お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。

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昔話。

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翔平side・・・





お粥を食べ終わった鈴を布団に寝かした。

俺も一緒の布団に入る。



翔平「熱、上がってないな。明日には下がってるだろう。」

鈴「あの・・・お・・お兄ちゃん・・・?」

翔平「うん?」

鈴「私を・・・迎えに来てくれて・・・ありがとう。」

翔平「・・・うん。もっと早くに居場所がわかってたらよかったんだけど・・・。」




俺は鈴に、鈴を見つけるまでの話をすることにした。



翔平「かぁさんが家を出て4年後、病院から亡くなった連絡が来たんだよ。」







ーーーーーーーーーーーーーーーーーー







今から12年前。




俺、翔平は14歳。

恭吾は13歳のとき、学校に父さんが迎えに来た。




お父さん「翔平!帰る用意して!」

翔平「へ?」



授業中の教室に父さんは飛び込んできた。




翔平「え?え?」

お父さん「学校には話してあるから!早く!」




父さんの後ろから恭吾が顔を覗かせた。

恭吾も鞄を持ってる。




翔平「・・・帰ります。」




俺は鞄に教科書を詰めて教室を出た。

早歩きで進む父さんの後ろをついて歩く。



翔平「一体なに?」

恭吾「突然・・・。」



俺と恭吾が不満げに父さんに聞く。



お父さん「かあさんが・・・見つかった。」

翔平「え・・・?」

恭吾「見つかった・・・?」




車に乗り込み、父さんはナビを頼りに車を発進させた。




お父さん「さっき、知らない病院から連絡があって・・・かあさんはもう話せないからそれは覚悟しておきなさい。」

翔平「話せないって・・・」

恭吾「その意味って・・・」




俺と恭吾は瞬時に理解した。



短い時間の間に覚悟を決めて、かあさんと対面した。





医師「5時間ほど前に亡くなられました。」





ベッドで眠ってるかあさんは俺の記憶の中の人とは別人だった。

ずいぶんと痩せてしまってる。





医師「こちら、亡くなったあとに渡してほしいと言われていたものです。」



渡されたものは1台のノート型パソコン。

父さんはその場でパソコンを起動した。



お父さん「これって・・・」



パソコンの画面には12個のファイル。

名称のところは全て同じ日付が書かれていた。

違うのは年代だけ。



翔平「3月3日?来年と・・・再来年と・・・」

恭吾「12年先まであるよ?」

お父さん「一つ、日付が無いのがある。」



父さんはクリックしてファイルを開いた。



お父さん「文章だ。」





『このファイルを開いたってことは、私はもう生きてないんでしょう。

翔平、恭吾。突然出ていってごめんね。あなたたちのことはずっと大好きよ?光一さんも。

病気を発症したあと、姿を消してごめんなさい。

一生懸命治そうとしてくれて、本当に嬉しかった。

決して治療が嫌だった訳じゃないの。理由があったの。

それは来年の3月3日に開くファイルを見てね。

お母さん。』





翔平「・・・来年って。」

恭吾「今、開いたら?」



父さんはファイルを開こうとクリックした。



お父さん「開いた・・・!」




『この日付より早くは見れないわよ?私を誰だと思ってるの?』



翔平「え?」

恭吾「は?」

お父さん「・・・やられたな。かあさんは凄腕のプログラマーだ。このパソコンの中身は、かあさんが作り上げてる。」





父さんはパソコンを閉じた。

静かに眠ってるかあさんの頭をそっと撫でた。




お父さん「鍾子・・・ずっと愛してるよ。」









ーーーーーーーーーーーーーーーーーー







葬儀が終わったあと、父さんはかあさんの病気のことを詳しく教えてくれた。

俺らにも関係あることだからと・・・。




翔平「・・・遺伝?」

お父さん「そう。かあさんの病気は遺伝する可能性が高いんだ。二人とも検査を受けてくれ。」

恭吾「検査って・・・?」

お父さん「血液検査だけでいい。明日、学校帰りにうちの病院に寄りなさい。」




父さんに言われ、翌日、俺と恭吾は検査に寄った。

すぐに結果がでると聞いて、二人で待ち合いで待っていた。





恭吾「なぁ・・・かあさんの病気って・・・治せなかったのかな。」

翔平「どうなんだろうな。」





たぶん恭吾も同じことを考えていたんだろう。

結果がでるまでの1時間、俺らは一言も話さなかった。




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