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第56話

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「最高の料理を提供する精霊のレストランへようこそおいでくださいました」

セリーヌが経営する店は大繁盛で毎日たくさんの人が訪れる。料理から会計に注文取りまで大忙しだった。セリーヌがいなくてもアルバートとルーカス兄弟が中心に運営を行ってくれているので安心して任せられる。

弟のルーカスは事故で足を失って兄のアルバートは絶望に落ち込んでいた時に、セリーヌに事情を話して回復魔法で足を元通りに治してもらっている。セリーヌに一生かけても返しきれない恩ができてしまった。

セリーヌは当然の事をしただけと言ったが兄弟は救われるような気分で、今の自分たちが毎日幸せに生存出来ているのはセリーヌのお陰だと心から感謝していた。

「フレッドなんで俺たちがこんな事をしないといけないんだ?」
「アラン仕方ないだろう?これが連れて行くことのなんだから」
「おい新人、無駄口を叩いてないで手を動かせ!」
「お前たちはオーナーに徹底的に厳しく指導するようにと言われているからな?」

店の厨房内にどう見ても似つかわしくない二人の美男がいた。美男と言うならアルバートとルーカス兄弟も同じだが、彼らはどことなく高貴な雰囲気を漂わせていた。セリーヌの元婚約者のフレッドと幼馴染のアランだった。二人は店では一番の下っぱなので、邪魔にならないように厨房内の隅に腰をおろして芋の皮むきをしていた。

アランは不満そうな顔で言葉をもらすとフレッドは止むを得ずという感じで陰気な顔をして言う。その時、荒っぽい言葉をぶつけられて体が震えるほどびっくりする。二人がどうしてこの場所にいるのかというと話は少し前にさかのぼる――

「セリーヌ絶対に迷惑をかけないからお願いだから連れて行ってください!」

アランとセリーヌが戦ってアランは完膚なきまでに負けてショックを受けてしばらく放心していた。アランがショックから立ち直るとセリーヌは両親を捜しに行くので別れを告げて移動魔法を唱えようとしていたところ、一緒に行きたいとアランとフレッドが必死に頼み込んできた。

結局、度重なる二人の説得にセリーヌが折れる形で連れてきた。最初にセリーヌの両親の安否確認を行い、公爵家の全員が無事に領地に帰還を果たしていることに胸をなでおろす。久しぶりに両親の元気そうな顔が見られて良かったという思いでいた。

「セリーヌわしが悪かった、本当にすまなかった」

一緒にいたフレッドとアランからも国の悲惨な現状を聞いて、昔の父なら口が裂けても言えなかった言葉を口にした。自分に向かって頭を下げる父の姿を見てセリーヌは無言のまま立ちつくしていた。あんなに大きかった父の背中が小さく見えた。

久しぶりだから、もっとゆっくりしていったらいいのにと言う母に、長居するつもりはないからと言い残してセリーヌは去っていく。

※※※
新作【聖女で美人の姉と妹に婚約者の王子と幼馴染をとられて婚約破棄「辛い」私だけが恋愛できず仲間外れの毎日】を投稿しました。あなた様のお情けとご援助をお願い申し上げます。今までありがとう
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