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第52話

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「アラン最初に会った時のこと忘れましたか?」
「あっ!」

セリーヌは呆れ顔でアランを見て言った。するとアランは何か思い出して声をあげた。セリーヌと会った時に、アランは久しぶりに再会した嬉しさから気持ちが堪えきれなくなって自然と抱きつこうとした。

その瞬間アランは弾かれて後方に吹っ飛ばされて倒れた。セリーヌは魔法で自分の体を保護していた。それくらいのことをするのは自然なことだった。セリーヌは崩壊した生まれ育った国へ帰って来る前に、新聞の記事の写真を見るとほとんどの建物が破壊されて元の形を留める建物は少なかった。

それを見て命に関わる危険な場所におもむくような緊張感が高まった結果、いきなり悪意や敵意を持った相手に攻撃を仕掛けられても大丈夫なように事前に備えていた。警戒して自分の防御を固める動きに出るのは当然のことだ。

「アランは私の守りの魔法に簡単に弾かれましたよね?私が勝ってから魔法は卑怯だと言われても困りますし……」
「セリーヌが防御魔法を解いてくれると言うなら俺も剣を捨てて丸腰でやってやろう。互いに武器はの勝負だ」

セリーヌに保護魔法がかけられていてはアランの攻撃などまったく通用しない。戦いに勝つためにセリーヌに剣を振るっても何度も弾かれて飛ばされる。体力を消耗しつくしたアランは文句を言ってくるに違いないと考えた。

アランは肩身の狭い思いをして心苦しい顔で剣を置いて、自分もセリーヌと同じように武器を持たずに素手で戦うと言う。アランは自分の方が圧倒的に有利な立場になってしまい本当に申し訳なく思った。

「本当に良いのですか?」
「ふざけるな!セリーヌが無防備な上に素手で戦うのに俺が剣を持つわけにはいかないだろう?」
「アランは剣を使ってください。一番得意でしょう?」

セリーヌは心配そうな視線を向けて口を開いた。セリーヌの言葉にアランは苛ついたように頭をかき雷のような怒鳴り声をあげた。何も遠慮することはないので、最も自信のある剣を使ってくださいと言います。

「俺は丸腰の相手には使わない。そんなことをすれば剣士としての名折れだ!」

自分より遥かに力の弱い女性に剣で戦うなど礼儀に反するものであり、たとえ勝ったとしても剣客としての名誉に関わることだとアランは再びブチギレたように声を尖らせた。
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