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第9話

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「なんで聖女の力が弱まってるの……?何で何で何で、何でなのよおおおおおぉーっ!!」

ステファニーはつぶやくように言い、急に声を高くする。最近の彼女は自分の部屋に閉じこもっていた。周囲の人には体調をくずしたから少し休息きゅうそくしたいと話していましたが、特に病気はしていなかった。

その原因となる本当の理由は、聖女のパワーが限りなく弱まっているのだ。今は全盛期ぜんせいき時代の1の力しかない事は自分でも何となくわかっている。どうしてこんな事になってしまったのか?先代の聖女から10年に1人の逸材いつざい異彩いさいを放つ《天才聖女》と言われておすみ付きを得ていたほどなのに……。

「――この国を守るために私は絶対にあきらめるわけにはいかないのよ!私にエネルギーを……前はもっと出たのに力を失っている。どうしてたくさん出ないの……?もっとエネルギー出なさあああああい!!出て出て出て、出なさいよおおおおおおおおおおぉぉーっ!!」

ステファニーはじっと目を閉じて全身に大汗を流して念じていた。こうやって日常的に何度も聖なるものへの儀式ぎしきつかさどっている。ところが切に祈っても聖なる力を呼び起こすことが出来ません。彼女の印象では、必要なエネルギーを補給できなくて燃料不足を感じるのです。

もっといっぱい出てほしいのに、前は身体が虹色にじいろの光に包まれてあふれ出ていた強力なパワーが出てこない。広大な地下迷宮めいきゅうに突然放り込まれた気分で、原因不明のスランプ状態に苦しんでいる。とにかく聖女の力が弱まってひどく困っているのが実情であった。

聖女になってからは、かがやかしい栄光の日々に包まれて、薔薇ばら色の人生が約束されていた。挫折ざせつした経験がないステファニーの頭の混乱ぶりは異常なほどで、どこか投げやりな態度を見せるのも仕方がないだろう。

「う……う、うわあああああああああああああんっ!!いやああああああああああああああぁぁぁっ!!」

実際にはセリーヌが国からいなくなった事が、ですがまだ誰もわかっていない。前は超強気な性格で有名だったステファニーが、気が弱くなってすぐ涙を流すようになった。

彼女は怪鳥けちょうのような不気味な悲鳴を部屋中にひびき渡らせ続けた。心の病気というノイローゼ気味になり、しまいには深刻なうつおちいって心気症しんきしょうまでわずらっている。とはいえ、彼女の精神が不安定に崩れていても状況は何も変わりません。


「――ステファニー!開けてくれえええええぇぇ!!フレッドが大変なんだっ!!」

次の瞬間、はげしくドアを叩く音がした。ステファニーはおどろきで心臓しんぞうが高鳴る。その声はアランだった。彼の声からは、トイレを我慢がまんしている時の軽く10倍は超えた切羽詰せっぱつまった絶望ぜつぼう感が伝わってくる。

「……今は無理なの……」
「なんで?」

ほとんどパニック状態だったステファニーは、どう受け答えしてよいのかも迷っていましたが、このままではドアを完全に破壊はかいしてでも入ってきそうないきおいだったので返事をしたのです。

「……私ちょっと風邪かぜをひいてしまって……ごほっ、ごほっ」
「はぁ?風邪なんてどうでもいいだろ!フレッドは魔物まものにやられて半分死にかけてるんだっ!!」
「えっ……!?」

とりあえず仮病けびょうを使ってごまかす方法を思いついて実行したのだが、アランには通用しなかった。むしろこうした態度で彼を本気で怒らせてしまったようだ。フレッドが生死をさまよう重傷を負っていると聞かされて、彼女は衝撃しょうげきを受けて思わず声を出すと思考しこうが停止した。
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