「犯人は追放！」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった

第51話

「それでは私が魔法を使ってもよろしいのですか？」
「当たり前だ。なんならハンデをつけてやってもいい。俺は魔法の使用を禁止しよう」

セリーヌは確認するように言った。アランは顔を真っ赤にして睨み、こめかみに青筋を立てて神経が張り裂けそうな思いで言ってくる。セリーヌが魔法を使ってもいいかと聞けばアランは、もちろんそんなことは当然という感じだ。

アランは続けてハンデを背負って戦うと言って自分は魔法を使わないと宣言した。アランの声からは絶対的な自信や尊大さがうかがえる。アランは国王の身を守る盾である騎士団長という要職に若くして就任した。アランは騎士団に入る前から恵まれた体格と剣の才能があって驚くほどのスピードと剣技を持っている。

ほぼ同年代の若者たちには負け知らずで、学生でありながら精鋭揃いの現役の騎士を相手にしても負けなかった。アランは騎士団長になる頃には〝武神〟の異名を持ち戦いの神とさえ言われていた。そんな自分が竜に力を与えられたとは言え、セリーヌに負けるわけがないと判断していた。

「アランは、元々魔法が苦手なくせによく言えますね？」
「そ、そんなことはない。今は少しは使えるようになったんだ！」

セリーヌは心の中で大きくため息をついてから言う。幼馴染なのでアランのことは昔から知っている。小さい頃からずっと魔法を使うのが不得意で困っていた。毎日厳しい練習に打ち込んだものの一向に効果がなく、アランは希望を失った顔で絶望的な気分になって頭をうなだれるばかりであった。セリーヌは悲しそうにしているアランに同情するような表情を向けて頭を撫でながら励ましの声をかけていた。

結局、魔法の練習は放棄して剣の練習に取り組み、一時は山にこもって修行をして徹底して情熱を燃やしていた。その努力が実を結んでアランは剣の高みに到達することができて、誰よりも強くなることができて騎士団長という重要な地位を確立した。正直なところ、今でも魔法は苦手だが剣技とか体術で充分すぎるほど補えることができる。

「……やっぱり私も魔法を使わないようにして、武器も使わずに素手で戦うことにします」
「武器を持たずに俺と戦うというのか？　その細い腕で？　セリーヌ冗談だろう？」

セリーヌは少し悩んだ顔をしてから言葉を返した。魔法も武器なども使わずに自分の拳だけで戦うという。とんでもない返答にアランは耳を疑うように信じられない表情を浮かべた。

たくましい筋肉がついた自分の腕と比べたら、セリーヌの腕は軽くつついただけで簡単に折れそうなほど細く見えた。その腕で戦えるのか？　殴ってきても逆にセリーヌの腕の方がへし折られてしまいそうで本気で心配したほどだった。