溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

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「・・・具体的なことを聞いてもいい?」


涼さんの表情がぐっと変わった。

私の恋人の表情から・・・一気に経営者の顔になったのだ。


「--っ!・・・まだ・・具体的には決まってないんだけど・・・ハーバリウムって知ってる?」

「あぁ、何年か前に流行ったやつ?確か・・液体の中に花がある・・インテリアだっけ?」

「うん。」


ハーバリウムは透明な容器にアーティシャルフラワーやプリザーブドフラワーを入れて専用のオイルにつけたものだ。

そうすることでみずみずしい状態で花たちを鑑賞することができるようになってる。

インテリアとしても使えるし、その見た目のきれいさやかわいさから癒しとしても使われることもあるのだ。

数年前にメディアに取り上げられてからブームとなったけど、それも一時のもの。

今はそれほど人気ではないものなのだ。


「この前作ってたドライフラワーでハーバリウムを作ろうと思ってるの。それは私が制作、受注、発送、宣伝しようと思ってる。・・・『悠春』の名前で。」


母が管理してくれてる華道家の仕事は、ハッキリ言って金額が高い。

私の作品を欲してくれることは嬉しいしありがたいことだけど、一般の人は手が出ない金額なのだ。


「・・・そのコメントにね、私の生けた花を見ると元気になれるってコメントがよく来るの。『手に入らないけど、画像で見れるだけで癒される』ってコメントを見て・・・毎日忙しい人たちが私の生けた花を見て元気になってくれるなら長期間見れて、尚且つ安価なものを作れれば・・・と思って。」


名前も知らない人たちだけど、みんなが幸せになってくれたらと思って思い付いたことだった。

でもどうすれば商品化できて、求めてくれる人に届けることができるのかは、まだ調べてる真っ最中だ。


「なるほど・・・。それ、今度見せてくれる?」

「え?いいけど・・・まだ作ってないからいくつか作ってみるね。」


涼さんは顎に手をあて、真剣な表情を浮かべながら前を向いていた。

でもそれは一瞬で、すぐにいつもの優しい涼さんの顔に戻った。


「じゃ、それはそれで楽しみにするとして・・・今はデートに集中しようか。」


笑顔をこぼしながら言う涼さんに胸がどきっと跳ねた。

さっきまでは経営者の顔。

今は・・・私の事だけを考えてくれてる顔なのだ。


「・・・ふふ。」


繋いでいた手をきゅっと握り、私は涼さんを覗き込んだ。


「私と出会ってくれて・・・ありがとう、涼さん。」


そう言うと、涼さんは身を屈めて私の唇に自分の唇を重ねて来た。

ちゅっと軽い音が耳に聞こえる。


「それは俺のセリフ。」

「ふふ。」


それから私たちはしばらくの間、砂浜をゆっくり歩いた。

時折見つける貝殻を拾い、ポケットにいれていく。

涼さんは石を拾うとそれを海に向かって投げたりしていた。

想像よりも遠くに飛んでいく石を見て、腕力の差に驚いていた。


(男の人ってやっぱり力が違う・・・。)


私を軽々と抱きかかえたことを思い出していた。

風邪で動けなかったときもベッドまで運んでくれたし、会食で倒れた時も抱きかかえて部屋に連れて行ってくれた。

そのあと涼さんに抱かれた時も・・・私の足は宙に浮いたままの時があったのだ。


「~~~~っ!」


思い出してしまった私は、自分の顔が熱くなるのがわかった。

どうにかして隠そうと下を向く。


「ん?どうかした?」


そんな私になぜか気がつくのが涼さんだ。

赤くなってるであろう顔を見られないように、私はそっぽ向いた。


「なっ・・なんでもないよっ・・・。」

「ふーん・・?」


熱をもつ顔が早く冷えるように祈ってると、涼さんが私の耳元に顔を近づけてそっと言った。


「また・・・夜、一緒にいてくれる?」


その言葉に私の顔が増々熱くなっていく。


「~~~~っ!?」

「ははっ。そんなかわいい顔すると・・・家に帰さないよ?」

「へ!?!?」


驚いた私は反らしていた顔を涼さんに向けた。

その瞬間、涼さんが私を抱きしめて来たのだ。


「帰したくないのは本音だけど・・・ま、そんなわけにいかないからね。会えるときは目一杯甘やかさせて。」


そう言われ、私は涼さんの背中に手を回した。

大きくて逞しい身体は私を全部包んでしまえそうだ。


「・・・うん、甘える・・ね?」


付き合い始めて2カ月と少しだけど、涼さんは全力で私を愛してくれているのを身に染みて感じていた。

連に出会った時は守ってくれようとしてくれ、倒れたあとは看病もしてくれた。

優しく優しく抱いてくれ・・・そのあとの身体の心配もしてくれた。

そんな涼さんに素直に甘えるのも、私が返せることの一つだ。


「期待してる。・・・じゃあデートの続きしようか。」

「うんっ。」


涼さんは私の手をきゅっと握り、私たちはまた砂浜を歩き始めた。

私は幸せな気持ちに浸りながら、涼さんに少しくっつくようにして歩く。

いつまでもこんな時間が続けばいいのに・・と思いながら、私はこの時間を噛みしめながら、デートを楽しんだ。




ーーーーー



一方その頃、涼とハルの知らないところでSNSが賑わっていた。

内容は『引退した華道家悠春、再び!』というものだ。

会食の場にいた人たちがスマホで撮った悠春の写真をSNSにアップし、それを見た人達が拡散。

その界隈の人たちの間では悠春を探し出そうとハッシュタグをつけて捜索が開始された。

それを見た人たちがまた拡散し、SNSの間では一時『悠春』という単語がトレンド入りもしてしまっていた。

そのことを知らずに二人の時間を味わってる涼とハル。

この後大変なことになるなんて・・・この時の二人は思ってもいない。





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