お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。

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散歩の道中。

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散歩に出かけた私は、空を見たり・・地面を見たりしながらお母さんのパソコンのことを考えていた。




鈴「ファイルは・・・全部開いたし・・。あと何かあるのかなぁ・・・。」




ぶつぶつ言いながら歩いてると、直哉お兄ちゃんが勤めてる消防署が見えてきた。

外で誰かが立ってる。





鈴「・・・お兄ちゃん?」

直哉「・・・鈴?なにしてんだ?こんなとこで。」





外で立ってたのは直哉お兄ちゃんだった。

制服を着てるところを見ると、まだ仕事中のようだ。




鈴「お散歩だけど・・・。お兄ちゃんは?お仕事中じゃないの?」




どことなく暗い感じがする直哉お兄ちゃん。

私は隣に立った。



直哉「さっきな、一人・・・搬送したんだけど・・・。」

鈴「うん。」

直哉「・・・ダメだった。」

鈴「・・・・そっか。」




いつも笑って明るい直哉お兄ちゃんが落ち込んでるところは・・・初めて見た。



直哉「ダメだな。すぐに切り替えなきゃいけないのに。」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





直哉side・・・








鈴「・・・・そんなこと・・ないんじゃない?」




俺の隣にいた鈴が言った。




直哉「え・・?」

鈴「お兄ちゃんは・・一生懸命その人を助けようとした。・・・結果は・・悲しいことになっちゃったけど・・私なら、自分の為に一生懸命してくれたことは嬉しいよ?」

直哉「鈴・・・・。」





救命士として傷病者を搬送する以上、助けたい。

何としても助けたいけど、間に合わないときもある。

いつも・・後を引きながら仕事に戻ってるけど・・・

鈴の言葉は俺の心を少し軽くしてくれた。




直哉「さんきゅな。」

鈴「えへへっ。」




幸せそうに笑う鈴。

こっちまで顔が緩む。




直哉「俺、戻るわ。・・・鈴は?帰るのか?」

鈴「うーん・・・もうちょっと散歩したら帰るー。」

直哉「疲れるなよ?体がしんどくなるぞ。」

鈴「はーい。」




鈴と別れて俺は中に戻った。

歩きながら振り返ると鈴はこれでもかってくらい手を振ってくれてた。



直哉「ははっ。なにやってんだよ。」



振り返った俺に気がついたのか鈴は激しく手を振った。




直哉「・・・仕事、がんばりますかな。」




鈴にエネルギーをもらって、俺は仕事に戻った。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーー






望side・・・





母さんに頼まれた買い物を終わらせ、俺は公園に寄っていた。

ベンチに座り、ケータイを眺めてる。




鈴と・・・夏に会ったあと両親と進路のことを話し合い、結論に至った。

そのことを鈴に話したくて、俺はケータイのメール画面を見ていた。



望(なんて言って鈴を呼び出そう・・・。)




メールの内容によっては会わずに済まされそうだ。

俺は悩みに悩みながらケータイを見つめる。




望(『話がある。』・・・ちがうな。)





言葉を探し求めながら、ふと、視線をケータイから外して前を見ると、鈴の姿をみつけた。

公園の前を歩いてる。

俺は慌てて立ち上がり、鈴の元に駆けていった。





望「・・・鈴っ!」

鈴「え?・・・あ、望くん。何してるの?」

望「買い物の帰りだけど・・・。あ、今、ちょっといいか?」

鈴「?・・・うん。座る?」





二人で公園の中に入り、ベンチに座った。




鈴「で、なぁに?」

望「あー・・・両親と進路のこと、話した。」

鈴「!!・・・どうなったの!?」

望「大学行きながら・・・消防士の試験受けることになった。」




俺の言葉に鈴は喜んでくれた。



鈴「よかったねぇっ!」

望「うん。鈴の言った通りだった。『お前はうちの子なんだ。金の事なんか心配するな。』って父さんに言われたよ。」

鈴「ふふっ。いい両親だね。」

望「おぅ。・・・あ、でさ、お礼・・・ってほどじゃないかもしれないけど、どっか行かないか?冬休みにでも・・・。」

鈴「望くん、受験生でしょ?」

望「息抜きってことで(笑)」




鈴はくすくす笑いながら了承してくれた。




鈴「ふふっ。じゃあちょっとだけね?」

望「おぅ。どこがいい?遊園地とか?」




俺の『遊園地』という言葉を聞いて、鈴はちょっと伏し目がちになった。




望「?」

鈴「私ね、運動系はダメなの。」

望「そうなのか?キライ?」

鈴「好き・・・だけど、ちょっと心臓に病気があって・・・ダメとは言われてないんだけど、疲れると発作が出ちゃうの。」





困ったように笑いながらいう鈴。

俺の胸がきゅーっと締め付けられた。




望「そ・・・っか。じゃあ、歩くくらいなら大丈夫か?」

鈴「・・・無理してくれなくていいよ。気持ちだけで・・十分だから。」



ベンチから立ち上がった鈴。



鈴「進路、決まってよかったねっ。じゃあね?」




去って行こうとする鈴の腕を思わず掴んだ。




がしっ・・・!




鈴「?」

望「無理なんかしてない。俺は鈴と一緒に出掛けたいんだよ・・・!」






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