溺愛社長は私をご所望!?彼の持つ二面性はどっちが本物!?

すずなり。

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「柚香、起きてる?」


家に帰った俺は柚香の部屋をノックした。

今の時間は深夜1時。

寝ていてもおかしくない時間だ。


(俺の部屋に姿がなかったし・・・拗ねて部屋で寝た?)


起きてたら柚香を補充しようと思い、ドアノブに手をかける。

そしてゆっくり扉を開けると、ベッドの上で俯せになってる柚香の姿があったのだ。


「・・・そりゃ寝てるか。」


朝早くに起きてこの家にいる者たちの朝飯を作ってくれてる柚香は、夜は早い。

俺が早くに帰ってこれる日はその日の出来事なんかを嬉しそうに話してくれるけど、こうやって深夜に帰ってくるときは寝てしまってることが多いのだ。


「・・・でも、限界まで待っててくれたみたいだな。」


柚香が俯せで寝てるベッドの上に、柚香の仕事のお供『らくがき帳』があった。

描きかけなのかページは開いていて、柚香の手には鉛筆が握られたまま。

明らかに『寝墜ちた』感じだ。


「・・・かわいいやつ。」


起こさないように柚香の手から鉛筆を取り上げようと手を伸ばした時、柚香の前にも画用紙があるのが見えた。

それはらくがき帳よりも何周りも大きい画用紙で、描かれてるのは『服』・・・じゃなさそうだ。


「?・・・何描いてたんだ?」


気になってその画用紙を取り、俺はベッドに腰かけた。


「これ・・・『街』・・・?」


画用紙に描かれていたのは『街』の様子。

一軒家のような家が立ち並び、ところどころにマンションのような建物も見える。

絵から考えて10階建てくらいのマンションで、病院や学校、消防署に警察署、それにスーパーやホームセンター、美容院に家電屋と、いろいろな店まで描かれていたのだ。


「街の設計・・・?いや、設計と呼べるほどのものでもないけど・・・」


一体何を描いていたのかと思いながら隅々まで見てると、ふと俺の目に留まったものがあった。

それはこの『街』らしきものを囲うようにして書いてある一本の黒い『線』だ。


「?・・・植樹系か囲い・・・塀みたいなものか?」


そんなことを考えてると、柚香の体がもそもそと動き始めた。

俺がぶつぶつ独り言を言っていたから起こしてしまったみたいだ。


「んー・・・けいいち・・さん・・・?」

「あぁ、ごめん。起こしちゃって・・・」

「ううん・・・?おかえり・・・。」

「ただいまだけど・・・寝ときな?・・・あ、この絵のこと、明日にでも教えてくれる?街・・みたいな絵のやつ。」


寝ぼけてる柚香に聞くのは申し訳なく、俺は柚香の頭を撫でて寝かせようとした。

柚香はそんな俺の手に甘えるようにして頬を摺り寄せ、目を閉じていく。


「その絵・・・昔思いついたことあって・・・」


目を閉じながら話し始めた柚香。

俺は隣に寝転び、その小さな頭を腕に乗せて抱きしめた。


「昔?」

「うん・・・。施設の近くにあった遊園地が潰れちゃって・・・ふふ、あの遊園地の中に住みたいなって思ったことあるの・・・。」

「遊園地の中に住む?」

「うん・・・。あんなに楽しいところに住めたら・・・きっと毎日が楽しいから・・・」

「じゃあこのグルっと囲ってる線は・・・やっぱり植樹系?」


遊園地の外が見えないように植樹する遊園地は多い。

現実世界から離れた夢の世界として確立させ、客を楽しませるのだ。

だから柚香も同じことを考えたのだと思ったけど、柚香の口からは全然違う答えが飛び出てきたのだ。


「あれは・・・線路・・・」

「線路・・・!?」

「街の中は・・・住人は無料で乗れる電車が走ってるの・・・。そしたら車は要らないし・・エコになるし・・・なにより・・・」

「『何より』?」

「・・・楽しい・・・ふふ。」

「!!」


俺とは違う観点を持っていた柚香。

そのまま眠ってしまったようで、規則正しい寝息が聞こえてきた。


「・・・まさにタイムリーだな。」


ちょうど仕事の取引で廃園遊園地がある。

どう作り変えるかが再開発のキモになるところだけど、集客も見込めそうな柚香の案に構想が一気に固まっていくのがわかった。


「柚香のその『夢』・・・俺が現実にしてやる。」


費用と利益を計算は明日にし、俺は柚香を抱きしめたまま眠りについたのだった。




ーーーーー




「・・・あれ?画用紙がない・・・?」


朝、目を覚ました私、柚香はベッドの上にあったはずの画用紙を探していた。

昨日寝ながら描いていたことは覚えてるのに、どこにもないのだ。


「?・・・どこ?」


部屋で見つけることができず、私はとりあえず朝ご飯を作るために食堂に向かった。

その途中にある圭一さんの部屋を覗くと、仕事をしてる圭一さんの姿がある。


「!!・・・圭一さんっ。」

「柚香・・・。もう起きたのか?おはよう。」

「おはよっ。昨日帰ってきたの?随分遅かったみたいだけど・・・」


眠ってしまうギリギリまで起きていようと頑張っていた私だけど、いつの間にか寝てしまったようだった。


