溺愛社長は私をご所望!?彼の持つ二面性はどっちが本物!?

すずなり。

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そして季節は変わり、肌寒い日が続くようになってきた秋。

俺と柚香は『作り手』に会うため、長い道のりをドライブしながら向かっていた。

この日の為に調節した休みは二日。

日帰りで帰れるか、どこかに泊まるかは過ごし方次第だ。


「どれくらいかかるんだっけ?」


緑色のニットに黒のロングカートを履いて落ち着いた雰囲気で仕上げた柚香が聞いてきた。


「多分5時間。途中で昼飯食って、夕方前に着く感じかな?」

「楽しみだなー・・・。あ、連れて行ってくれてありがとね?圭一さん。」

「いや?柚香ってあまり物をねだってくれないから、これくらいどうってことないよ。」


柚香は茉里奈と違って『あれ欲しい』とか『これ買ってくれなきゃやだ』とかは言わない。

まぁ、自分で稼いでるから大抵のものは自分で買えるし、自分がデザイナーだからか服なんて腐るほど持ってる。

それに合わせたジュエリー系は俺が買い与えたいところだけど、ねだってくれないのだ。


(こればっかりは好みがあるからなー・・・。なかなか強制的にはプレゼントができない。)


そんなことを考えてると、柚香は俺の肩に自分の顔を寄せてきた。


「へへ。・・いつも感謝してる。こうやって私に時間を作ってくれたことが一番嬉しい。」

「----っ。そんなかわいいこと言って・・・この面会が終わったら結婚式のプランでも立てるか?」


そう聞くと柚香はきょとんとした顔を俺に見せた。


「え・・・?結婚式って・・・できるの・・・?」


どうも柚香は俺の家の事情を汲み取って、『結婚式はできない』と思っていたようだ。


「まぁ・・身内ばかりになってしまうだろうけど、ホテルだろうが旅館だろうが式場だろうが、柚香が好きなとこ貸し切るからできるよ。」


どこでだって貸し切ってしまえばなんだったできる。

ガラの悪い俺たちだって、迷惑をかけるような人が回りにいなければいいだけの話なのだ。


「!!・・・へへっ。じゃあ・・・ちょっとだけ考えよ?一緒に・・・。」


まだ戸惑ってそうな表情だったけど、柚香は嬉しそうに笑ってくれていた。

柚香が笑ってくれるならなんだってしてやりたいのだ。


「すぐに決算が来るから来年の夏・・くらいかな?それくらいの時期を考えてくれたら助かる。」

「うんっ、わかった!」

「帰ったらすぐ雑誌見れるように、藤沼に連絡しておくから。」


これで家に帰った後、しばらく柚香の遊び道具ができる。

デザイナーの仕事をしてることもあって、きっと柚香は隅々まで雑誌を読むだろう。

俺は昼飯に立ち寄った店で藤沼に連絡を入れ、雑誌を俺の部屋に用意するよう伝えた。

そしてまた車を走らせ、何度か休憩を挟み、昼の3時に目的の場所に到着したのだった。


「着いたーっ!」


電話で担当から指定された『作り手』の駐車場はこの町・・いや、村の入り口にあった『来客用駐車場』。

そこに車を止め、俺たちは村の中を歩き始めた。

事前にもらった地図を見ながら、足を進める。


「わ・・・!圭一さん、見て!すごいコキアの数・・・」

「え?・・・ほんとだな・・・」


来客用の駐車場から歩くと、村全体が見渡せるような小丘の上に俺たちは立っていた。

眼下に広がる村へと続く道は、両端に『コキア』という植物が植えられていて、それが真っ赤になって道を作ってるように見えたのだ。


「だから『秋』って言われたんだねぇ・・・。こんなコキアの数、見たことないー!」


嬉しそうに小走りに進んでいく柚香。

時々しゃがんでスマホで写真を撮ったり、一つ一つのコキアを眺めたりと忙しそうだ。


「こけるなよ?」

「大丈夫ーっ。」


ちょうど山に囲まれるようにして存在してる村の奥に、海が見える。

ここは山のいいところも海のいいところも両方手に入る場所のようだ。


「『作り手』は生まれも育ちもここなのか?都会とはかけ離れた生活をしてそうだな・・・。」


そんなことを思いながら柚香と一緒に進んでいく。

途中、役場兼消防署を通り過ぎ、田んぼの間の道を歩きながら景色を堪能する。

こんな自然、滅多に見れるものではなかったからか、心が洗われるように感じた。


「柚香はこういう自然に囲まれたとこは好き?」


目を輝かせながらきょろきょろしてる柚香に聞くと、柚香はちょっと考えるようなそぶりを見せた。


「好きだけど・・・ちょっと虫は苦手かな?」

「あぁ、確かにうちで出るムカデとか見たらすんげぇ悲鳴が家中に響くもんな。」

「~~~~っ。言わないでぇ・・・」

「古い家だからごめんな。そのうちリフォームいれるから、しばらくでないようにしてもらうよ。」

「助かります・・・。」


そんな会話をしながら進んでいくと、少し森に入るような形になってる小道を見つけた。

地図を見ると、この奥に『作り手』の家があるようだ。


