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第6話

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「はぁーっ」

クロエは困った顔をして小さくため息をついた。あの出来事から一週間後、二人は顔を合わせれば凄まじい調子で悪口を言い合い、仲直りしたい気持ちは互いにあっても喧嘩になった。幸せな日々を送っていたが生活は一変して最悪の状態になっていた。

「それはクロエの本当の気持ちなのか?」
「そうよ。だから謝ってるでしょ?」
「いや、まだ僕とマリアのことを疑っているんだろう?取りつくろった謝罪の言葉はいらない!」

クロエはとても悔しい思いで部屋に踏み込んだ時のことを謝罪しましたが、ハリーは本心からそう思っていないんだろう?と言い放ち許してくれません。確かにその通りで本音はマリアという人との浮気を疑っている。

(だったらハリーがマリアさんの事をちゃんと説明すればいいだけじゃないの?最初に不信感を抱かせるような事をしたのはあなたのほうでしょう?どうして謝っている私が責められるのよ)

いずれにしても根本的な原因はハリーのほうだと確定している。それなのに一方的にクロエを悪者扱いしてくる。それでは何の問題解決にはならないのに……。こちらは譲歩の姿勢を示して謝ったのに、どうしてそのような態度なのか?彼の頬を平手で思いっきり引っぱたきたくなる。

今日はハリーと会うのだが気が重くなってくる。でもそろそろ喧嘩みたいな口論はやめてまともに話し合いたい。そうしなければ婚約は事実上白紙化となってしまう。ハリーがマリアという人の事を好きなら別れも仕方ないと言う思いです。クロエは頭の中を埋め尽くすもやもやした不安感に煩わしい感情から脱したかった。

「――いい加減に機嫌を直したら?子供っぽいよ?」

会ったらやはりと言うべきか長い沈黙に耐えられなくなってクロエが話しかけた。

「クロエが僕にこんな態度を取らせるような事をしたのに子供っぽいってなんだよ」

まるで小さな子供のような我儘者だとクロエが言うと、王子として生まれて両親に甘やかされて育てられたハリーは全責任はクロエにあると声を荒げていった。

この一週間はこんな感じでハリーからは歩み寄りは見られなくて、結局押し問答になる。もう今の不安定な状態に終止符を打ちたいと、今日クロエは一大決心をしてこの場にやってきました。

「私は何度も謝ったじゃないの……いつまでもいがみ合った状態は嫌なの。ハリーがいつまでもそんな感じなら別れる?」
「いや、それはちょっと……」

こんな嫌悪の気持ちを滲ませてくるハリーと、これ以上は一緒にいられないと思ったクロエはを申し出た。するとハリーは不安な目つきに変わり、明らかに動揺している様子になった。
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