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第7話
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クロエが思いを打ち明け、婚約辞退を申し出るとハリーはかなり慌てふためいていた。その態度で別れたくないらしい事は伝わりました。
クロエは険しい顔つきでハリーを睨むように無言で見つめている。これまでは喧嘩になってもいつもクロエのほうが、波風を立てないように折れてハリーの意見を通してあげていた。
でも今は身勝手なハリーを許せなかったので、婚約が取り消しになっていいという気分で強気に出た。マリアの事について説明しないのに、こちらばかり非難されて責められてクロエの心は許容できなかった。
「別れるなんて言うな!」
「この前の事は謝ってるのにハリーが私の揚げ足を取るようなことばかり言って、冷たい態度だからですよ?どうして変わってしまったの?」
別れようと告げたら、ハリーは態度を軟化させてきているようにさえ思えるような感じに変わる。暴言を発して言い返していたのに、比較的柔らかい口調になった。
この日は婚約を解消するという話は無くなりましたが、マリアのことも話してくれず結局うやむやになった。でも話し合いはできた。それにハリーも久しぶりに笑顔を見せてくれたので、二人の仲はいい方向に前進したとこの時は思っていた。だが、僅か数日後に不審な行動をするハリーに気がつくのです。
「――ふぅ、やっとゆっくりできる……あっ」
クロエは午前中に片付けなければならない仕事を済ませて、午後からはお茶を飲みながら友人を呼んで雑談しようと考えていた。その時、急に思い出したように声を出す。
忘れていた事に気づいた。出かける支度をしたクロエは馬車に乗って目的の場所に向かった。馬車置場に止まるとクロエは降りて足早に歩き出した。当然ながら付き人兼護衛役を引き連れて、クロエは美しい外観を備えた立派な建物に入って行き、とある一室に到着しました。
「え……?」
クロエは部屋に入ると混乱した心の状態になる。この場所にはハリーがいるはずなのにいないのです。実はハリーが決まって職務を行っている部屋だった。最近は喧嘩をしていたので、わざわざ顔を合わせに来ませんでしたが、以前はしょっちゅう顔を出していた。
クロエは久しぶりに突然行ってサプライズ的に喜ばせたかったのもありますし、仲直りしたい気持ちがあった。でももっと驚いたのは本来ならハリーがいる席に、弟のノアがいたことだった。ノアは真面目な好青年という感じで、何人かの有能そうな秘書と事務仕事をしている。
「ノア様がどうして……?」
クロエは不思議そうな表情ながらもノアに声をかけた。
「クロエ?なんでここに?」
名前を呼ばれてふと顔を上げると、兄であるハリーの婚約者のクロエがいた。ノアのほうもどうしてクロエがこの場にいるのか、よく分からないという感じで首を傾げ、お互いに疑問を持った眼差しを交わした。
クロエは険しい顔つきでハリーを睨むように無言で見つめている。これまでは喧嘩になってもいつもクロエのほうが、波風を立てないように折れてハリーの意見を通してあげていた。
でも今は身勝手なハリーを許せなかったので、婚約が取り消しになっていいという気分で強気に出た。マリアの事について説明しないのに、こちらばかり非難されて責められてクロエの心は許容できなかった。
「別れるなんて言うな!」
「この前の事は謝ってるのにハリーが私の揚げ足を取るようなことばかり言って、冷たい態度だからですよ?どうして変わってしまったの?」
別れようと告げたら、ハリーは態度を軟化させてきているようにさえ思えるような感じに変わる。暴言を発して言い返していたのに、比較的柔らかい口調になった。
この日は婚約を解消するという話は無くなりましたが、マリアのことも話してくれず結局うやむやになった。でも話し合いはできた。それにハリーも久しぶりに笑顔を見せてくれたので、二人の仲はいい方向に前進したとこの時は思っていた。だが、僅か数日後に不審な行動をするハリーに気がつくのです。
「――ふぅ、やっとゆっくりできる……あっ」
クロエは午前中に片付けなければならない仕事を済ませて、午後からはお茶を飲みながら友人を呼んで雑談しようと考えていた。その時、急に思い出したように声を出す。
忘れていた事に気づいた。出かける支度をしたクロエは馬車に乗って目的の場所に向かった。馬車置場に止まるとクロエは降りて足早に歩き出した。当然ながら付き人兼護衛役を引き連れて、クロエは美しい外観を備えた立派な建物に入って行き、とある一室に到着しました。
「え……?」
クロエは部屋に入ると混乱した心の状態になる。この場所にはハリーがいるはずなのにいないのです。実はハリーが決まって職務を行っている部屋だった。最近は喧嘩をしていたので、わざわざ顔を合わせに来ませんでしたが、以前はしょっちゅう顔を出していた。
クロエは久しぶりに突然行ってサプライズ的に喜ばせたかったのもありますし、仲直りしたい気持ちがあった。でももっと驚いたのは本来ならハリーがいる席に、弟のノアがいたことだった。ノアは真面目な好青年という感じで、何人かの有能そうな秘書と事務仕事をしている。
「ノア様がどうして……?」
クロエは不思議そうな表情ながらもノアに声をかけた。
「クロエ?なんでここに?」
名前を呼ばれてふと顔を上げると、兄であるハリーの婚約者のクロエがいた。ノアのほうもどうしてクロエがこの場にいるのか、よく分からないという感じで首を傾げ、お互いに疑問を持った眼差しを交わした。
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