お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。

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幼い頃2。

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私が施設に預けられてから数日。

お母さんが迎えに来るのを楽しみに待っていた私は、泣きもせず、毎日笑顔で暮らしていた。

食べ物の好き嫌いはあったものの、いい子でいてたハズだ。



そんなある日、お母さんが私の様子を見に来てくれた。




お母さん「鈴ーっ。」

鈴「あっ!おかあさんっ。」




お絵描きをしてるときにやってきたお母さん。

私は走っていって、お母さんに抱きついた。




鈴「びょーき、なおった!?」

お母さん「・・・まだなの。今から病院にいってたくさん注射してくるね?」



『まだ』と聞いて、ガックリしたけどちゃんと来てくれたことがうれしかった。



鈴「がんばってね!おかあさんっ!」

お母さん「うんっ。鈴の為にがんばってくる!」




またすぐにお母さんは来ると思ってた。

でも、次にお母さんがきたのは・・・半年後だった。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










半年後・・・





朝ご飯を食べていたら施設長のおばちゃんが私に言ってきた。



施設長「鈴ちゃん、今日、お母さん来るって!」

鈴「!!・・・ほんとう!?」

施設長「うん!かわいい服着て待ってようねー。」




施設長が用意してくれたかわいいワンピース。

それを着て、私はお母さんが来るのを待った。




望「あれ?鈴がかわいい格好してる・・・。」




私よりちょっとお兄ちゃんなのぞむくんが私の服を見た。



鈴「のぞむくんっ!おかあさんがくるんだって!」

望「!!・・よかったな!鈴!」

鈴「うんっ!」





昼過ぎ・・・




ピンポーン・・・



お母さん「朝比奈・・・です・・。」

施設長「お待ちしてましたよー。」



私はわくわくしながらお母さんが入ってくるのを待った。

でも・・・入ってきたお母さんはなんか・・・別人のようだった。




お母さん「鈴・・・!」

鈴「おかあさん・・・?」



いつもきれいでかわいかったお母さん。

今、私の目の前にいるお母さんは・・・ガリガリに痩せ細ってる。

なんだか・・・疲れてるように見える。




鈴「びょうき・・・なおったの?」




どうみても治ってるようには見えなかったけど、私を迎えに来てくれたことは確かだと思った。




お母さん「・・・治ってないの。」

鈴「そっか・・・。もうちょっとここでまってたらいい?」

お母さん「うん。・・・鈴の家族が必ず迎えに来てくれるからね。」

鈴「?・・・うん。」




お母さんは施設長のところにいって、長い時間話をしていた。

私はその話が終わるまで、ずっと廊下で待っていた。

全ての話が終わり、お母さんが部屋から出てきたとき、施設長が泣いていた。




施設長「朝比奈さん・・・。」

お母さん「その封筒の中身の通りでお願いしますね。」

施設長「仰せの通りに。」

お母さん「鈴、おいで?」




両手を広げて私を呼んだお母さん。

迷うことなく私は飛び込んだ。




お母さん「ごめんね、鈴。ごめん・・・。」

鈴「なかないで?すず、まってるからね?ずっとまってるから・・・!」

お母さん「ありがとう・・。お母さん、鈴のこと、大好きだからね?」

鈴「すずも、おかあさんだいすきだよ!」






何度も振り返りながら帰っていったお母さんは、もうこの施設に来ることは無かった。

私に姿を見せることは・・・二度となかった。














ーーーーーーーーーーーーーーーーーー










季節は過ぎ、また巡って・・・同じ季節を12回、施設で迎えた。



私が入所した時にいてた先輩たちは順次卒業していった。

今現在、私が一番の年長

15歳になった。

お母さんを待ち続けて12年。

お母さんを待ち続けてるけど、私もいい年だ。

新しく入所してくる小さい子たちの面倒を見てるうちに『お姉さん』的な存在に、自動的になっていく。




施設長「鈴ちゃん、ラベンダーの植え付けしてくれる?小さい子たちと。」

鈴「はーい。」



私は小さい子たちの手を取って、庭に出た。

スコップで植木鉢に植えていく。



男の子「鈴ちゃん、これでいーい?」

鈴「うん。きれいに咲くといいね。」

女の子「・・・上手くできない。」

鈴「手伝うよー。」




学校が無い日は施設のお手伝いをすることが多いけど、毎日毎日お母さんを想わない日はない。



鈴「私、いつまでここで待つのかな。」



そう思いながらラベンダーを植えてると、施設の前に1台の車が止まったのが見えた。



鈴「お客さん・・・かな?」



ラベンダーも植え終わり、建物の中に戻ると、施設長が私を呼びに来た。




施設長「鈴ちゃんっ。」

鈴「・・・なんですか?」

施設長「あなたの家族が迎えに来たのよ!」








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