妹に幼馴染の彼をとられて父に家を追放された「この家の真の当主は私です!」

佐藤 美奈

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9話 父の裏の顔

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アリシアたちの調査が進むにつれて、父の不正行為は想像を遥かに超える規模であることが明らかになった。クロエが密かに持ち出した帳簿には、目を疑うような数字が並んでいた。公爵家の財産が、父の個人的な贅沢や、愛人への贈り物などに湯水のように使われていたのだ。

「こんなにも……父が、公爵家の財産を私物化していたなんて……」

アリシアは、帳簿の数字を一つ一つ確認するたびに愕然とした。父は、表向きは厳格な公爵として振る舞いながら、裏では莫大な金を不正に得ていたのだ。

ジョージの調査によって、父が複数の商人たちと不正な取引を行っていたことも判明した。相場よりも高い価格で物品を購入させたり、逆に安価で公爵家の資産を売り払ったり。その差額は全て父の懐に入っていた。

「信じられない……父は、公爵家の名を利用して、私腹を肥やしていた」

アリシアの口から漏れたのは、失望と悲しみの混じった呟きだった。父は、彼女にとって恐ろしい存在ではあったが、それでも公爵家の名誉を重んじる人物だと思っていた。しかし、その認識は完全に打ち砕かれた。

さらに、アリシアを深く傷つけたのは、継母とローラも父の不正行為を知りながら、共犯として甘い汁を吸っていた事実だった。彼女たちは、父から贅沢な暮らしを与えられ何不自由なく暮らしていた。アリシアを粗末な部屋に追いやり冷遇していた裏で、自分たちは不正に得た金で豪遊していたのだ。

「義母様も、ローラも…全て知っていたのね」

アリシアは、二人の偽りの優しさを思い出し怒りと憎しみがこみ上げてきた。特にローラは、オリバーとの婚約を破談にさせただけでなく、アリシアを陥れるために様々な策略をろうしていた。その裏には、父の不正によって得られた金があったのだ。

オリバーもアリシアから、父と継母とローラの不正行為について知らされると言葉を失った。

「まさか、そこまで……私が信じていた公爵家は、一体何だったのでしょうか……」

オリバーは、かつて公爵家の一員となることを喜んでいた自分を恥じた。そしてアリシアが、どれほどの苦しみを抱えて生きてきたのか改めて思い知らされた。

アリシアは、父の裏の顔を知り深い悲しみに襲われた。自分を愛してくれなかった父。それは、彼女にとって長年の心の傷だった。しかし、父が単に冷たいだけでなく公爵家の財産を不正に搾取し、家族を欺いていたという事実は彼女の心をさらに深くえぐった。

「なぜ…なぜ、父はこんなことを……」

アリシアの問いかけに、答える者は誰もいなかった。彼女は、父に対する尊敬の念を完全に失い残されたのは失望と憎しみだけだった。しかし、その憎しみは彼女を突き動かす力にもなった。父と継母、ローラへの復讐。それは、単に自分の地位を取り戻すためではなく、公爵家と亡き母の名誉を守るためでもあった。

アリシアは、ジョージとオリバーに向かって決意を新たにした表情で言った。

「証拠は揃いました。これ以上、父たちの悪行を見過ごすわけにはいきません。必ず、彼らに償わせます」

ジョージとオリバーはアリシアの強い決意に頷いた。
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