聖女で美人の姉と妹に婚約者の王子と幼馴染をとられて婚約破棄「辛い」私だけが恋愛できず仲間外れの毎日

第11話

「――アメリア話ってなんだ？これから予定があるから手短かに話してくれ」

数日経った放課後、学園の薄暗い廊下には一組の男女がいた。アメリアはクロフォードに話があると声をかけて少し歩いてこの場所に移動した。クロフォードは不愉快な気分になっていた。これからフローラと深く愛し合う予定なのにアメリアに呼ばれて露骨に迷惑そうな顔をした。

「えっと……」
「早く要件を言え！」

アメリアは勇気を出して話しかけたのに、いざという時になって尻込みをしてしまう。クロフォードは忙しいのに呼び出すなという感じで乱暴な口調になり眉が吊り上がった。

「ごめん……言いたいことがあって……よくないと思うんだよね……私と婚約してるのにフローラお姉様と付き合ったりおかしいよ……最近は冷たくなって真面目で優しいクロフォードらしくないし……」
「僕らしくない……？」

アメリアは心臓が波打ってる。自分を奮い立たせてクロフォードに思いのたけを打ち明けたが、クロフォードは疑問を感じるように無愛想な声で応じた。

「クロフォードはフローラお姉様に騙されてると思うの……」
「僕が催眠にかけられているとでも言いたいのか？」

フローラによって一種の暗示にかけられているのではないかと、アメリアは心配するような目つきで膝がガクガク震えながら言う。クロフォードはアメリアの言う事に理解に苦しむ。フローラに催眠をかけられた記憶など思い浮かばないのだ。

「うん、フローラお姉様は少し意地悪なところがあって……私は前のクロフォードに戻ってほしい」

度重なる浮気によってクロフォードの態度というか性格が昔と全く変わってしまった。フローラに溺れ無上の快楽をおぼえてクロフォードは気がつかない。最初は罪悪感があったがフローラにアメリアの悪口を吹き込まれ、クロフォードはアメリアを嫌うようになったのが真実。

クロフォードは自分の罪悪感を軽減するために、アメリアを貶おとしめるような言い方を口癖のようにする。クロフォードは精神的な障害によって正常な判断力を失った状態といえる。昔の率直で誠実なクロフォードに戻ってほしい。今ではそれがアメリアの唯一の望みでした。

「もううんざりだ！僕はフローラに騙されてないし今の自分が好きだ！」

フローラは男を手玉に取る妖艶な悪女。アメリアにそんな風に言われた気がした。国の救世主の聖女に向かって性格が悪い？なんて礼儀が足りていない罰当たりなことを言い出すんだ。

いくら仲の良い姉妹でも最低限の礼儀は守るべきだという思いでクロフォードは癇癪かんしゃくが破裂して、もういい加減にしてくれと叫ぶように反論した。