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第50話 

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「セリーヌ本当にいいんだな?怪我しても知らないからな。今なら謝れば許してやるぞ?」
「アラン何を言ってるの?あなたの方が決闘をしようと言い出したのですよ?アランのほうが謝るなら許しますけど?」

二人は少し間をあけて向かい合って立っている。元騎士団長のアランが最終確認をしておきたいという感じで言葉を口にする。アランはセリーヌの体を気遣うようなことを言う。続けて今なら許してやってもいいと挑発的な笑みを浮かべている。

セリーヌは呆れたような声で伝えてきた。そもそも決闘なんて言い出したのはアランほうで、セリーヌが無理に戦うこともない。アランの言うことなど軽く受け流して、転移魔法で瞬間移動して両親の捜索に行けばいい。

そうは言うものの足手まといになると言って、元婚約者のフレッド王子と幼馴染のアランの二人を実力不足だとしたことに、事実だとしても申し訳ない気持ちはあったからだ。

「勘違いするな。これは幼馴染としての最後の慈悲心だ。俺は本当はセリーヌを傷つけたくないんだ。そのくらい分かってくれよ」
「それならご遠慮することなくどうぞ?」
「フレッドの言うようにセリーヌは分からず屋だな。いいだろう……少しお仕置きが必要みたいだな」

アランは少し気が立った顔で、セリーヌが大切な幼馴染だから最後に残るのは思いやりの心だと言う。セリーヌはそうですかという感じで余裕のある声で返した。

アランはやれやれと溜息をつきながらも怒っているのがわかる。頑固者のセリーヌには口で言ってもわからないかと呆れ、ちょっとくらい痛い思いをさせてやるかという様子を見せた。

「あの、これは肉体だけのルールですか?」
「何を言ってるんだ?極限まで鍛え上げられた強靭きょうじんな肉体をもつ俺と、か弱く細い体のセリーヌが肉体だけで勝負になると思っているのか?」

セリーヌは決闘に関する質問をした。ルール確認がしたかったらしい。自分の肉体能力だけですか?と問いかけるとアランは理解に苦しむ顔で言う。自分とセリーヌの体を比べて圧倒的に筋肉が小さく腕や足が細い彼女に、肉体だけで戦うつもりか?とうてい勝ち目があるとは思えないと疑問を投げかけた。

「思っています」
「その動きはなんだ?」
「私は今少し太ってダイエットしてるの。お尻を振ったのはただの体操よ?」

明るい笑顔であまりにも自然にあっけらかんと言ったセリーヌは、細い体をおどけるように揺らす仕草をした。いかにもほっそりと痩やせて見えるセリーヌだが、最近太ってきてダイエットに励んでいるという。

「俺をのもたいがいにしろ!」

お尻を振るセリーヌの優雅な動作にアランの神経は逆なでした。アランの苛立ちは頂点に達して剣を握っている手は怒りでわなわなと震えていた。

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新作「病気で療養生活を送っていたら親友と浮気されて婚約破棄を決意。私を捨てたあの人は――人生のどん底に落とします。」を投稿しました。ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
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