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第15話
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そのまま通り過ぎて行くと思っていたが、ふいに立ち止まって四人は何やら立ち話を始めた。アメリアは壁の隅っこにうずくまるような姿勢で小さくなって話を聞いていた。誰だってまさかこんなところに人がいるとは思わないだろう。
「うまくいきましたね」
「フローラとエリザベスのおかげで助かった」
「私はフローラお姉様の指示したとおり動いただけですよ?」
「みんなアメリアの浮気性のせいでクロフォードに捨てられたと信じてるな」
フローラは得意そうな表情を顔にうかべながら話し始めた。クロフォードがほっとしたような微笑を浮かべて満足げな様子で返事をした。
フローラが思いついたアイデアのようで、自分はフローラの言う通りに動いただけだとエリザベスは珍しく謙遜を感じさせながら言った。続けてハリーが信じられないことを涼しい顔をして言う。
(え!どういうこと?)
アメリアは耳を疑うほど驚いて声を上げそうになったが、我慢するように唇を横に引き結んで耐えた。
「アメリアお姉様の偽の情報を流そうだなんてフローラお姉様の妙案に感心します」
「そうだな、さすがフローラだ!」
「冴えた頭脳を持っているな」
「エリザベス、人聞きの悪いことを言うもんじゃないわよ?あなた達も思いあがった軽んじる言動はよくありません。誰が聞いてるかわからないですからね」
エリザベスは得意そうな身ぶりでフローラに見えすいたお世辞を調子よく言った。クロフォードとハリーも流れるように浮わついた言葉を口にしてフローラを褒めた。しかし軽薄なおだてに乗るフローラではなかった。不満そうな表情で口うるさく説教する。
エリザベスの不用意な発言をきっかけに不慮の災難を被ることになるかもしれないと思うと、秘密を隠すために細心の注意を払う必要がある。フローラは油断なく目を光らせて、口は災いの元と気を引き締めるように言う。
(フローラお姉様が仕組んだものだったのね)
途方もない話と思ったがエリザベスの言葉で疑惑を裏付ける何よりの証拠だと思った。そこからさらにフローラがエリザベスたちの言動を諌めるダメ押しの声で、アメリアは全て真実であることを思い知らされた。
「フローラお姉様、心配しなくても大丈夫ですわ。こんな場所に誰もいるわけないですよ」
「フローラは慎重だからな」
「でもエリザベスの言う通り警戒する必要はないだろう?」
「ふふふ、それもそうですわね」
(私がすぐそばであなた達の話を聞いていますけど?)
アメリアにとってはとんでもない話を聞くことになった。昨日クロフォードはアメリアに婚約破棄を言い渡した。クロフォードはそのことを直ぐにフローラに話した。予想外の事態なのかフローラは厳しい表情を崩さなかった。
報告を聞いて勝手なことをしたクロフォードにとがめるような冷たい態度をとった。棘々しい目つきで執拗に責めて愚かで軽率な行動をしたと烈火のごとく怒った。
クロフォードのせいで予定や計画が崩れてしまったとフローラにものすごい剣幕で叱りつけられたので、クロフォードは一人で突っ走ってしまい悪かったと平身低頭ひたすら謝るばかりだった。
「昨日突然クロフォードからアメリアに婚約破棄を行ったと聞いた時は驚きました」
「フローラ迷惑かけてすまなかった」
フローラはやれやれという気持ちで苦笑しながら言った。クロフォードは過去の自分に反省して打ちひしがれたような顔になる。自分勝手な行動して何かと手助けしてもらった負い目を感じていて、素直に謝罪をして感謝の微笑を送っていた。
クロフォードが独断でアメリアに婚約破棄を宣言してしまったことで、これから起こるであろう様々な状況に対応するためフローラは頭脳をありったけ回転させて考えなければならなくなった。
「うまくいきましたね」
「フローラとエリザベスのおかげで助かった」
「私はフローラお姉様の指示したとおり動いただけですよ?」
「みんなアメリアの浮気性のせいでクロフォードに捨てられたと信じてるな」
フローラは得意そうな表情を顔にうかべながら話し始めた。クロフォードがほっとしたような微笑を浮かべて満足げな様子で返事をした。
フローラが思いついたアイデアのようで、自分はフローラの言う通りに動いただけだとエリザベスは珍しく謙遜を感じさせながら言った。続けてハリーが信じられないことを涼しい顔をして言う。
(え!どういうこと?)
アメリアは耳を疑うほど驚いて声を上げそうになったが、我慢するように唇を横に引き結んで耐えた。
「アメリアお姉様の偽の情報を流そうだなんてフローラお姉様の妙案に感心します」
「そうだな、さすがフローラだ!」
「冴えた頭脳を持っているな」
「エリザベス、人聞きの悪いことを言うもんじゃないわよ?あなた達も思いあがった軽んじる言動はよくありません。誰が聞いてるかわからないですからね」
エリザベスは得意そうな身ぶりでフローラに見えすいたお世辞を調子よく言った。クロフォードとハリーも流れるように浮わついた言葉を口にしてフローラを褒めた。しかし軽薄なおだてに乗るフローラではなかった。不満そうな表情で口うるさく説教する。
エリザベスの不用意な発言をきっかけに不慮の災難を被ることになるかもしれないと思うと、秘密を隠すために細心の注意を払う必要がある。フローラは油断なく目を光らせて、口は災いの元と気を引き締めるように言う。
(フローラお姉様が仕組んだものだったのね)
途方もない話と思ったがエリザベスの言葉で疑惑を裏付ける何よりの証拠だと思った。そこからさらにフローラがエリザベスたちの言動を諌めるダメ押しの声で、アメリアは全て真実であることを思い知らされた。
「フローラお姉様、心配しなくても大丈夫ですわ。こんな場所に誰もいるわけないですよ」
「フローラは慎重だからな」
「でもエリザベスの言う通り警戒する必要はないだろう?」
「ふふふ、それもそうですわね」
(私がすぐそばであなた達の話を聞いていますけど?)
アメリアにとってはとんでもない話を聞くことになった。昨日クロフォードはアメリアに婚約破棄を言い渡した。クロフォードはそのことを直ぐにフローラに話した。予想外の事態なのかフローラは厳しい表情を崩さなかった。
報告を聞いて勝手なことをしたクロフォードにとがめるような冷たい態度をとった。棘々しい目つきで執拗に責めて愚かで軽率な行動をしたと烈火のごとく怒った。
クロフォードのせいで予定や計画が崩れてしまったとフローラにものすごい剣幕で叱りつけられたので、クロフォードは一人で突っ走ってしまい悪かったと平身低頭ひたすら謝るばかりだった。
「昨日突然クロフォードからアメリアに婚約破棄を行ったと聞いた時は驚きました」
「フローラ迷惑かけてすまなかった」
フローラはやれやれという気持ちで苦笑しながら言った。クロフォードは過去の自分に反省して打ちひしがれたような顔になる。自分勝手な行動して何かと手助けしてもらった負い目を感じていて、素直に謝罪をして感謝の微笑を送っていた。
クロフォードが独断でアメリアに婚約破棄を宣言してしまったことで、これから起こるであろう様々な状況に対応するためフローラは頭脳をありったけ回転させて考えなければならなくなった。
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