婚約したのに好きな人ができたと告白された「君の妹で僕の子を妊娠してる」彼に衝撃の罰が下される。

佐藤 美奈

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第9話

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「危なかった……もう少し気づくのに遅れていたらアリスに見つかっていた」

テリーはどう対処すべきかとっさに判断して、アリスから見えない位置に移動した。安心しきっていたら店員に眉をひそめて疑いの目で見られる。

店員から見たら何かをしたと勘違いされても仕方がない。明らかに挙動不審な人物だと思われただろう。だがテリーにはそんな余裕はなかった。とにかくアリスに見つからないように一目散に体が動いた。

「アリスとあの男はどういう関係なんだ?」

気持ちが落ち着いてきたら、不意にテリーは二人のことが気になり始めた。アリスは一緒にいる男と何を話しているのか?

宝石店なのであまり死角はないが、店の中には数名の客がいるし、テリーは背後からゆっくりと歩いて会話が聞こえる距離まで近づく。

「どんなことを喋ってるんだろう……」

テリーは小声でボソボソ言いながら二人からは見えにくい場所に移動し、時々視線を動かしチラリと横目で見ながら、身をひそめて二人の会話に耳を澄ます。

アリスと男は、親密そうにお互い腰に手を回し楽しそうに話していた。男はパッと見た感じは長身に金髪の跳ね髪で、いかにも遊び人風の印象を受けた。

「ねぇ私達が付き合って半年の記念日にこれ欲しい」
「こんな高いの無理だな。姉と婚約しているのにアリスの誘惑に負けた間抜けな彼氏に買ってもらえばいいだろ?」

テリーはフローラと婚約して生涯の愛を誓っているのに、アリスと二股してるので当たり前だが、褒められる立場でないのは言うまでもない。

だがその時は、まさかアリスが自分以外の男と親密な異性交際をしているなんて想像もしていなかった。テリーは何も考えられず、膝がみっともなく震えて頭が揺れるような感覚に陥る。

更にその男とは交際して半年だというのも信じられなかった。アリスは男の体に顔をくっつけて寄り添いながら、猫のように甘えた声色でお目当ての物を買って欲しいと頼んでいた。

ところが男は、アリスのおねだりを結構遠慮なく断る。予想以上にその商品が高くて男の許容範囲を超えたらしい。

次に男は姉と婚約してるのに、妹の甘い言葉に引っかかった愚かな彼にお願いしろと言い、あざ笑い下に見て笑いの種のように漏らす。

「僕のことか……」

テリーは肩を震わせながら、弱々しくてほとんど聞き取れない声でつぶやく。涙が頬をつたって流れるのを感じた。

頑張って号泣したいのを懸命に耐えながら、切ない雰囲気のテリーはそれでも二人の会話が気になり、聞き耳を立てずにはいられない心境だった。
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