両親が亡くなり悲しい思いを癒してくれた幼馴染の王子に溺愛され婚約して幸せでしたが彼には人に言えない秘密があった。

ぱんだ

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第8話

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「――ハリーに頼まれた?」

ノアの話では少し前からハリーにお願いされて、代わりにここでハリーが行うべき事務仕事をしてると言うのだ。そんな事はハリーから一言も聞いてないクロエにとっては寝耳に水の話だった。

「あっ、そう言えば……」

その瞬間クロエは、はっと思い出した。ハリーから今はさらに多くの仕事をこなす必要があってとても忙しいから、ここには、仕事が落ち着くまで来ないでほしいと事前に念押しされた。それなのに当のご本人は弟のノアに仕事を押し付けて何をしているのか?

ノアは争いごとを好まない温和な性格で兄のハリーと比べると頭もかなり良い。ハリーがあまりに無知過ぎて楽観的な頭をしていると言うのもありますが……。学生の頃からノアは真面目に勉強していた印象を受けた。

今思い出してみるとハリーは昔から面倒くさいことは、何でもノアに任せていたような気がする。学生の頃にレポートの宿題を出された時もノアは献身的に奉仕してハリーを手伝っていた。今回の事もむろん喜んで協力したと話す。

「留守番がてら事務仕事をしていたって事?」
「そうだよ」

クロエは現在の状況を改めて確認するように尋ねた。自他ともに認めるお人よしのノアは、ハリーから大事な用事あるので、しばらくの間本来なら自分がやるべき職務をノアに任せていたらしい。素直に言うことを聞くなんて、実に理解あるよく出来た弟だろうかと思う。

そのへんを詳しく説明してほしいと言うクロエの質問にも、ノアは嫌な顔をすることもなく答えてくれる。話を聞いた後はクロエは全身怒りのかたまりになっていた。その顔を見てノアは困った顔になりながら愛想よくふるまうし何だか申し訳なく思ったほどだ。

「でも婚約者のクロエにまったく話してないのはひどいね。兄さんは何を考えているのかな?」

その通りです。彼は完全なを作って何をやっているのか?やはりマリアと会っているのだろうと頭をよぎったがクロエは口には出さなかった。

ノアは疑問を感じて口を開いた。ノアはこの前クロエが、兄と相談するために密会の現場に踏み込んできた時のことが記憶に残っている。その時は、クロエは最初は兄に噛みつくような口ぶりで何かに怒って叫んでいたが、自分が姿を見せると借りてきた猫みたいに静かに大人しくなった。

兄に話を聞いたら、どうやらクロエは兄の浮気を疑っていたそう。浮気相手と人目を忍んで会っていると考えていたから、普段は礼儀正しいクロエがあんなに血相を変えて部屋へと飛び込んで来たのだと納得した。逆にハリーは僕が浮気何てするわけないのに何を考えているんだ?と呆れた声をあげてクロエを睨んでいた。
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