聖女で美人の姉と妹に婚約者の王子と幼馴染をとられて婚約破棄「辛い」私だけが恋愛できず仲間外れの毎日

佐藤 美奈

文字の大きさ
15 / 29

第15話

しおりを挟む
そのまま通り過ぎて行くと思っていたが、ふいに立ち止まって四人は何やら立ち話を始めた。アメリアは壁の隅っこにうずくまるような姿勢で小さくなって話を聞いていた。誰だってまさかこんなところに人がいるとは思わないだろう。

「うまくいきましたね」
「フローラとエリザベスのおかげで助かった」
「私はフローラお姉様の指示したとおり動いただけですよ?」
「みんなアメリアの浮気性のせいでクロフォードに捨てられたと信じてるな」

フローラは得意そうな表情を顔にうかべながら話し始めた。クロフォードがほっとしたような微笑を浮かべて満足げな様子で返事をした。

フローラが思いついたアイデアのようで、自分はフローラの言う通りに動いただけだとエリザベスは珍しく謙遜けんそんを感じさせながら言った。続けてハリーが信じられないことを涼しい顔をして言う。

(え!どういうこと?)

アメリアは耳を疑うほど驚いて声を上げそうになったが、我慢するように唇を横に引き結んで耐えた。

「アメリアお姉様のだなんてフローラお姉様の妙案に感心します」
「そうだな、さすがフローラだ!」
「冴えた頭脳を持っているな」
「エリザベス、人聞きの悪いことを言うもんじゃないわよ?あなた達も思いあがった軽んじる言動はよくありません。誰が聞いてるかわからないですからね」

エリザベスは得意そうな身ぶりでフローラに見えすいたお世辞を調子よく言った。クロフォードとハリーも流れるように浮わついた言葉を口にしてフローラを褒めた。しかし軽薄なおだてに乗るフローラではなかった。不満そうな表情で口うるさく説教する。

エリザベスの不用意な発言をきっかけに不慮の災難を被ることになるかもしれないと思うと、秘密を隠すために細心の注意を払う必要がある。フローラは油断なく目を光らせて、口は災いの元と気を引き締めるように言う。

(フローラお姉様が仕組んだものだったのね)

途方もない話と思ったがエリザベスの言葉で疑惑を裏付ける何よりの証拠だと思った。そこからさらにフローラがエリザベスたちの言動をいさめるダメ押しの声で、アメリアは全て真実であることを思い知らされた。

「フローラお姉様、心配しなくても大丈夫ですわ。こんな場所に誰もいるわけないですよ」
「フローラは慎重だからな」
「でもエリザベスの言う通り警戒する必要はないだろう?」
「ふふふ、それもそうですわね」

(私がすぐそばであなた達の話を聞いていますけど?)

アメリアにとってはとんでもない話を聞くことになった。昨日クロフォードはアメリアに婚約破棄を言い渡した。クロフォードはそのことを直ぐにフローラに話した。予想外の事態なのかフローラは厳しい表情を崩さなかった。

報告を聞いて勝手なことをしたクロフォードにとがめるような冷たい態度をとった。棘々とげとげしい目つきで執拗に責めて愚かで軽率な行動をしたと烈火のごとく怒った。

クロフォードのせいで予定や計画が崩れてしまったとフローラにものすごい剣幕で叱りつけられたので、クロフォードは一人で突っ走ってしまい悪かったと平身低頭ひたすら謝るばかりだった。

「昨日突然クロフォードからアメリアに婚約破棄を行ったと聞いた時は驚きました」
「フローラ迷惑かけてすまなかった」

フローラはやれやれという気持ちで苦笑しながら言った。クロフォードは過去の自分に反省して打ちひしがれたような顔になる。自分勝手な行動して何かと手助けしてもらった負い目を感じていて、素直に謝罪をして感謝の微笑を送っていた。

クロフォードが独断でアメリアに婚約破棄を宣言してしまったことで、これから起こるであろう様々な状況に対応するためフローラは頭脳をありったけ回転させて考えなければならなくなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。 ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。 屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。 家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します

しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。 失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。 そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……! 悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。

永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~

畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。

「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?

木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるラルーナは、平凡な令嬢であった。 ただ彼女には一つだけ普通ではない点がある。それは優秀な妹の存在だ。 魔法学園においても入学以来首位を独占している妹は、多くの貴族令息から注目されており、学園内で何度も求婚されていた。 そんな妹が求婚を受け入れたという噂を聞いて、ラルーナは驚いた。 ずっと求婚され続けても断っていた妹を射止めたのか誰なのか、彼女は気になった。そこでラルーナは、自分にも無関係ではないため、その婚約者の元を訪ねてみることにした。 妹の婚約者だと噂される人物と顔を合わせたラルーナは、ひどく不快な気持ちになった。 侯爵家の令息であるその男は、嫌味な人であったからだ。そんな人を婚約者に選ぶなんて信じられない。ラルーナはそう思っていた。 しかし彼女は、すぐに知ることとなった。自分の周りで、不可解なことが起きているということを。

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

甘やかされて育ってきた妹に、王妃なんて務まる訳がないではありませんか。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラフェリアは、実家との折り合いが悪く、王城でメイドとして働いていた。 そんな彼女は優秀な働きが認められて、第一王子と婚約することになった。 しかしその婚約は、すぐに破談となる。 ラフェリアの妹であるメレティアが、王子を懐柔したのだ。 メレティアは次期王妃となることを喜び、ラフェリアの不幸を嘲笑っていた。 ただ、ラフェリアはわかっていた。甘やかされて育ってきたわがまま妹に、王妃という責任ある役目は務まらないということを。 その兆候は、すぐに表れた。以前にも増して横暴な振る舞いをするようになったメレティアは、様々な者達から反感を買っていたのだ。

【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓
恋愛
 十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。  だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。  そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。  しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――

婚約解消したはずなのに、元婚約者が嫉妬心剥き出しで怖いのですが……

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のフローラと侯爵令息のカルロス。二人は恋愛感情から婚約をしたのだったが……。 カルロスは隣国の侯爵令嬢と婚約をするとのことで、フローラに別れて欲しいと告げる。 国益を考えれば確かに頷ける行為だ。フローラはカルロスとの婚約解消を受け入れることにした。 さて、悲しみのフローラは幼馴染のグラン伯爵令息と婚約を考える仲になっていくのだが……。 なぜかカルロスの妨害が入るのだった……えっ、どういうこと? フローラとグランは全く意味が分からず対処する羽目になってしまう。 「お願いだから、邪魔しないでもらえませんか?」

処理中です...