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第16話
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「それにしてもアメリアに罪を擦り付けるという発想をするとはフローラ容赦ねえな」
「本当に浮気して乱れているのは僕たちの方なのにね。アメリアに悪いことしたかな?」
「フローラお姉様はずる賢い性格で狡猾な頭脳をもっていますわ」
「アメリアに罪を着せるのが私たちにとって一番都合がいいでしょ?」
「それもそうだな、あはははははーっ!!」
(あなた達はひどい事をするものですね……)
いつも自分に自信がない弱気なアメリアですが、クロフォードに婚約破棄されて逆にそれで吹っ切れてしまうかもしれない。そうなったら躊躇わずに言うべきことを告白するだろう。自分たちが禁じられた恋に落ちて何度したか分からないほど熱烈なキスをして浮気を繰り返していることを……。そうなれば破滅的な結果をもたらすことになる。
フローラは勝気な性格で高い自尊心を持ち敬意を払うべき人格者として、誰からも好かれ認められた存在だと常に意識して日常生活を送っている。妹の婚約者を寝取っているなんて暴露されたら、神秘的な尊さが感じられる聖女の清らかさは失われ世間から後ろ指を指され石を投げられる。そんな事あっては絶対にならない。
フローラは真っ青になって唇がわなわな震えて美しい顔に怯えのような影が走る。自分が追い詰められているのがよくわかった時、悪魔的な発想が脳裏にひらめいた。フローラは卑劣な策略を実行してアメリアに無実の罪を負わせることを思いついた。
(私はどうすればいいの?)
アメリアは悔しそうに顔を歪めた。すべてフローラ達によって仕組まれたものだった。しかし具体的に何をどうすればいいのかわからずに混乱した。今ここでアメリアがみんなの前に姿を現し、よくも責任を負わせて悪者に仕立て上げてくれたわねと激怒して食ってかかればどうなるのか。
アメリアが不意に背後から声をかけたら最初は全員が驚くだろう。狼狽を顔に漂わせて慌てふためきながら、この場を取り繕うとすると思う。ところがアメリアが一人だけだと分かると逆襲される。身柄を拘束された後に反論の機会すら与えられずに一方的に判決を言い渡されるかもしれない。
最悪の場合は生命の危険すらある。自分たちの人生が崩壊するほどの重大な秘密をアメリアに知られてしまった。犯人視点から見ればアメリアを生かしておく理由はない。アメリアの気分で白日の下に晒され全ての人間が真実を知ることになるからだ。
これから先アメリアが生きている限り、フローラたちはアメリアに悪事を言いふらされるかもしれない恐怖に怯えて暮らすことになる。とは言え、元からアメリアには飛び出して叱責する勇気はなかった。弱気な性格からして実行するのは難しい。
(いいことを思いついた!)
アメリアは悩み続けていたその時、頭の中で偶然にいいアイデアを思いつくという僥倖を得た。不思議そうな顔をしていたアメリアは心に迷いが消えた。小さく背中を丸めて座り込んでいる姿勢でアメリアはただ黙って静かに微笑んでいた。
一通り話し終えると四人は何事もなかったように立ち去っていく。少し経ってアメリアは警戒しながら、ゆっくりと立ち上がった。その瞬間ふらっと足元がよろめいてしまう。
「本当に浮気して乱れているのは僕たちの方なのにね。アメリアに悪いことしたかな?」
「フローラお姉様はずる賢い性格で狡猾な頭脳をもっていますわ」
「アメリアに罪を着せるのが私たちにとって一番都合がいいでしょ?」
「それもそうだな、あはははははーっ!!」
(あなた達はひどい事をするものですね……)
いつも自分に自信がない弱気なアメリアですが、クロフォードに婚約破棄されて逆にそれで吹っ切れてしまうかもしれない。そうなったら躊躇わずに言うべきことを告白するだろう。自分たちが禁じられた恋に落ちて何度したか分からないほど熱烈なキスをして浮気を繰り返していることを……。そうなれば破滅的な結果をもたらすことになる。
フローラは勝気な性格で高い自尊心を持ち敬意を払うべき人格者として、誰からも好かれ認められた存在だと常に意識して日常生活を送っている。妹の婚約者を寝取っているなんて暴露されたら、神秘的な尊さが感じられる聖女の清らかさは失われ世間から後ろ指を指され石を投げられる。そんな事あっては絶対にならない。
フローラは真っ青になって唇がわなわな震えて美しい顔に怯えのような影が走る。自分が追い詰められているのがよくわかった時、悪魔的な発想が脳裏にひらめいた。フローラは卑劣な策略を実行してアメリアに無実の罪を負わせることを思いついた。
(私はどうすればいいの?)
アメリアは悔しそうに顔を歪めた。すべてフローラ達によって仕組まれたものだった。しかし具体的に何をどうすればいいのかわからずに混乱した。今ここでアメリアがみんなの前に姿を現し、よくも責任を負わせて悪者に仕立て上げてくれたわねと激怒して食ってかかればどうなるのか。
アメリアが不意に背後から声をかけたら最初は全員が驚くだろう。狼狽を顔に漂わせて慌てふためきながら、この場を取り繕うとすると思う。ところがアメリアが一人だけだと分かると逆襲される。身柄を拘束された後に反論の機会すら与えられずに一方的に判決を言い渡されるかもしれない。
最悪の場合は生命の危険すらある。自分たちの人生が崩壊するほどの重大な秘密をアメリアに知られてしまった。犯人視点から見ればアメリアを生かしておく理由はない。アメリアの気分で白日の下に晒され全ての人間が真実を知ることになるからだ。
これから先アメリアが生きている限り、フローラたちはアメリアに悪事を言いふらされるかもしれない恐怖に怯えて暮らすことになる。とは言え、元からアメリアには飛び出して叱責する勇気はなかった。弱気な性格からして実行するのは難しい。
(いいことを思いついた!)
アメリアは悩み続けていたその時、頭の中で偶然にいいアイデアを思いつくという僥倖を得た。不思議そうな顔をしていたアメリアは心に迷いが消えた。小さく背中を丸めて座り込んでいる姿勢でアメリアはただ黙って静かに微笑んでいた。
一通り話し終えると四人は何事もなかったように立ち去っていく。少し経ってアメリアは警戒しながら、ゆっくりと立ち上がった。その瞬間ふらっと足元がよろめいてしまう。
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