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第5話
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クロフォードとフローラが恥ずかしげもなく部屋に戻って来た。
「アメリア待たせてすまない。話が盛り上がってさ」
「え?疲れてお休みになっていたのでは?」
クロフォードはアメリアに詫びる言葉を口にして真面目な顔をして嘘をついた。時間の経つのも忘れておしゃべりに夢中だったと言うが、アメリアは不思議そうな顔をして尋ね返した。
「いや、少し休んでから話してたんだよ。なあフローラ」
「その通りです!クロフォード殿下との話はとても有意義なものになりましたわ」
「そうですか」
アメリアの言葉にクロフォードは動揺して反射的に口から出まかせをいった。クロフォードに話を振られてフローラが助け舟を出すように口を開いた。フローラはもっともらしい顔をして平気で嘘を口にする。
フォローしているつもりなのだろうがアメリアは見ていたので全て知っている。クロフォードは背中を向けていたから気がつかなかったけど、フローラとは目が合って数十秒は凝視しあった。その上アメリアに対し挑発的な態度を取ってきた。お前の婚約者を奪い取ってやるという感じで口の端でニヤリと笑った。
二人は口裏を合わせることで無かった事にしたいのだろう。アメリアは二人の腐った性根を叩き直してやりたいと思いましたが、かすかに唇を震わせながら弱々しい声で反応する。
「アメリア悪い!エリザベスとの話に熱中するあまり遅くなった」
「長らくお待たせいたしました。ハリーと話していると楽しくて時間が経つのを忘れてしまいましたわ」
続けざまにハリーとエリザベスが戻ってきた。部屋に入ってくるなり心苦しい顔で両手を合わせてハリーが謝罪をすると、エリザベスもつられて申し訳ないような態度を見せて二人は椅子に座る。
思いがけなく初恋の話が弾んで気がついたらこんな時間になってしまったと言う。二人は厚かましい嘘をつき真実を語ることはなかった。
「ジェシカと婚約してるのに何を考えてるの?」
「エリザベスと話をしていただけで俺は何もやましいことはしていない!」
アメリアは説教じみた口調で言う。フローラと浮気したクロフォードのことも許せないが、親友のジェシカのことを裏切ってエリザベスと浮気したハリーのことも許せないし見過ごせなかった。
アメリアはエリザベスの部屋の前に行って確認した。犬の遠吠えのように叫ぶハリーの声を聞いているので二人の人間性を疑う。昔からの付き合いの幼馴染なので、ハリーの動作やしゃべり方で嘘をついていることが手に取るようにわかる。馬鹿正直で嘘がつけない性格なのだ。
「そうですわアメリアお姉様勘違いしないでください!」
先ほどのフローラと同じように、エリザベスが擁護するために慌ただしく口出しをしてきた。感情的に口走って容赦のない批判をする。エリザベスに鋭い目で睨まれてアメリアはたじたじとなった。
「エリザベスが怒るのも当然だな。俺とエリザベスに謝れ!」
「ごめんなさい」
「アメリアわかってくれるならいい。でも誤解されたくないからジェシカには絶対に言わないでくれよ?」
怒りに燃え立つハリーに謝れと促されるままに、気の弱いアメリアは涙ぐみ消え入りそうな声で淋しげに言った。何も悪くないにアメリアはハリーとエリザベスに対して謝罪をした。
ハリーは穏やかな微笑を浮かべてアメリアを見つめた。妙な誤解を招くだけだから婚約者のジェシカには秘密にしといたほうがいいと、アメリアにそれとなく注意するように言う。
「アメリア待たせてすまない。話が盛り上がってさ」
「え?疲れてお休みになっていたのでは?」
クロフォードはアメリアに詫びる言葉を口にして真面目な顔をして嘘をついた。時間の経つのも忘れておしゃべりに夢中だったと言うが、アメリアは不思議そうな顔をして尋ね返した。
「いや、少し休んでから話してたんだよ。なあフローラ」
「その通りです!クロフォード殿下との話はとても有意義なものになりましたわ」
「そうですか」
アメリアの言葉にクロフォードは動揺して反射的に口から出まかせをいった。クロフォードに話を振られてフローラが助け舟を出すように口を開いた。フローラはもっともらしい顔をして平気で嘘を口にする。
フォローしているつもりなのだろうがアメリアは見ていたので全て知っている。クロフォードは背中を向けていたから気がつかなかったけど、フローラとは目が合って数十秒は凝視しあった。その上アメリアに対し挑発的な態度を取ってきた。お前の婚約者を奪い取ってやるという感じで口の端でニヤリと笑った。
二人は口裏を合わせることで無かった事にしたいのだろう。アメリアは二人の腐った性根を叩き直してやりたいと思いましたが、かすかに唇を震わせながら弱々しい声で反応する。
「アメリア悪い!エリザベスとの話に熱中するあまり遅くなった」
「長らくお待たせいたしました。ハリーと話していると楽しくて時間が経つのを忘れてしまいましたわ」
続けざまにハリーとエリザベスが戻ってきた。部屋に入ってくるなり心苦しい顔で両手を合わせてハリーが謝罪をすると、エリザベスもつられて申し訳ないような態度を見せて二人は椅子に座る。
思いがけなく初恋の話が弾んで気がついたらこんな時間になってしまったと言う。二人は厚かましい嘘をつき真実を語ることはなかった。
「ジェシカと婚約してるのに何を考えてるの?」
「エリザベスと話をしていただけで俺は何もやましいことはしていない!」
アメリアは説教じみた口調で言う。フローラと浮気したクロフォードのことも許せないが、親友のジェシカのことを裏切ってエリザベスと浮気したハリーのことも許せないし見過ごせなかった。
アメリアはエリザベスの部屋の前に行って確認した。犬の遠吠えのように叫ぶハリーの声を聞いているので二人の人間性を疑う。昔からの付き合いの幼馴染なので、ハリーの動作やしゃべり方で嘘をついていることが手に取るようにわかる。馬鹿正直で嘘がつけない性格なのだ。
「そうですわアメリアお姉様勘違いしないでください!」
先ほどのフローラと同じように、エリザベスが擁護するために慌ただしく口出しをしてきた。感情的に口走って容赦のない批判をする。エリザベスに鋭い目で睨まれてアメリアはたじたじとなった。
「エリザベスが怒るのも当然だな。俺とエリザベスに謝れ!」
「ごめんなさい」
「アメリアわかってくれるならいい。でも誤解されたくないからジェシカには絶対に言わないでくれよ?」
怒りに燃え立つハリーに謝れと促されるままに、気の弱いアメリアは涙ぐみ消え入りそうな声で淋しげに言った。何も悪くないにアメリアはハリーとエリザベスに対して謝罪をした。
ハリーは穏やかな微笑を浮かべてアメリアを見つめた。妙な誤解を招くだけだから婚約者のジェシカには秘密にしといたほうがいいと、アメリアにそれとなく注意するように言う。
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