31 / 91
31
しおりを挟む
そう大きな声で言ったおじさんの言葉に、周りがざわつき始めた。
「え・・これ、悠春のじゃないの・・?」
「騙されたってこと?」
「いや、どっちかっていうと騙されたのは会社・・・」
「いくら払ったのかしら・・・」
非難や同情の声が耳に入ってくる。
それと同時に、俯き加減で背を丸くしていく人の姿が目に入った。
きっとあの人が『ガードセンター366』の会社の人だろう。
「一体どこの会社だぁ?見る目がない会社は!!」
にやにや笑いながら叫ぶおじさんを、涼さんはちらっと見た。
「なんか・・おかしいな。」
「え?」
「今日のこの会食、招待された人しか知らないハズなんだよ。なのにあいつは堂々と入ってきて迷うことなく花を見た。」
確かに、ケタケタと笑うおじさんは妙に堂々としていて、何か確信をもっているようにも見える。
でもそれが何の為なのか想像もつかない。
「ごめん、ハル。俺ちょっとあの警備会社の人のところ行ってくる。フォローしてあげないとさすがにまずい。」
「う・・うん・・・いってらっしゃい・・。」
涼さんを見送りながら、私は会場中を見まわした。
ヒソヒソと話す人たちは、みんな目線を警備会社の人に向けてる。
(涼さんの会社に入ってる会社・・っていうことはこのことは涼さんの会社にも影響でる・・?)
会社の信用というものは大事なもの。
その信用を失えば今後の業績に支障がでるかもしれないのだ。
(大変・・・!)
私は慌てて会場から出た。
辺りを見回しながら急ぎ足で駆けていく。
「どこかに美容院・・!」
キョロキョロしながら小走りに走っていると、私の手をグッと掴んだ人がいた。
「わっ・・!?」
急に止められた反動で身体が後ろに傾く。
(倒れる・・!!)
そう思って目を閉じたとき、私の身体は誰かにぎゅっと抱きしめられた。
「へ・・?」
「何やってんだ?こんなとこで・・・『悠春』?」
目を開けて視線を上げると、そこに見知った顔があった。
「・・・・連!?」
腰まであるストレートの黒髪をさらっと耳に掛け、私を見ながら微笑んでる。
高身長に整った顔立ち、それにその腰まである髪の毛は男の人の中ではかなり特徴的過ぎて、私は一瞬で誰だかわかってしまった。
「おぅ、久しぶりだな。」
「なんでここに・・・」
4年前に私が姿を消してから一度も連絡をしたことがなかった。
華道関係の人とはもう誰とも会わないと決めていたから、私は携帯電話を解約し、誰にも住所を告げずに引っ越した。
だから私の居場所なんて誰も知らないハズだった。
「うん?仕事でこのホテルに来てるんだけど、なんか見たことある着物が走ってるなと思ってさ。」
その言葉に、私は今自分がしようとしてることを思い出した。
「あっ・・!連!頼みがあるんだけど聞いてくれる!?」
できれば連とは今限りで離れたいところだ。
でも背に腹は代えられない。
「?」
「お願い・・!」
何が何だかわからないという表情を浮かべる連に、私は必死に食らいついた。
すると・・連のスーツをきゅっと掴んで詰め寄る私の雰囲気に負けたのか、連が承諾してくれたのだ。
「いいけど・・・。」
「ほんと!?」
その承諾に安堵した私は握っていたスーツから手を離した。
その瞬間、連が私の手をガシッと掴んだ。
「お前の頼みなら聞いてやる。でもその代わり・・・条件がある。」
「え・・これ、悠春のじゃないの・・?」
「騙されたってこと?」
「いや、どっちかっていうと騙されたのは会社・・・」
「いくら払ったのかしら・・・」
非難や同情の声が耳に入ってくる。
それと同時に、俯き加減で背を丸くしていく人の姿が目に入った。
きっとあの人が『ガードセンター366』の会社の人だろう。
「一体どこの会社だぁ?見る目がない会社は!!」
にやにや笑いながら叫ぶおじさんを、涼さんはちらっと見た。
「なんか・・おかしいな。」
「え?」
「今日のこの会食、招待された人しか知らないハズなんだよ。なのにあいつは堂々と入ってきて迷うことなく花を見た。」
確かに、ケタケタと笑うおじさんは妙に堂々としていて、何か確信をもっているようにも見える。
でもそれが何の為なのか想像もつかない。
「ごめん、ハル。俺ちょっとあの警備会社の人のところ行ってくる。フォローしてあげないとさすがにまずい。」
「う・・うん・・・いってらっしゃい・・。」
涼さんを見送りながら、私は会場中を見まわした。
ヒソヒソと話す人たちは、みんな目線を警備会社の人に向けてる。
(涼さんの会社に入ってる会社・・っていうことはこのことは涼さんの会社にも影響でる・・?)
会社の信用というものは大事なもの。
その信用を失えば今後の業績に支障がでるかもしれないのだ。
(大変・・・!)
私は慌てて会場から出た。
辺りを見回しながら急ぎ足で駆けていく。
「どこかに美容院・・!」
キョロキョロしながら小走りに走っていると、私の手をグッと掴んだ人がいた。
「わっ・・!?」
急に止められた反動で身体が後ろに傾く。
(倒れる・・!!)
そう思って目を閉じたとき、私の身体は誰かにぎゅっと抱きしめられた。
「へ・・?」
「何やってんだ?こんなとこで・・・『悠春』?」
目を開けて視線を上げると、そこに見知った顔があった。
「・・・・連!?」
腰まであるストレートの黒髪をさらっと耳に掛け、私を見ながら微笑んでる。
高身長に整った顔立ち、それにその腰まである髪の毛は男の人の中ではかなり特徴的過ぎて、私は一瞬で誰だかわかってしまった。
「おぅ、久しぶりだな。」
「なんでここに・・・」
4年前に私が姿を消してから一度も連絡をしたことがなかった。
華道関係の人とはもう誰とも会わないと決めていたから、私は携帯電話を解約し、誰にも住所を告げずに引っ越した。
だから私の居場所なんて誰も知らないハズだった。
「うん?仕事でこのホテルに来てるんだけど、なんか見たことある着物が走ってるなと思ってさ。」
その言葉に、私は今自分がしようとしてることを思い出した。
「あっ・・!連!頼みがあるんだけど聞いてくれる!?」
できれば連とは今限りで離れたいところだ。
でも背に腹は代えられない。
「?」
「お願い・・!」
何が何だかわからないという表情を浮かべる連に、私は必死に食らいついた。
すると・・連のスーツをきゅっと掴んで詰め寄る私の雰囲気に負けたのか、連が承諾してくれたのだ。
「いいけど・・・。」
「ほんと!?」
その承諾に安堵した私は握っていたスーツから手を離した。
その瞬間、連が私の手をガシッと掴んだ。
「お前の頼みなら聞いてやる。でもその代わり・・・条件がある。」
65
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
そのイケメンエリート軍団の異色男子
ジャスティン・レスターの意外なお話
矢代木の実(23歳)
借金地獄の元カレから身をひそめるため
友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ
今はネットカフェを放浪中
「もしかして、君って、家出少女??」
ある日、ビルの駐車場をうろついてたら
金髪のイケメンの外人さんに
声をかけられました
「寝るとこないないなら、俺ん家に来る?
あ、俺は、ここの27階で働いてる
ジャスティンって言うんだ」
「………あ、でも」
「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は…
女の子には興味はないから」
抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。
そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!?
貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる