

「学校か?」

「・・・ちがう。」


声をかけてもらえることは嬉しいけど、サキのことをどう説明したらいいのかわからなかった私は、俯きながら黙り込んでいた。

そんな私を怒ることもなく、直哉お兄ちゃんは髪の毛を触り続けてる。


「お兄ちゃんはさ・・・」

「うん?」

「あまり・・こう・・・何て言うか、好きじゃない友達って・・いる?」

「好きじゃない友達?」

「うん・・。」


どう伝えたらいいのか分からなかった私は、『好きじゃない友達』っていう表現を何とかして捻りだした。

少し違うような気もしたけど、今の私ではこの表現が一番しっくりきそうだ。


「向こうは好意を寄せてくれるけどこっちはそうでもないって感じの友達か?」

「!!・・そんな感じ!」


お兄ちゃんの言葉がしっくりきた私は、首を縦に何度も振った。

お兄ちゃんならそんな友達とどう付き合ってるのか教えてもらいたくて、お兄ちゃんの眼をじっと見つめる。

でもお兄ちゃんは驚くような言葉を言った。


「それ・・そもそも友達なのか?」

「・・・え?」

「まぁ『友達になろう!』って言って友達になるパターンは少ないだろうけど・・そうだなぁ・・俺の場合は向こうから誘われたら何回かに一回は乗るけど、こっちからは誘わないかな。」

「・・・。」


お兄ちゃんも同じような経験があったのかなと思いながらその話を聞いた私は、その方法が一番いいのかもしれないと思った。

こちらの意に反して向こうが寄ってくるのなら、こちらからは誘わなければいい。

そして向こうの好意を無下にしないために、何度かに一度、誘いを受ければいいのだ。


「・・・一度も行きたくなかったら?」


どうしても嫌な時もある。

何回もされる誘いを、受けたくもないときもあるはずだ。


「うーん・・・俺は一回は行くかな。もしかしたらそいつの評価が変わるかもしれないし。」

「評価?」

「評価って言ったら上からみたいな感じするけど・・・『こいつは苦手だ、嫌いだ』って自分が決めつけてるだけかもしれないだろ?もしかしたらその考えが変わるかもしれない。だから一回は行く。」


二つしか違わないお兄ちゃんは、私よりずっと大きな考えを持っていた。

育ってきた環境が違う・・と言ったらそれまでかもしれないけど、この考え方を真似したいと思った。


「・・・わかった。」

「解決したか?」

「うーん・・それはわからないけど、とりあえず大丈夫。」


なんとなく、今日のサキのことを解決できた気になった私はベッドから下りた。

お兄ちゃんが触りたおしてた髪の毛を、手櫛で整える。


「ありがと、お兄ちゃんっ。ちょっとピアノ弾いてくるー!」


そう言って、私は部屋から出て行った。

心のもやもやが少し晴れたからか、気分良くピアノの部屋に向かったのだった。



ーーーー


そんな中、亜子の部屋で直哉はベッドに座ったままだった。

楽しみながら三つ編みや編み込みを亜子の髪の毛で遊んでいたのに、急に亜子が出て行ってしまったのだ。


「えー・・もうちょっと亜子の髪の毛作りたかったのに・・・。」


ぼそっと呟いた直哉の言葉なんて、亜子の耳に届くはずはないのだった。


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