「まぁ・・たぶん猛獣とかは出ないだろうけど・・・念のため側にいろよ?」

「う・・うん・・・」


柚香の手を握り、小道に足を踏み入れる。

右に左にと警戒を怠らないようにして、木でできたトンネルのような道を登るようにして進んでいくと、随分と開けた場所にでたのだ。

そしてその開けた場所には、庭が随分と広そうな洋風の一軒家がある。


「すごい・・絵本の中の世界みたい・・・」

「ほんとだな・・・。」


庭は菜園と花畑に分かれていて、菜園側には白菜やキャベツが生ってる。

花畑側はコスモスが満開に咲いていて、周りをさっき見たコキアが囲んでいた。

立派に手入れされてる庭を口を開けて見てると、家の扉がガチャ・・と、開いたのだ。


「遠いところをようこそ。デザイナーの野崎さん。」


そう言って家の中から出てきたのは、随分と若く見える女性だった。


「はっ・・初めまして・・!三井さん・・・で合ってますでしょうか・・・?」


途端に緊張してきたのか、柚香はピシッと背筋を伸ばしていた。


「ふふ、合ってますよ。どうぞ?お入りください。」

「お・・お邪魔します・・・!」


家に案内され、俺たちは中に入らせてもらった。

家の中は広い作りになっていて、左側に小さな和室、左側にリビングダイニングがあった。

奥にキッチンがあるようで冷蔵庫なんかが見える。


「ちょっと狭いんですけど・・・どこでもお座りください。コーヒー淹れますけど飲めますか?」

「二人とも大丈夫です。」

「わかりました。ちょっとお待ちくだ・・・・」


作り手がそう言ったその時、俺と柚香の間にちょこんと立ってる小さい何かが視界に入った。


「!?」

「へ!?」


驚きながら視線を下に落とすと、そこに小さな女の子が立っていたのだ。


「あ・・!こら真那(まな)!お客さまを驚かすんじゃありません!・・すみません・・。」

「あ・・いや・・・」

「お子さんがいらっしゃったんですか!?」

「えぇ。真那って言います。ほら真那?ご挨拶は?」


お母さんに促されたのか、『真那』と呼ばれた女の子は俺と柚香を交互に見上げていた。


「みちゅいまなですっ・・・さんさいですっ。」

「かっ・・かわいい・・・っ!」


柚香は身を屈め、真那ちゃんと同じ目線になってる。


「初めまして、野崎柚香です。真那ちゃん、ご挨拶できて偉いねぇ。」

「ゆーかちゃん?」

「きゃーっ!めちゃくちゃかわいいっ!」


柚香が真那ちゃんにメロメロになってる一方で、真那ちゃんは今度は俺をじっと見ていた。


「・・・初めまして、園田圭一です。よろしくね。」


そう言うと真那ちゃんは首を少し傾げたのだ。


「けーたん?」


その言葉を聞いたお母さんが、コーヒーを持って来ながら真那ちゃんに向かって言った。


「真那、けーたんじゃないよ?けーたんは『圭吾さん』。そのお兄さんは『圭一さん』。」

「?」


どうやら知り合いに似た名前の人がいたようで、真那ちゃんは混乱してるようだ。


「すみません、コーヒーどうぞ。」

「ありがとうございます。」

「ありがとうございますー。」

「ほら、真那はジュースね。」

「じゅーすっ。」


テーブルに置かれたコーヒーをいただくために俺と柚香は席に座った。

すると向かいに座った『作り手』が自己紹介を始めてくれたのだ。


「改めまして初めまして。三井 那智(なち)と言います。いつも野崎さんのデザインを服にさせていただいてます。」

「こちらこそ初めまして。野崎柚香です。いつも私のデザインを服っていう形にしていただいて感謝してます。早速なんですけど・・・いろいろお聞きしてもいいですか?」

「ふふっ。えぇ、もちろん。」


二人はいろいろお互いに質問しては答えてを繰り返し始めた。

最初こそは聞いていた俺だったけど、だんだん専門的な会話になってきてしまい、何を話してるのかさっぱりわからない。


「紙に書いたデザインを服に起こすとき、気を付けてることってあるんですか?いつも私がこだわりたいところを的確に出してきてくれるので・・・」

「それは何度も書き直しされてる跡があるので、それをじっくり見てから・・・・」

「なるほど・・・!じゃあこういうのは・・・・」

「あ、それはですね・・・・」


満足するまでお互いに話は止まらないだろう。

そう思ってゆっくりしようとコーヒーを口に運んだ時、真那ちゃんが俺の袖をくぃっと引っ張ったのだ。

手には絵本を持ってる。


「けーたん、ごほん・・・」

「読むの?」

「うん!」

「いいよ?」


俺はそっと席から離れ、リビングの床に座った。

真那ちゃんから絵本をもらい、広げると同時に真那ちゃんが俺の膝の上に乗ってきたのだ。


(子供ができたら・・・こんな生活になるのかな。)


そんなことを思いながら絵本を読んでいく。


「えーと?・・・『こびとのくつや』?これって確か夜中に小人が靴を縫うって話・・・」



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