「覚えてないのか?」

「?・・・何を?」


何かあったのかと思って聞くと、圭一さんは机の上に置いてあった紙を取りそれを私に見せてくれた。


「それ・・・・っ。」


その紙は私がさっき探していた画用紙だったのだ。


「柚香が描いたんだろ?ちょっと借りていい?」

「え?・・・それは別に構わないけど・・・」

「ありがと。」


一体何に使うのかと一瞬考えた私だったけど、朝ご飯の支度をするために食堂に向かう。

圭一さんは仕事が忙しいのかすぐに出て行ってしまい、私は家で留守番役になってしまった。


「なんか・・朝ご飯食べたらみんなも出て行っちゃったから茶々と二人になっちゃったねぇ・・・。」


組の仕事も忙しいらしく、一平さんや陽太さんまでいない。

だから出かけることもできず、私は茶々を撫でながら中庭を見ることにした。


「ふふ・・・久しぶりだね、茶々。こうやってゆっくりするの・・・」


なんだかんだ忙しくて、あまり茶々との時間を作れなかったことを思い出し、私は茶々の体に顔を埋めた。

ふわふわな毛は心地よく、このまま眠ってしまいたい気持ちに駆られる。


「茶々は気持ちいいねー・・・。」


身を預けるようにして私に体を寄せて寝転がってる茶々。

よしよしと撫でると、ふと茶々の息が荒いことに気が付いた。

覗き込むようにして茶々を見ると、口を開けてなんだか苦しそうに息をしてる。


「茶々・・・!?どうしたの・・・!?」


そう聞くものの茶々は返事なんてできない。

どこかケガでもしてるのかと思って体を触ってみても、外傷はなさそうだった。


「びょ・・病院・・・!」


そう思うけど今は家に誰もいない。

私はスマホを取り出して圭一さんに電話を掛けた。


「・・・出ない・・・」


仕事が忙しいのか、何度鳴らしても繋がらない。


「なら一平さんか陽太さん・・・!」


その二人に電話をかけるけど、二人もまた仕事が忙しいのか電話に出ることはなかった。


「どうしよう・・・・」


こうしてる間にも茶々の症状は悪化していく。

私が抱えて病院に行こうにも、茶々は大きすぎて抱っこはできない。

できたとしても落としてしまう可能性が高いのだ。


「誰か繋がって・・・・!」


そう思って順番に電話をかけてると、電話が繋がったのだ。


「もしもし?柚香?」

「もしもし!?あの・・・って、え?・・・渉くん・・・?」


電話の向こう側で聞こえた声は渉くんだったのだ。

順番に電話をかけてるうちに間違えてかけてしまったみたいだ。


「あっ・・・ごめ・・・」

「どした?なんかあったのか?なんか慌ててるみたいだけど・・・」

「!!」


私は茶々を見た。

荒い息はそのままで、なんだかぐったりしてるようにも見える。

このまま誰かと電話が繋がらなかったらと考えると・・・背に腹はかえれないと思った。


「わ・・渉くん・・・!お願いがあるの!!」

「?・・柚香の頼みなら何でも聞くけど・・・」


私は飼ってる犬の様子がおかしいことを渉くんに話した。

そしてその犬は大型犬で、私一人じゃ病院に運べそうにないことを。


「今、誰もいなくて・・・みんなに電話してるけど仕事が忙しいみたいで誰も出なくて・・・」

「・・・わかった。連れて行ってやるよ。」

「本当!?」

「あぁ。迎えに行くから玄関先まで犬を連れてこれるか?」

「やる・・!やってみる・・・!」

「オーケー。じゃああとでな。」


私は自分の部屋にある斜め掛けの鞄を取り、そこに財布やスマホ、ハンカチを入れた。

そして大きめのバッグにタオルやブランケットを押し込み、犬用のトイレシートやペットボトルの水なんかを入れて玄関の側に置いた。



「茶々、ちょっとがんばってね?」


部屋から私の毛布を持ってきて茶々のすぐ隣に敷き、その上に茶々を乗せる。

そして毛布を引っ張り、私は玄関まで茶々を連れて行った。


「病院行こうね?すぐ元気になるから・・・」


身を屈めてよしよしと茶々の頭を撫でてるとき、玄関の扉が開く音が聞こえてきた。

視線を向けるとそこに渉くんが立っていたのだ。


「渉くん・・・!」


『これで茶々を病院に連れて行ってあげれる』

そう思った私だったけど、渉くんは家の中の様子を窺うようにして辺りを見回したのだ。


「ほんとに誰もいないんだな・・・。」

「え?・・・そうだけど・・・それより茶々を・・・・」


玄関に置いてあった鞄を持ち、渉くんに茶々をお願いしようと立ち上がった時、渉くんが私の肩に手を置いたのだ。


「?」

「・・・悪いな、柚香。」

「え・・・?」


一体何を言ってるのかと思った瞬間、私の腹部に強烈な痛みが走った。


「うっ・・・!?」


痛みの原因が何なのかと思って視線をお腹に向けると、そこに渉くんの拳があったのだ。

『殴られた』と認識できたと同時に、私の意識が遠のいていってしまう。


「あ・・・・・」


茶々を守らなければならないと頭で思いながらも、私はここで意識を手放したのだった。





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