聖女に王子と幼馴染をとられて婚約破棄「犯人は追放！」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で価値の高い女性だった。

第19話

セリーヌがいなくなったから最悪の事態が起こった。竜はそう言いますが、アランにはなんで？という思いで予想外という顔をしていた。その主な理由は、セリーヌとアランは幼馴染おさななじみなので大抵の事はわかっている。だが彼女が竜と深い関わり合いがあるなんて一度も聞いたことがない。

「……あの、ドラゴン様」
「なんだ？」
「セリーヌ様とはどのようなご関係なのですか？」

アランはまた怒られないか自分の心臓しんぞうの鼓動こどうが、ドキドキと音が速く大きくなるのを感じながら声をかけた。竜の様子からセリーヌと竜がすごく密接な関係にあるような気がする。

質問に対して特に声を荒げたりすることもなく、竜はすぐに返事をして聞いてきた。彼は少し安心したような複雑な気分になった。

「我とセリーヌ様との関係か……想い人だ」
「は？」

想い人。竜は真剣そのものの表情になって答えた。アランは意味する言葉がわからなくて、一瞬戸惑とまどって思わず声を発した。

「だからセリーヌ様は我が恋心を注ぐ対象である」

竜はアランが間抜けな声で反応しているのを察さっして、もう一度改めて言う。セリーヌが自分の好きな人だと素直に告白した。

「……なるほど、それからは？」

気を取り直したアランは、竜の話す内容に同調するように相槌あいづちを打ってうなずいた。

「数年前、我が住処すみかにしている場所で話し相手もおらず一人寂しくしていた時であった。その時声が聞こえたのだ。とても澄すんだ美しい声であった。我はまだ幼い彼女を怖がらせないように、人間に化けて接触せっしょくしたのだ」

竜は語り始めた。まだセリーヌが子供の時に出会ったらしい。一人娘が結婚して嫁に行って、また妻にも先立たれ孤独こどくな生活を送っていた。そんな時にセリーヌの声を聞いて胸が弾んで話したくなったそう。

と言っても、この姿のまま会えばセリーヌを怖がらせてしまいます。そう思った竜は人間の姿に変身して彼女とコミュニケーションを取ったと話した。

「それがセリーヌ様との出会いですか？」
「……そうだな。話した時に聞いたがセリーヌ様は家族で旅行に来ていたらしい」
「そうでしたか……奥様と娘さんが……それは悲しいですね……」

アランは繰り返し会話を交わしていると、竜に対する恐怖感は緩ゆるやかに薄れていく。それどころか竜の立場を考えて感情移入して、涙声で呟つぶやいて心情を思いやっていた。