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第2話

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「これ以上言っても分からないのか?ローラと一緒に住めないなら離婚だ!」
「は?何でそうなるの?」
「遠慮せず言うけど、クロエとは比べられないほどローラは僕の中でとても大事な存在なんだ」
「本気で言っていますか?」
「もちろんだ」

ローラとは互いに折り合いが悪いことはミカエルも理解しているのに、どうしてローラと一緒に住むと言い出すのだろう?とクロエは不思議に思うのです。

ローラと一緒に暮らしたくないとクロエが反論したら、ミカエルは離婚するとまでいう始末。何度も話し合いをしたが無駄な骨折りに終わってしまった。

クロエは結婚するまでローラと会った時は嫌な思い出もあって、ローラを見ると身体に異変が起き、胸の動悸が激しくなってしまう。

「嘘を言うな!ローラの顔を見ただけでそんなことが起こるなんてあり得ない」
「実際なるのよ!この家で私の居場所がなくなってしまう。どうして分かってくれないの」
「こんなにかわいいローラに癒されないのか?クロエの感覚はおかしい。僕と一緒にローラをかわいがればいいだけじゃないか?ローラのかわいさが理解できないなんて最低だ!」

結局ミカエルに押し切られる形で、ローラが住むことが決まった。でもローラが来てからクロエには心が休まらなくて、母屋から少し離れたところで暮らしていた。だが不便でストレスが溜まっている。

先日ローラに対して不満を漏らしたら、ミカエルに激しい叱責を受けて平手打ちされてしまい、クロエは涙を流して戸惑うばかりだった。

「私はどうしたらいいの……」

ミカエルはすぐに殴るような人ではなかった。だが妹のローラのことになると普通じゃなくなり、話が通じそうにない。離婚した方がいいだろうか?

ローラとは暮らせないとクロエが拒否ってるのに、ミカエルは充分な説得もせずに事後承諾を押し付ける。ローラに出て行ってほしいと頼むと離婚すると開き直られた。

間違いなくミカエルの中では、妻のクロエよりも妹のローラのほうを優先するような常識外れな考えをする所が見受けられる。

「結婚生活を続けていく意味ってあるのかな?」

心の安らぎを得られない家にいるのは辛い。クロエは追い詰められている気分になった。この家は亡き両親が残してくれたクロエの家で大事な財産。ミカエルは入り婿の形で入りこんだ。

貴族の爵位でも立場は明らかで、天と地ほどの違いがある。伯爵家の主人クロエに対して男爵家の次男であるミカエル。

結婚前はクロエに頭が上がらない男だったのに、結婚して性格が変わってしまった。最初から本性を隠してクロエを騙していたのかもしれないと強い確信を抱いたのである。
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