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第3話
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「ローラおはよう」
「ミカエルお兄様おはようございます」
「ここでの生活は慣れたかい?」
「なかなか快適ですわ」
「それは良かった」
ローラが住み始めてから一週間後の朝。照れたように微笑み合い、ミカエルとローラは挨拶を交わし合った。ミカエルがローラの顔を真正面に見ながら、穏やかな口調で尋ねる。
とても心地よい気分で暮らせているとローラが答えると、ミカエルも満足そうに大きく頷いて顔をほころばせていた。
「でも……はぁーっ」
「どうした?なにか困ってることがあるのか?」
ところがその瞬間、ため息とともにローラが悲しげに表情を曇らせる。ミカエルは心配そうに顔をゆがめ聞き返しました。
「クロエに遠慮して私のやりたいことができないの……」
「そうなのか……可哀想に」
「クロエに話しかけても返事してくれないし……」
「ローラと仲良くするように僕のほうからクロエには言っておくよ」
ローラは部屋を自分好みに模様替えをしたかった。だけどクロエの家なので躊躇して実行できませんでした。それにローラがクロエと仲良くなりたいと思って誘ったところ、冷たく断られると寂しそうに不安や不満をもらす。
ローラの境遇に大いに同情したミカエルは涙ぐんでじっと見つめて言う。ミカエルは自分が家の中を取り仕切って、クロエのことを厳しくしつけなければいけないと胸の中で思う。
「クロエのことは安心してくれ。それとこの家でローラが気後れすることはない。自分の家だと思って自由に暮らしてくれて構わないよ」
「だけどクロエに怒られるわ……」
「クロエなんて怖くない。絶対にローラを守るからね」
ローラに対しての想いは、ミカエルの中でとどまることなく親身になって語り続けた。クロエが正式な主の家なのに自由に振舞ってよいという許可をミカエルはローラに与えた。
どのような立場でミカエルはそのような台詞を言えるのか呆れるところだが、ローラのことになるとどこまで突っ走るか知れたものでない。
「素敵でかっこいいミカエルお兄様は頼りになります」
「クロエがローラをいじめるようなことを言ったら、怒り狂って僕がクロエをお仕置きしてやる」
「ミカエルお兄様ありがとう」
ローラに褒められたミカエルはお調子に乗って、驚くことを口にする。ローラのことをいい加減に扱うようなことをすれば、クロエに罰を下さねばならないと決心した。
それがクロエのためになるだろうと本気で考えていたのだから驚かされる。この家の主人はクロエなのに、罰を与えてやるなどミカエルは危ない頭をしていた。ミカエルは自分がこの家の新しい主人であるかのように思っていたのである。
「ミカエルお兄様おはようございます」
「ここでの生活は慣れたかい?」
「なかなか快適ですわ」
「それは良かった」
ローラが住み始めてから一週間後の朝。照れたように微笑み合い、ミカエルとローラは挨拶を交わし合った。ミカエルがローラの顔を真正面に見ながら、穏やかな口調で尋ねる。
とても心地よい気分で暮らせているとローラが答えると、ミカエルも満足そうに大きく頷いて顔をほころばせていた。
「でも……はぁーっ」
「どうした?なにか困ってることがあるのか?」
ところがその瞬間、ため息とともにローラが悲しげに表情を曇らせる。ミカエルは心配そうに顔をゆがめ聞き返しました。
「クロエに遠慮して私のやりたいことができないの……」
「そうなのか……可哀想に」
「クロエに話しかけても返事してくれないし……」
「ローラと仲良くするように僕のほうからクロエには言っておくよ」
ローラは部屋を自分好みに模様替えをしたかった。だけどクロエの家なので躊躇して実行できませんでした。それにローラがクロエと仲良くなりたいと思って誘ったところ、冷たく断られると寂しそうに不安や不満をもらす。
ローラの境遇に大いに同情したミカエルは涙ぐんでじっと見つめて言う。ミカエルは自分が家の中を取り仕切って、クロエのことを厳しくしつけなければいけないと胸の中で思う。
「クロエのことは安心してくれ。それとこの家でローラが気後れすることはない。自分の家だと思って自由に暮らしてくれて構わないよ」
「だけどクロエに怒られるわ……」
「クロエなんて怖くない。絶対にローラを守るからね」
ローラに対しての想いは、ミカエルの中でとどまることなく親身になって語り続けた。クロエが正式な主の家なのに自由に振舞ってよいという許可をミカエルはローラに与えた。
どのような立場でミカエルはそのような台詞を言えるのか呆れるところだが、ローラのことになるとどこまで突っ走るか知れたものでない。
「素敵でかっこいいミカエルお兄様は頼りになります」
「クロエがローラをいじめるようなことを言ったら、怒り狂って僕がクロエをお仕置きしてやる」
「ミカエルお兄様ありがとう」
ローラに褒められたミカエルはお調子に乗って、驚くことを口にする。ローラのことをいい加減に扱うようなことをすれば、クロエに罰を下さねばならないと決心した。
それがクロエのためになるだろうと本気で考えていたのだから驚かされる。この家の主人はクロエなのに、罰を与えてやるなどミカエルは危ない頭をしていた。ミカエルは自分がこの家の新しい主人であるかのように思っていたのである。
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